“キミスイ”で大ブレイク DISH//・北村匠海、“好き”を仕事にしたいという野望

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人気ダンスロックバンドDISH//のリーダー・北村匠海は、俳優としても昨年、映画『君の膵臓をたべたい』(以下キミスイ)で初主演を果たし、その演技が高く評価され、「日本アカデミー賞」をはじめとする各映画賞の新人賞を独占した。その“キミスイ”が、8月19日に地上波(テレビ朝日/21時~)で初放送される。さらに劇場版アニメとしても9月1日から公開されることで、再び“キミスイ”ブームが巻き起こりそうだ。北村に改めてこの作品について振り返ってもらうとともに、映画、テレビドラマへの出演オファーが殺到している俳優として、そして活動の軸でもあるDISH//のリーダーとして、表現者としての現在地をロングインタビュー。イノセントで柔らかい雰囲気の中に、強い意志を感じさせる、大きな瞳から放たれる輝きが印象的だった。

「『日本アカデミー賞』のような輝かしい場所に自分が自分が関われるなんて、全く思っていませんでした」

――昨年主演した映画“キミスイ”では、その演技が各映画賞で高い評価を得て、大きな注目を集めました。その“キミスイ”が、地上波で初放送されますが、改めて、北村さんにとってこの作品はどういう存在になっているのでしょうか?

北村 すごくたくさんの方に観て頂いて、評価して頂いて、決して僕だけではなくて月川監督を始め、スタッフさん全員に対してのものだと思っています。撮影している時は、初主演ではあったのですが、気張らずにただただいいお芝居をして、いいものを作りたいという気持ちでした。『日本アカデミー賞』のような輝かしい場所に、僕が関われるなんて全く思っていませんでした。月川監督は、以前僕が出演させていただいたRADWIMPSさんの「携帯電話」(2010年)という作品の、ミュージックビデオの監督でもあり、再会できたことが嬉しかったですし、尊敬する俳優の小栗旬さんとも再び共演させて頂いたことも嬉しかったですし、何より現場がすごく温かくて、「いいもの作ろう」と、一致団結して前を向いていたのが、いい結果をもたらしたのだと思います。もちろん原作も素晴らしいですし、作品自体の力が強いです。

――子役時代を含めて、役者としてキャリアは長いですが、役者としての現在地をどう捉えているのでしょうか?

北村 子役時代、30テイクくらい撮り直した時に「目が死んでる」といわわれて、唯一のセリフだったそのシーンが結局カットされたり、色々苦しいことも経験してきました。でも様々な経験を小さい頃からしているからこそ、それが10数年経ってやっと自分の糧になっていると思えるというか。逆にここからですよね。今本当に新しいものをどんどん取り込む時期だなって。今のスタンスで10年後に僕の芝居が、さらによくなっているかと言われたら、それはわからないし。だから今20歳の時点で、これまでの蓄えを使い切って、ここから新しいものを得ることができたらいいなと心から思います。なので、今の僕の周りの環境にすごく感謝をしていますし、友達や先輩、刺激をくれる人たちにも感謝をしています。

「演じることとDISH//で歌っていること、両方あることでバランスが取れている」

――俳優としての部分が、どんどんクローズアップされてきて、自分の中ではDISH//とのバランスはどう考えているのでしょうか?

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北村 12年前に、この業界には芝居から入ってきました。だから演じることが自分の中では当たり前になり過ぎていたりして、これがない人生ってあまり想像できないし、DISH//というオーバーグラウンドなもので楽しく音楽をやることができていて、本当に両方あることでバランスがとれている。中学生、高校生くらいから、自分の将来のビジョンを決めつけて生きてきたところもあったので、早く大人にもなりたかったですし、役者としてもミュージシャンとしても、早く認められたいという欲求のようなものがずっとありました。

「本当に好きなことをやってみて、それが趣味だけで終わらず、できるだけ仕事にしていきたい」

――カメラでも個展を開いたり、いい意味で表現することに貪欲で、その表現を早く認めて欲しかったという感じですか?

