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"放牧中"のいきものがかり吉岡聖恵もカバー 86曲入り「夢で逢えたら」全集が話題

田中久勝音楽&エンタメアナリスト

ナイアガラサウンドの原型「夢で逢えたら」は、'76年の発表以来、様々なアーティストにカバーされるスタンダードナンバー

「夢で逢えたら」というと、大瀧詠一の代表作のひとつで、1976年に発表されて以来、様々なアーティストにカバーされ、歌い継がれ、聴き継がれているスタンダードナンバーだ。1960年代のアメリカンポップスの薫りが広がる、ナイアガラサウンドの原型ともいうべきカラフルかつせつない8ビートサウンドは、当時16ビート全盛だった日本の音楽シーンの中で異彩を放っていた。1976年に吉田美奈子のアルバム『FLAPPER』に収録され、耳の肥えたファンの間では絶賛された。そしてシリア・ポールがカバーし、ガールポップのスタンダードナンバーとして、1976年から20年間は、全て女性アーティストによりカバーされてきた。しかし1996年4月、ラッツ&スターがこの曲をカバーし、9枚目のシングルとして発売したところ、ようやく“お茶の間”にまで届くヒットとなった。以降は本当に多くのアーティストがカバーし、色褪せない名曲として多くのリスナーに愛されている。

古今東西の「夢で逢えたら」86曲を集めたアルバムが注目

『EIICHI OHTAKI Song Book _III 大瀧詠一作品集 Vol.3 「夢で逢えたら」(1976~2018)』
『EIICHI OHTAKI Song Book _III 大瀧詠一作品集 Vol.3 「夢で逢えたら」(1976~2018)』

そんな、数多く存在する様々な「夢で逢えたら」を集め、「夢で逢えたら」だけをフィーチャーする前代未聞の作品が、3月21日発売される。それが『EIICHI OHTAKI Song Book _III 大瀧詠一作品集 Vol.3 「夢で逢えたら」(1976~2018)』だ。レコード会社、レーベルの壁を取り払い、古今東西に存在する「夢で逢えたら」のオリジナルおよびカバー作品の完全収録を試み、なんと86曲が収録される、注目の4枚組コンピレーションアルバムだ。注目は、同曲の原曲を歌う吉田美奈子が、アルバム『FLAPPER』以来、約42年ぶりに同曲を新録した事だ。そして1981年6月に行われた『大滝詠一 A LONG VACATION コンサート』のライヴ音源の他に、鈴木雅之、薬師丸ひろ子、miwa他が歌う、色々な「夢で逢えたら」が収録される。さらに、 現在“放牧中”のいきものがかりのボーカル吉岡聖恵が、この企画のために1年半ぶりとなる新録で参加している事も見逃せない。

いきものがかり吉岡聖恵が、’77年のシリア・ポールのオリジナルトラックでカバー

吉岡聖恵
吉岡聖恵

吉岡が歌う「夢で逢えたら」のトラックは、シリア・ポールが1977年に発売した当時のアレンジが使用され、聴き比べると、“ナイアガラの歌姫”・シリアの歌とは全く違うテイストに仕上がっている。その真っ直ぐさは清潔さを湛え、伸びやかで、でもどこか切なさを感じさせてくれる。圧巻の表現力、“吉岡節”は健在だ。吉岡の「夢で逢えたら」は、アルバムに先駆け、ひと足早く彼女の誕生日(2月29日)でもある2月28日に単曲配信され、最新の彼女の声、歌を待ちに待った多くのファンを喜ばせた。

オリジナルを最大限にリスペクトし、そこに自分の色を加え、吉岡流の「夢で逢えたら」を作り上げる

吉岡の歌は、77年当時のアレンジの素晴らしさ、大瀧詠一の偉大さを、改めて教えてくれる。40年以上経った今も瑞々しく華やかなそのサウンドは、吉岡のボーカルをさらに生き生きと輝かせ、聴き手の元へ運んでいる。いきものがかりはメジャーデビュー前、ストリートライヴで、色々なアーティストの曲をカバーしていた。ボーカルの吉岡は誰もが知っている曲を、オリジナルを最大限にリスペクトしながらも、自分の色を加え、道行く人の耳に留まるように“最高のカバー”になるべく歌っていた。今回の「夢で逢えたら」のカバーがまさにそうだ。是非作者である大瀧の感想が聞きたかった。

『レコー丼~超七色大盛り~』(3月15日発売)
『レコー丼~超七色大盛り~』(3月15日発売)

現在は“放牧中”のいきものがかりだが、メジャーデビュー日の3月15日に、自身初となるオリジナルアルバム7作LPレコードBOXセット『レコー丼~超七色大盛り~』を発売する。カッティングには名匠、小鐡徹氏を迎え、徹底的に音質にこだわり、いきものがかりの音楽、吉岡の歌を、アナログレコードの温もりと奥行きのある音で聴く事ができる。

『EIICHI OHTAKI Song Book III 大瀧詠一作品集Vol.3 「夢で逢えたら」(1976~2018)』特設サイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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