【気になる新人】ましのみ「感動を与えるというより、まず楽しませたい、とにかく興味を持って欲しい」

1stアルバム『ぺっとぼとリテラシー』(2月7日発売)
1stアルバム『ぺっとぼとリテラシー』(2月7日発売)

その新人女性シンガー・ソングライターのデビューアルバムのジャケットは、足元に大量のミネラルウォーター2リットル入りのペットボトル、背後には海と工場という、一見不思議なアートワークだ。しかしこれが注目の女子大学生シンガー・ソングライターましのみの自己紹介であり、彼女の音楽をわかりやく表すメッセージでもある――。

「最初はmiwaさんが辿った道を歩みたいとしか考えていなかった。でも途中で同じ道を辿ってもダメ、別の道で成功しないと意味がないと気づいた」

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デビューアルバム『ぺっとぼとリテラシー』で多彩な歌詞、メロディ、サウンドメイクを聴かせてくれるましのみは、2016年にヤマハグループの音楽コンテスト『Music Revolution 第10回東日本ファイナル』で、約3,000組の中からグランプリを獲得し、メジャーデビューのきっかけをつかんだ逸材だ。現在20歳の現役女子大学生。歌手を志したのは、高校3年生の時、大学受験を考えるタイミングだった。大学、学部を選ぶ時に、自分がこれからやりたい事を改めて考え、その時に、幼い頃に言っていたという、歌手になりたいという夢が頭をもたげてきた。「大学受験を考え、将来何になりたいのか改めて向き合った時、それまで数学が好きだったので理系に進もうと思っていました。でも研究職とかは絶対に無理だと思って、色々考えていると、歌手になりたいという小さい頃の夢を思い出して。それで大学が決まった後、歌手を目指すためには何をしなくちゃいけないんだろうって考えました。で、まずライヴ活動を始めよう、そのための曲を作ろうという感じでした」。

地道に努力するタイプ。だからクリエイティブな才能は自分にはないと思っていた。しかし思い立ったら、ではないが彼女は歌手になり大成するという目標を設定してから、がむしゃらに曲を作り、ライヴハウスの門を叩いた。高校の卒業文集には「miwaになりたい」と、同じ大学の先輩の名前を書いていた。「その頃は、miwaさんが辿った道を歩みたいという事しか考えなかったのですが、ライヴをまずやって、活動を始めてみると「同じ道を辿っても意味がないじゃん」と思って、私は別の道で大成しなければいけないと思った。活動をスタートしたのが遅いという自覚と焦りがあったので、とにかくスピード感を大事にしなければいけないと思って、自分の音楽のクオリティを上げるよりも、まずはライヴに出て経験を積み、同時にオーディションを受けようと思いました。その前にYouTubeにアップしたり、TwiiterやSNSも始めて、それをやりながら、考えや方向性がまとまっていった感じです」。

ギターを始めて2週間で、コードも満足に押さえられない状態で初ライヴに臨み、3曲はギターで、2曲はピアノで歌った。度胸が据わっている。「終始アワアワしていて(笑)。でも失敗しながらも楽しかったんだと思います。その時は何がダメで、とか“普通”がわかっていなかったからできたのだと思う」。

「感動を与えたいというより、興味を持って欲しいという気持ちが強い。でも今の時点で未来を確定させたくない。一年後の自分がどうなって、何に興味があるかがわからないから」

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彼女はシンガー・ソングライターであるが、その活動の根源にあるのは“エンターテイナー”としての考え方だ。「感動を与えるというよりは、興味を持って欲しいという気持ちが強いです。そもそも活動の原点として、楽しませたいとかプラスの要素を与えたいという思いが大きいので、ネガティブな内容の曲も書いていますが、ネガティヴな歌詞に、暗いメロディではなく敢えてポップなメロディを乗せてみたり。ただ単に楽しいだけではなく、ちょっと辛い気持ちが緩和されたり、もやもやしていた事がどうでもよくなったり、そういう気持ちが生まれればいいなと思っています。それぞれの人がそれぞれの仕事で、社会に貢献していると思いますが、それが私にとっては歌というイメージ。だから使命というより、何より自分が楽しんでいます。もちろん私の音楽を求めてくれる人には、求めくれる以上の事は返さなければいけないと思っているので、そういう部分は使命といえるかもしれない。自分が飽き性なので、一年後の自分がどうなっているのかわからなくて、すでに一年前と今言っている事、考えている事が全然違うんです。だからこうしたい!というのを今の時点で、未来まで確定させたくない。今のスタイル、今やっている事をずっと続けていきたいとは全く思っていなくて。今の私がいい、面白いと思って、みなさんにも興味を持ってもらいたいと思って作ったのが、このアルバムです。今の私を構成する要素をまんべんなく出して、初めて私の音楽に触れる人にもわかりやすいようにという意味で、名刺代わりの一枚と言えると思います」。