北村 そうですね。将来的には「北村匠海って色々なことやってるよね」といわれるのが、自分の中では理想で、僕は色々なことをやりたいし、音楽と芝居だけにいい意味であまりこだわりを持たないで、本当に好きなことをやってみて、それが趣味だけで終わるのではなく、できるだけ仕事にしていけたらということは、常に念頭に置きながら動いています。ただ、軸としてはあくまで音楽と芝居が中心です。音楽をやっている自分と、芝居をやってる自分は全く別物なので、だから両立できているのだと思います。

――仕事の幅が広がっていくと、人との出会いも増えてきて、そういう人たちの話に触発されたり、影響を受けて、これからどんどんやりたいことが増えていきそうな気がします。

北村 そうですね、現段階でもかなり色々あります。知り合う方の中には面白い俳優やDJ、VJ、バンドやシンガー・ソングライターもカメラマンも、映画監督もいて、それもわりと自分に年齢の近い人たちだし、しかも表現というもの対しての情熱がハンパない人たちばかりなので、自然と触発されていると思います。以前から「何でも好きになれるポテンシャルがあるよね」ということはよく言われます。でも逆に羨ましいのは、僕の周りの人はみんな絶対的に信じられるものを持っているんです。「この音楽が好きだ。でもこれは嫌い」とか、でも僕は本当に興味の対象が幅広くて。色々な領域に、どんどん足踏み入れていく。新しい世界にはすぐ片足突っ込んで、知識を増やしながら、 しかもそれがその時点で一番好きだと言える感じになっています。

――「俺はこれが好き、これが嫌い」っていう人の“好き”が、熱量が高い感じもしますが、でも色々経験した中で、自分で選んだものだからこそ一生懸命になれるし、その“好き”の熱量も相当なものだと思います。

北村 ひとつ言えるのが、僕が今20歳だということで、それは自分自身も感じているし、もちろん年齢関係なく、色々始めるのも全然遅くないと思いますが、20歳という今の自分が色々なものに接していたら、10年後にすごく質のいいものが選別されて、数は少なくなるかもしれないけど、自分の中で、絶対的にぶれないトピックスになっていったらいいなって。今はとにかく色々なことを取り込む時期だと思っています。

――最近はどんな音楽を聴いているのですか?

北村 最近はよくレコードを買っています。DJやアンダーグラウンドな世界で黙々と音楽と向きあっている人たちの影響で、レコードを買ったり、そういう曲を作ったりしています。僕の音楽のルーツは、ハウスミュージック、ヒップホップで、ダンスを始めるきっかけになっています。今その原点になっている音楽を日常的に聴いていて、“戻ってきている” 感じがしています。高校の時はバンドが好きでしたが、今はインスト系の音楽にハマっています。

「本当は1番手が苦手。でもDISH//では、バンドの思いを僕が一番伝えていかなければいけない」

――映画やドラマでは作品の歯車の一部になって、ひとつのものを作りあげていって、DISH//ではリーダーであり、メインボーカル、フロントマンとして北村さんが引っ張っているイメージがあって、両方の現場で、その心持ちは全然違うのでしょうか?

北村 僕は本当は1番手が苦手なんです(笑)。7年前、「あなたボーカルです、フロントマンです」って言われた時は、本当に人前に立つのもままならなかったし、目線はいつも下に向いていて、ぶっきらぼうな顔しているってよく怒られました。だから最初は「フロントマンなんて」と思っていました。“キミスイ”では、主演という立場でやらせて頂きましたが、小栗さんや北川景子さんがいてくださったので、“先頭感”は感じず、いい意味でどこか自由にできました。でもDISH//ではフロントとして、ボーカルとして、以前より格段に自信を持って歌えるし 、DISH//の思いのようなものを、歌に乗せて、僕が司令塔として一番伝えていかなければいけないと思っているし、その声になれていることは嬉しい。DISH//の時の僕と、芝居をしているときの僕のテンションの違いに、役者の友達はすごくびっくりしています(笑)。

――スイッチが違うのでしょうか?

北村 違うと思います。それぞれのシーンで勝手にスイッチが入っている感じがします。やっぱりDISH//のメンバーは、かけがえのない存在で、みんな幼馴染っぽかったり、ふとかわいいいなって感じる瞬間もありますが(笑)、だからこそDISH//というグループでいるときは、特別な自分になれます。どれが素の北村匠海かっていわれたら、素なんてわからんないし。立ち位置としては自分でも不思議です。役者の現場は当たり前ですが、毎回、毎日違うし、それは役者の面白さでもあって。そういうところで瞬発力や臨機応変に対応する能力を培った気はしていますし、裏を返すとDISH//でもずっとライヴをやっているので、瞬発力、現場での対応力が培われたのだと思っています。

「何をやるにも、まずDISH//をブラッシュアップさせることが大切」

――12枚目のシングル「Starting Over」が7月11日に発売され、好調ですね。どんどん“ロックバンド”になっていっています。

12thシングル「Starting Over」(7月11日発売)
12thシングル「Starting Over」(7月11日発売)

