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朝7時開演のライヴに長蛇の列 仙台発、日本初の朝活『早朝ライヴ』が話題

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
6/23朝6時、ぜんりょくボーイズの早朝ライヴを観るために集まったファンの行列

5月のある日の朝6時半。宮城県仙台市の繁華街・一番町アーケードにある老舗ライヴハウスdarwinの入口前には、早朝にも関わらず、制服を着た女子中・高生やOL風の女性が並んでいる。男性の姿もちらほら見える。売切れ必至のスイーツを手に入れようと並んでいるのではない。彼女たちのお目当ては、6人組ボーイズグループ・ぜんりょくボーイズの早朝ライヴだ。

週3回、朝7時開演の早朝ライヴには毎回多くの学生、OL が集結。入場料は¥500、学生証を提示すれば無料

左から森瞬太(23/仙台市太白区出身)大平一心(13/仙台市青葉区出身)保土原壱成(17/仙台市宮城野区出身)三浦大輝(20/石巻市出身)小松笙(20/気仙沼市出身)遠藤大斗(21/苅田郡蔵王町出身)
左から森瞬太(23/仙台市太白区出身)大平一心(13/仙台市青葉区出身)保土原壱成(17/仙台市宮城野区出身)三浦大輝(20/石巻市出身)小松笙(20/気仙沼市出身)遠藤大斗(21/苅田郡蔵王町出身)

ぜんりょくボーイズは、ソニー・ミュージックエンタテインメントと、仙台放送の人気番組『仙臺いろは』のコラボレーションでスタートした、「全力漢(ぜんりょくボーイズ)」オーディションで選ばれた、宮城県発のエンターテイメントな6人組グループだ。メンバーの年齢は13歳から23歳までと幅広い構成で、ファンも女性を中心に幅広い層から支持を集めている。彼らが一躍注目を集めるようになったのは、今年4月から、月・水・金曜の週3回、朝7時から行っている早朝ライヴだ。学生は放課後は忙しいが、登校前ならライヴに来てくれるだろうという狙いで始めたこのライヴ、早朝にも関わらず通学、通勤前のファンが、多い時には150人ほど集まっている。入場料は500円だが、学生は学生証を提示すれば無料ということもあり、部活の朝練、朝活の感覚で立ち寄っている。フジテレビ系情報番組「ノンストップ!」(5月29日放送)でも、彼らとこの早朝ライヴがクローズアップされ、今じわじわと話題になってきている。

早朝ライヴ後は、ファンもメンバーも大急ぎで登校。“朝活“感覚で1日の始まりを楽しむ

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6時45分開場、7時ライヴスタート。誰もが口ずさめるキャッチーなポップス、ロックを歌い、踊り、その日によって変わるコーナー企画があり、途中客席へ降り、歌いながらファンとハイタッチというサービスもある。7時30分、全力で駆け抜けたライヴは、チャイムの音と共に終了。メンバーは「いってらっしゃい!」と挨拶すると、すぐに会場入口へ。お見送りだ。常連のファンには「今日は確かテストだよね、頑張って」などと、友達のように声をかけ、コミュニケーションを何よりも大切にしている。ファンはダッシュで学校へ向かう。それはメンバーも同じだ。6人中4人が学生で、大急ぎで登校する。ファンの間では、この週3回の早朝ライヴに参加することが、1日の生活スタイルが充実したものになる、今までにないタイプの『朝活』として受け入れられており、仙台のちょっとした文化にも発展しているように見える。

ちなみの早朝ライヴ当日のスケジュールは、会場入りはメンバー、スタッフ共に朝3時。自転車で30分以上かけてくるメンバーもいる。機材搬入から会場装飾まで、メンバーが率先して準備を行い、5時リハーサルスタート。30分間という短いパフォーマンスの中で、自分達の世界観をしっかり出し、ファンに満足してもらうにはどうすればいいのかを、前回の反省点を踏まえながら、入念に練っていく。そしてリハーサルが終わるころには、会場の外にファンが並び始める―――。

早朝ライヴが生まれたきっかけは「全てが平均点の彼らがどう目立つかを考えた時に、誰もやったことがないことをやろうと思った」

日本初といっていい、この早朝ライヴが生まれたきっかけは何だったのだろうか?「彼らは歌もそれほど上手くなく、ダンスもそうでもない、全てが平均点です。そこでどう目立つかを考えた時に、誰もやったことがないことをやろうと思い、日本初となる『朝7時開演のライヴ』に挑戦してみようということになりました」(エドワード・エンターテイメント・グループ株式会社代表取締役・金野誠氏)と教えてくれた。同社は仙台を拠点としたエンターテイメント企業で、これまでMONKEY MAJIKやGReeeeN、Rakeなど人気アーティストを数多く輩出し、ソニー・ミュージックエンタテインメントと共同で、ぜんりょくボーイズのマネジメントを行っている。

“青春”にフォーカスした、甘酸っぱい感じや、せつないさを感じるポップスを武器に、目標は2020年に、4,000人収容のゼビオアリーナ仙台を満杯にすること

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彼らの魅力のひとつは、曲の良さだ。2017年6月に1stシングル「Stand up and fight!」をリリースし、2018年4月2日には1stミニアルバム『GRADE 1』を発表しているが、アップテンポ、ミディアム、どの作品もライヴで全員が思わず口ずさんでしまう、歌いたくなる親近感のあるメロディが印象的だ。「徹底的に“青春感”にフォーカスし、甘酸っぱい感じやせつない感じを曲に出しています。今はユニゾンで声が重なった時の強さを一番に考えていますが、これからも色々な可能性を感じてもらえる曲を提示し、2020年にゼビオアリーナ仙台(約4000人収容)を満杯にすることをメンバー、スタッフの最大の目標に、頑張っていきたい」(ダツプロダクション・制作部プロデューサー・相場亮一氏)。

“早朝ライヴ”を仙台の文化として、全国に発信したい

ぜんりょくボーイズは6人6様のキャラが立っているのも武器で、それが楽しめるのがやはりライヴだ。年齢の差も魅力のひとつだ。ライヴの構成や演出の幅が広がり、ファンは毎回来ても飽きない。「早朝ライヴを始めて成長のスピードが速くなったと思います。彼らに初めて会った時、今時こんなに純粋で、人間的にも素晴らしい若い人達がいるんだと、驚きました。そんな彼らのいい部分を、これからもっと色々な人に知って欲しいし、伝えていきたい」(ダツプロダクション取締役営業部長・川北力斗氏)。その人の良さはステージ上、そしてライヴ後のお見送りでの、ファンとのコミュニケーションの取り方からも伝わってくる。

早朝ライヴというひとつのコンテンツをきっかけに、ぜんりょくボーイズの名前は少しずつ全国区になってきている。当然宮城県、仙台市という都市にも注目が集まる「地元発信ということを大切にして、地元出身の彼らを、まずは東北エリア、そして全国に届けたい。我々は過去、様々なアーティストを手掛け、ここ仙台から発信してきた。そのノウハウとテクニックは持っていると自負しています。早朝ライヴというものを面白がってもらえる素地が仙台にはあると思うし、これを文化として全国に発信していきたいと思っています」(金野氏)。

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6月23日には早朝ライヴの集大成である、初のワンマンライヴ「早朝学園祭2018!!」を行い、チケットはソールドアウト。デビュー前の新人として、朝7時開演の公演を満員にするのは業界初だ。着実に、確実に、ぜんりょくボーイズの噂は、仙台から全国へと広がり、早朝のライヴハウス前の行列が、仙台名物になる日も近そうだ。

ぜんりょくボーイズオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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