ザ・クロマニヨンズ「ロックンロールは中学生の心を直撃しないとダメ」

左から小林勝(B)、甲本ヒロト(Vo)、真島昌利(G)、桐田勝治(Dr)

12ndアルバム『レインボーサンダー』(10月10日発売)
12ndアルバム『レインボーサンダー』(10月10日発売)

ちょうど一年ぶりのインタビュー。ザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトと真島昌利は、全く変わらない柔らかな空気で迎えてくれた。ロックをひたすら楽しみ、その楽しさをアルバムにパッケージして、毎年届けてくれる。前作『ラッキー&ヘブン』は2017年10月11日に発売、そして12枚目となる新作『レインボーサンダー』は、10月10日発売と、きっちり一年後に発売。年間60本前後のライヴを全国で行い、それを終えると束の間の休息を挟み、すぐに新作の制作に入る。一貫してそのサイクルを守っている。前回の『ラッキー~』の際のインタビューもそうだったが、その一曲一曲に込めた熱い思いを語る……感じではなく、「楽しくロックをやっているだけ。それでできたもの」という総論を前提に、最近気になること、楽しかった夏の思い出などを聞かせてもらい、そこから『レインボーサンダー』につながるもの、ヒントを探そうと思ったが……それを超越した、もっと本質的な話を聞かせてくれた。

「『レインボーサンダー』って小学生が意味もわからず言った英語みたいで、面白いと思った」(甲本)

――さて、12枚目のアルバム『レインボーサンダー』ですが、野暮かもしれませんが、タイトルの意味、どこからきたものなのかから聞かせてください。

Photo/柴田恵理
Photo/柴田恵理

甲本 どこからも来ていない(笑)。これは毎回なんですけど、もうずっと、数十年どこからも来ないんですけど(笑)。

――レコーディングしている中で思い浮かんできたとか…。

甲本 レコーディングの途中でも思い浮かばないですね。

――レコーディングが全て終わってから考えたんですか?

甲本 終わりも終わり(笑)。スタッフから、印刷物の入稿の締め切りだから何か考えてくれと言われて、アルバムのタイトル部分だけ括弧で空いていて(笑)。「そこを埋めてください」っていう、穴埋め問題みたいな(笑)。

――(笑)そこで『レインボーサンダー』という言葉が閃いたんですか?

甲本 何でもよかったんですよ。たまたまコーヒー飲んでいたら『コーヒー』でもよくて、 「ニューアルバムは『コーヒー』!」って、全然いいじゃないですか(笑)。『ペットボトル』でもいい。何でもいいんですよ。みんなで適当に色々な言葉を言っているとき、『レインボーサンダー』って、誰かが言った瞬間、爆笑が起きたんですよ。「何じゃそりゃ」って。僕が「何じゃそりゃ」って一番ピンときた理由は、まるで英語には意味があるんだということを知らない、小学2年生くらいのコが「レインボーサンダー!」って言った感じ(笑)。「お前、意味も知らないでなんか言ったな」みたいな感じで、朗らかな爆笑が起きたんですよ。それでこのタイトルに決まりました。

――それで決まったんですか!?(笑)

甲本 だから僕らもどういう意味なのか、わからない(笑)

――アルバムに「サンダーボルト」という曲が入っていますが、そこからイメージしたとか関係しているとかは…。

甲本 ないですね。

――マーシーさんは『レインボーサンダー』という言葉を聞いたときは、すぐ「いいんじゃない?」という感じだったんですか?

真島 うん。面白かったから(笑)。もともとアルバムにテーマがあったわけではないから。

――では今回も、アルバムのテーマとかコンセプトか、よくある質問はやめたほうがよさそうですね。

甲本 「そういうのは元々なかったんだよ」っていう話ならできますけど(笑)

――そうですよね。いつもお二人は「音楽は楽しければいい」とおっしゃっていますが、それを「続ける」のは大変だと思いますが、楽しいことを続けることの難しさというのは、感じたり、考えたりすることはあるのでしょうか?  

甲本 続けるために頑張ったことはないと思うけどなあ。

「明日も明後日も楽しい気持ちでいたい。バンドを続けるために苦しくなるのであれば、やめればいいのにって思う」(甲本)

「初めてギターを持って、ちょっとずつコードを覚えていくことの楽しさ、それがずっと続いてるってことじゃないですか」(真島)

――クロマニヨンズが楽しみながら奏でる音楽を、たくさんの人が楽しんで、ずっと聴いてくれているから、続けられているということは言えますよね。

甲本ヒロト
甲本ヒロト

甲本 それもあるんだと思いますね。だから自分達ががんばって、それを聴いてもらえているんだという感じを手に入れて、「やったぜ!」っていう感じはあんまりないです。「ありがてえな」って感じです。僕は長く続けることがいいことだとは元々思ってなくて。でも「今日こんなに楽しかった」って、何回も楽しい気持ちになりたいじゃないですか。「明日も楽しくやりたい、明後日も」って。だから長く続けたいというのはすごくわかるけど、それは「楽しい」の積み重ねであって、続けるために苦しくなるんだったら、やめればいいのにって思うけどなあ。