北村 やっぱり去年ドラムの(泉)大智が入ったことが大きいと思います。ライヴもどんどん変わっていて、こんなに形が変わるグループはなかなかないと思います。色々なスタイルのライヴを経て、個々が成長しながら、「バンドになったね」って言われるようになったし、でもやっぱりどこかに、DISH//はエンターテインメント性が高くなければいけないという思いもあって。だからバンドスタイルだけにこだわらず、色々なものを織り込める面白さはありますね。やっぱり何をやるにしても、まずここ、DISH//をブラッシュアップしていくことが重要です。軸をいかに磨き上げるかで、そこに付属してくるものの質も上がってくると思うし、評価も変わってくると思います。

「「Starting Over」は僕たちの決意を記した、ファンの人達への手紙」

――今年、メンバーが脱退するというバンドとしての波を経験しました。「Starting~」はメンバーからファンに向けた、感謝の気持ちと決意のメッセージになっていますね。

北村 複雑な思いで観てくれている人が多いと思ったし、もちろん僕らもそういう気持ちだったし、だから最初はどういう顔をしてお客さんの前に出ればいいかがわかりませんでした。でもお客さんの笑顔、僕らのことを見てくれている姿勢というか感情を感じるライヴツアーを経て、僕らも背中を押してもらったり…。この曲はずっと僕たちに関わってくださっている、新井(弘穀)さんからの僕らへの手紙のような感じがしています。その手紙に、ここから再出発なんだという自分達の決意をさらに込めて、ファンの人に充てた手紙になっていると思う。本当に続けることの大切さを、この曲を通して僕らも感じました。そういう手紙のリレーをこの曲ではしてるような感じがしていて、この曲で泣いてくれている人を見ると、やっぱりグッときます。

――色々なことに興味を持って、それを表現者としての表現していく現在の自分の姿、頭の中を、自身でどう分析していますか?

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北村 僕らの世代をミレニアム世代というらしく、やっぱりSNSをはじめ、情報源があまりにも多くて、昔の人たちとは違う形で発信する機会をたくさん与えてもらっている世代だと思う。誰でも発信できる世代。そんな、誰でも表現できるこの世界で「僕は何を表現したらいいんだろう?」って思うこともあります。写真や、絵も描いたり、音楽も作ったりしますが、でもその道にはもっともっとすごい人たちがたくさんいて、その中で何を表現していいのかとか、何を言葉にしたらいいのかを、すごく考える時があります。

「自分に満足していないからこそまだ何もないという感情が生まれ、それが僕という人間を突き動かしているものだったりもする」

――表現することが怖くなる瞬間もありますか?

北村 あります。例えば“キミスイ”のヒットのおかげで、色々なメディアに出させて頂いて、面白い経験もさせて頂いて、インスタグラムのフォロワー数が一気に10万人増えたりもしました。北村匠海という名前が一気に広がったからこそ、逆にとまどいを感じることもあります。表現するということは、自分が信じているものが全てだと思うし、それに対して観ている人たちが、好き嫌いを選んでもらえればいいだけで。多くの表現者の中で、その中のひとつになれていればいいなと思います。僕自身が絶対的な正解でもなければ、まだまだ質のいいものでもないので、自分に対するマイナス感情が意外と原動力になるというか。自分に満足していないからこそ色々なものに触れているとも思います。僕はまだ何も足りていないし、何もないという感情が生まれ、それが僕という人間を突き動かしているものだったりもします。

「何をやるにしてもやっぱり差別化したいし、それをアウトプットしたくなる」

――その思いが自分を押し上げ、経験することで糧となって、表現者としてのエネルギーに昇華できていると思います、

北村 自分の中で、何も義務化せずに本当に好きなものを突き詰めるっていう、それに対しては徹底的に調べ、のめりこむし、最近は周りから「ディグ男」って呼ばれています(笑)。褒め言葉として受け止めていますが(笑)。

――一人の人の熱狂が何かを生み、それにみんな巻き込まれていくんですよね。

北村 やっぱりどこか差別化したい、しかもそれをアウトプットしたくなったりします。今、時間さえあればDTMを使って音楽を作っています。インストものが多くて。

――気になります。

DISH// 左から北村匠海(Vo/G)、橘柊生(Fling Dish/RAP /DJ/Key)、矢部昌暉(cho/G)、泉大智(Dr)
DISH// 左から北村匠海(Vo/G)、橘柊生(Fling Dish/RAP /DJ/Key)、矢部昌暉(cho/G)、泉大智(Dr)

北村 評価される喜びとか快感を得たいと思うと、脳は常に何かを突き詰める脳になっていると思います。それが邪魔になる瞬間もありますが、逆にそれも面白いと思います。“好き”を仕事にしたいという野望は忘れず、「北村匠海は好奇心旺盛に、色々なことをやってるよ」というのが理想です。 

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