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HY 20周年を前にセルフカバーベスト発売 発表から10年、色あせない名曲「366日」の魅力

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「これまではアルバムのみ発売。だからこそ20周年はオリジナルアルバムで迎えたい」

これまでシングル盤はリリースせず、アルバムにこだわってきた。だからこそ20周年はオリジナルアルバムをリリースしたい。その前にセルフカバーベストで、軌跡をたどる

セルフベストカバーアルバム『STORY~HY BEST~』(8月22日発売)
セルフベストカバーアルバム『STORY~HY BEST~』(8月22日発売)

来年結成20周年を迎えるHY。その来るべきアニバーサリーイヤーを前に、動きが活発になってきた。まずは8月22日にセルフカバーベストアルバム『STORY~HY BEST~』をリリースする。これまであえてシングル盤はリリースせず、アルバムのみのリリース(全12作)にこだわってきた。だからこそ、20周年はオリジナルアルバムで迎えたいと、今年ベストアルバムのリリースに踏み切った。このアルバムにはファン投票で選ばれた上位曲を含む30曲が収録される。またベスト盤の発売前、8月8日には加藤ミリヤ、清水翔太、MONGOL800等、HYと交流のあるアーティストが参加するトリビュート盤『CHANPURU STORY~HY tribute~』が発売される。

テレビの音楽特番に立て続けに出演し、名曲を披露

テレビ音楽番組にも積極的に出演し、長年愛されている名曲たちを披露している。まず6月27日にテレビ東京系で放送された『テレ東音楽祭2018』に出演。その際、強風の中で「AM11:00」を熱唱するHYの後ろで、楽器が風に飛ばされないように懸命に抑えるスタッフの姿が映り、それがネット上で話題となり、Twitterのトレンド入りしたり、思わぬ形でクローズアップされた。同時にLINE MUSICなどサブスクリプションサービスでは、同曲のランキングが上昇。7月14日はTBS系『音楽の日』にも出演。ここで披露したのが「366日」だ。いわゆる失恋ソングの定番として、聴き継がれ、歌い継がれ、老若男女から愛されるスタンダードナンバーとしておなじみの曲だ。配信はされたもののシングルカットされていない「366日」が、なぜこんなにも多くの人から支持されているのだろうか。

発表から10年。愛され続ける名曲、「366日」の物語

仲宗根泉(Key&Vo)
仲宗根泉(Key&Vo)

「366日」はHYの、2008年に発売された5枚目のアルバム『HeartY』に収録され、映画×ドラマ『赤い糸』の主題歌に起用された。配信されるやいなや、450万を超えるダウンロードを記録し、カラオケでも大人気曲となった。この曲には有名なエピソードがある。作詞・曲を手掛けた仲宗根泉は、『STORY~HY BEST~』の中のセルフライナーノーツでも触れているが「悲しい恋愛ソングを書きたかった当時、付き合っていた彼とはラブラブでとても切ない詞を書ける感じではなかったので、まず当時の彼と別れました」と語っている。当時ファンから送られてくる手紙には、恋愛は終わってしまったけど、元カレが忘れられないという内容が多く、そんな思いをしているのはあなただけじゃないと、同じ痛みを共有した上で、そっと肩を抱きしめ、やさしく包み込んであげるような歌を作った。だから伝わる。365日あなたのことを想ってもまだ足りない、そんな気持ちを「366日」という言葉で表現している。

「失恋ソング」「号泣ソング」としての“威力”

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先日あるアーティストにインタビューした際、面白い話が出た。「最近はドラマティックな曲、失恋ソングが受けなくなってきたと思う」という内容で、その理由はそこでは結論は出なかったが、最近は若者の恋愛離れが止まらないという話題が飛び交っていて、そんな影響もあるのだろうか。色々な意見がある。「恋愛にはお金がかかる」「趣味の多様化が進み、恋愛以外のことに夢中になる男性たちが多い。お金をかけるならそちらにかける」。 ゲームやアイドルなどに“愛”を注ぎ、現実の恋愛や人間関係に価値を見出すことができず、それを築く一連の行動や考えること、気を遣うことが「めんどくさい」と思う人が多い、とか。

でも時代によって、恋愛スタイルが変わっているように見えても、恋愛そのものにそんなに変わりはないだろうし、失恋だって、人それぞれ、その過程での感情の揺れの大小はあるだろうけど、今も昔も変わらないはずだ。ただ、超情報化社会でもある現代では、SNSで多くの人と常に“つながっている”環境があり、部屋の片隅で、涙しながら一人失恋の悲しみをかみしめる的な、そんな雰囲気もなくなったのかもしれない。失恋ソングが“威力”を発揮できなくなってきたのだろうか。そんな中でこの「366日」は“威力”を発揮し、愛され続けている。

『STORY~HY BEST~』でセルフカバーされ、10年後の「366日」が仲宗根泉により、新しい“息吹”が吹き込まれる

左から許田信介(B)、名嘉俊(Dr)、新里英之(V&G)、仲宗根泉(Key&Vo)、宮里悠平(G)
左から許田信介(B)、名嘉俊(Dr)、新里英之(V&G)、仲宗根泉(Key&Vo)、宮里悠平(G)

「366日」は、恋愛経験者はもちろん、恋愛未経験者も失恋を疑似体験し、人のことを想う気持ちを想像し、悲しい気持ちになれる。今回のようにテレビの音楽番組で、また、雑誌やエンタメサイトでの「失恋ソング特集」、色々な人のプレイリストで「失恋ソング」「号泣ソング」として、取り上げられる機会が多いこの曲を、最近になって初めて知ったという人も多いはずだ。好きだった人へ、狂おしいまでの想いを募らせ、“つながっていたい”と思う気持ちが、この歌を聴くたびに甦ってくる人が多いのではないだろうか。だから性別、世代関係なく聴かれている。

『STORY~HY BEST~』ではセルフカバーされ、10年後の「366日」が仲宗根泉によって歌われ、新しい息吹、“今”が吹き込まれている。どんな“声のストーリー”が「366日」にプラスされているのだろうか。それぞれの人の「366日」のストーリーが、また紡がれていく。この夏は各地の夏フェスに出演し、そして9月からは来年まで続く2018-2019全国ツアー『HY STORY TOUR ~うさがみそーれ めんそーれ そーれそれそれ ゆくいみそーれ~』でを行い、名曲達を全国に届けにいく。

HYオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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