真島 例えば初めてギターを持って、ちょっとずつコードを覚えていくことの楽しさ、それがずっと続いてるってことじゃないですか。それは普通に楽しいじゃないですか。

甲本 元々音楽を聴くのが好きなんですよ。もちろん演奏するのも好きだし、家に帰ればレコードがあって、観たいアーティストが来日すればライヴを観に行って、というような活動の一環で、自分のバンドの活動があるっていう。

「僕らはみんなで集まって、あははって笑って演奏できたら、なんとかなっている気がする」(真島)

――やりたいことが色々ある中のひとつが、バンド活動という捉え方ですか。

真島昌利
真島昌利

甲本 そんな気がする。全部やりたいことだもん、レコードを聴く、バンドで演奏する、人 のライヴを観る、全部楽しいよ。でも元を辿れば「聴く」っていうのが、一番最初かもしれない。それがなければ、何も始まっていないかもしれない。

真島 あんまり色々なことを考えないからいいんじゃないですかね。なんとかなるんですよ。なんとかなっていない人たちが、色々考えるんですよ、きっと。「どうしよう、なんとかせにゃならん」って。そのハードルが高いんだよ、きっと。僕たちはそこそこの感じだと、なんとかなってるなって思っちゃうんですよ(笑)。だけど例えば色々なハードルを自分に課して「よし、次はあの会場をいっぱいにするぞ!」とか「今度のレコードを100万枚売るんだ!」っていうハードルがあって、それを越えられない状況が続いて「なんとかせねば」って思っている人がいるかもしれない。僕らはみんなで集まって、あははって笑って、演奏できたら、なんとかなっている気がするんですよ。

――日本中のミュージシャンが、ただただ羨ましいと思う言葉ですよね。

甲本 本当ラッキーですよ。ずっとなんとかなってきた。

「バンドはやっぱり仲がいい方がいいと思う。当たり前のことのようだけど大事なこと。一緒にご飯食べていてストレスがない人とやるべき」(甲本)

――前作の『ラッキー&ヘブン』というタイトルが、まさにクロマニヨンズというバンドを表している言葉といえますね(笑)。  

甲本 そうですね、ラッキー!(笑)。そうだ、わかった!仲がいい人たちとバンドを組んだ方がいいんだよ(笑)。そうしないと例えば職場っていうのは仲が悪くても、ひとつのプロジェクトで仕事をしているときは、普段仲がいい悪いなんて関係ないじゃないですか。みんなで協力してやっていけばいい。でもバンドはやっぱり仲がいい方がいいと思う。当たり前のことのようだけど大事なこと。一緒にご飯食べていてストレスがない人。

――お二人が出会って、デビューした時点で、ひとつの結果が出ているというか、結論が出てるというか。  

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甲本 楽しいってことでいえば、出会った時点で完結してますよ。「この人とやっていると楽しいじゃん。」っていう感覚。

真島 やった、ラッキー!(笑)

甲本 そこを俯瞰して見た時、例えば普段何も考えない我々ですけど、こうやってディスカッションする中で、自分たちのことを振り返る瞬間もあるし。「俺たちどうなんだろう」って、世間と擦り合わせて比べることなんて、まずないですけど、今こうやって話をしている中で、思えば21歳の時に、同じ年齢くらいの、そういう仲間に出会うタイミングって、確率的にものすごく低いと思う。だからもうラッキーとしか言いようがないんですよ。

――その奇跡の出会いに、ファンは感謝ですね。この二人が出会ったから、この音楽が生まれて、しかも、ずっとその音楽を楽しみながらやり続けていて、ライヴではそれをより感じさせてくれます。

甲本 ラッキー!得した(笑)。なんとかなった、またなんとかなった、でもなんとかしようっていうのと、なんとかなるっていうのは全然違うじゃないですか。考えれば考えるほど「うまくいかせよう」じゃなくて、こんな風になんとかなっているのは、周りのみんなのお陰で、その苦労は計り知れないと思います。決して僕らだけの力じゃない。

「出演予定だったフェスが中止になって、ライヴがひとつできないって、こんなに淋しいのかって思った」(甲本)

「加山雄三さん、カッコよかったなあ。81歳、本当のロックンローラーだった」(真島)

――この夏は、Ken Yokoyama、The Birthdayとともに3マンショートツアーをやったり、夏フェスに出演したり、楽しく充実した夏だったと思います。

甲本 まずお誘いがあるということがありがたいですね。僕らみたいなものにも「ここ出てもいいよ」って声をかけてくれるフェス、イベントがあるという状況が、まだ続いてるということです。それに対して僕らは応えているだけです。でも残念なこともあったな。台風が原因で、ひとつ僕らが出るはずのフェス(「WILD BUNCH FEST. 2018」(7月28日/山口県・山口きらら博記念公園)) が中止になったこと。ものすごく残念な気持ちになった。ライヴがひとつできないって、こんなに淋しいのかって思った。

真島 僕は加山雄三さん率いる THE King ALL STARSとの対バンライヴ(8月22日/恵比寿リキッドルーム)が楽しかったなあ。81歳、本当にすごい。ロックンローラーだった。

――かっこいいですよね。やっぱり音楽を始め、色々なことを楽しんでいるからこそ、ポジティブなエネルギーで満ちていて、あの若々しさにつながっているんでしょうか。

甲本 加山さんもステージで歌ってる時は楽しそうだったし、すごいオーラが出てましたよ、スターのオーラが。それが若々しさっていうものでもないんですよ。ミッキーマウスを見るような感じ(笑)。ミッキーマウス見て、若いって思わないじゃん。そんな感じ。だから特別なんですよ。

真島 カッコいいですよ。アイドルだし、スターだし。  

「対バン相手が誰であっても、毎回ステージはドキドキする」(甲本)

――お二人ほどの方でも、加山雄三さんと一緒にやったことを誰かに言いたくなったり、自慢したくなったりするものですか?

甲本 するする!まず親戚のおじさんやおばさんに自慢したいよね(笑)。まずライヴをやる前に「今度、加山雄三さんとやるんだよ!」って色々な人に会う度に言ってたし、ライヴをやった後も「最高だったよ、なんで来なかったんだよ?」って色々な人に言ったし(笑)。

――加山さんはギターの腕も相当なものなんですか?

真島 ギターもバリバリ弾いてました。最後「ジャーン、ジャッ」ってキメが、エルビス(・プレスリー)みたい。

甲本 加山さんは僕らが 子供の頃から観ているスターじゃないですか。そこはやっぱり他の人とは違うところですよね。ギターウルフ、THE BOWDIESと一緒にやったイベント(8月25日「Lewis Leathers Japan presents Wings, Wheels and Rock'n'Roll vol.1/TSUTAYA O-EAST」)も楽しかったなあ。対バンの相手が誰であろうと、毎回ステージはドキドキします。

――対バンの相手からすると、クロマニヨンズはスターですよね。

甲本 いやいや!幸せだなあ(笑←加山雄三風に)。

――『ラッキー&ヘブン』のツアーの新木場・STUDIO COASTライヴを観させていただいたのですが、アルバムのライヴ感がまたもの凄い熱量を帯びて、襲いかかってくる感じがしました。なにより4人が楽しそうに歌い、演奏しているのが伝わってきました。

甲本 今回もそうですが、基本的には一発録りで、ひとつの部屋で全員でボーンってやります。モニタリングするときは、ライヴで使っている足元にあるモニターを使うから、ヘッドフォンも使わないし、ライヴを録音してるだけなんです。だからライヴをやっている時も、同じなんですよ。そこにテープレコーダーがあるか、お客さんがいるかの違いだけなんです。

「ロックンロールは誰でも楽しめる。子供にわからないものはやりたくない」(甲本)

「中学生くらいの年代の、心を燃え上がらせることができなきゃダメ、ロックンロールは」(真島)

――あの熱が若いファンを呼び込むのか、10代、20代とおぼしきファンが多かったです。

甲本 ロックンロールは誰でも楽しめる。その誰でもっていう中が大人ばかりで、子供にわからないものはやりたくない。子供っていうのは、僕らもそうだったけど、12~13歳くらいの何かの芽吹く頃の、そのコたちが「うわ、かっこいい!」って思えなきゃ、ダメだと思う。

――クロマニヨンズの音楽を聴いて、より音楽が好きになったり、バンドをやろうと思う人もいると思います。

甲本 だからあの時の自分が喜ばないようなロックバンドは、やりたくないな。

真島 ロックンロールは、中学生の心を直撃しないとダメなんですよ。あの年代の心を燃え上がらせることができなきゃダメなんですよ、ロックンロールは、って僕は思っています。

 

ーーまたライヴが楽しみになる、ロックンロールのアルバムを聴かせて頂きました。

甲本 一番ライヴ楽しみにしてるのは、我々です(笑)。

――11月7日群馬・高崎公演を皮切りに、来年4月まで50本を超える、ものすごいスケジュールですが、体調管理が大変そうです。

甲本 やるぜー! 病気だろうがなんだろうが、ライヴができれば楽しいんですよ。

――冬から春にかけて、風邪のひとつもひけない過酷なスケジュールですが…。

甲本 風邪引きたくねえな。声出なくなるのはやっぱり辛いな。でも、今の方が歌いやすくなってる。だって長くやっていれば、自然とコツってやつが、身についてくるんじゃないですか。理屈じゃなくて自然なコツってやつが。ギターもそういう感覚ない?

真島 あるね。

――ライヴハウスからホールまで織り交ぜたツアーですが、ハコの大きさによって、ライヴに臨む心持ちは、変わるものでしょうか?

甲本 同じです。自分の一歩は限られているので、広い会場だからってそんなに変えられない(笑)。どこでやっても僕らは全部出す、全出し。その器は関係なく全部出すんです。

ザ・クロマニヨンズ オフィシャルサイト