「歌詞まで辿り着いて欲しいので、曲のタイトル、メロディ、アレンジ全てに、聴いた人が気になるようなものを散りばめた」

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そんな1stアルバム『ぺっとぼとリテラシー』は、バンド、エレクトロサウンド、ピアノの弾き語りと、多彩な色を感じさせてくれる。自由奔放にジャンルを行き来するが、それは奔放なのではなく、逆にどうやったら一人でも多くの人に興味を持ってもらえるのかを、きちんと計算した、彼女同様クレバーさを感じさせてくれる一枚だ。「やはり歌詞を聴かせたい、歌を聴かせたいという気持ちが強いので、歌詞まで到達してもらうためには、まずアレンジでひっかかってくれないと、素通りされると思っていて。その次にメロディを聴いてもらって、歌詞まで気にして!という構造にしています。私の事を知らない人も多いと思うので、まず興味を持ってもらうためにアレンジも、歌詞も、曲のタイトルも気になるものを散りばめておく必要がある。だからアルバムタイトルやジャケット写真、曲のタイトルはすごく大切です。ジャケットも、ただ工場の前だとオシャレを意識していると思われるだけなので、何かひっかかりを作ろうと思いついたのが、私が良く飲む2リットルのお水のペットボトルでした。ペットボトルは身近なもので、ペットボトルを通して向こう側を見ると屈折して見えるし、私自身がそういう歌を作る工場になりたいという意味も込めました」。

「"その人にしか作れないメロディ”ってピンとこない。一番わかりやすく、その人にしかできないものを見せられるのは、言葉」

そうアルバムタイトル、ジャケットに込めた意味を教えてくれたが、アルバムには「プチョヘンザしちゃだめ」「ナンセンスに逆戻り」「エゴサーチで幸あれエブリデイ」「リスクマネジメント失敗」等、気になるタイトル、言葉が並んでいる。でもそれも共通しているのはポップな曲であるという事。ペットボトルの向こう側に映る景色のように、歪んだり、屈折しているように見えるが、純度の高いポップス、でも歪んで見える、という感じだ。彼女は特に歌詞を聴いて欲しいと言っているように、言葉には並々ならぬ想いを抱えている。「価値観の押し付けが嫌いで、押し付けられるのも嫌で、それぞれの人に価値観があるので、私の曲を聴いて自分の価値観を見直すきっかけになってくれたら、それはそれで嬉しいですが、わざわざ押し付ける必要はないと思う。例えばライヴとかで、聴いている人の価値観と、私の価値観が合致して盛り上がるのはいいと思いますが、それが私の言葉にただ流されているだけだったら、それを私は歌詞の中で揶揄しているつもりです。人の曲もまず歌詞が気になります。その人にしか作れないメロディってよく使われる表現ですが、実はそれがピンときていなくて。キャッチーでいいメロディというのはわかりますが、でもそんな曲はたくさんあるし、なんなら世に出ている曲はみんなキャッチーで、いいメロディだと思う。一番わかりやすく、その人にしかできないものを見せられるのが言葉だと思っています」。ちなみに彼女が「唯一無二の歌詞」と思うのは、椎名林檎、RADWIMPS、そしてクリープハイプだという。

「曲はライヴで聴いてもらう度にどんどん完成していく感覚がある。ライヴで一番大切なのはエンターテイメント性と、熱量」

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寸劇も飛び出す彼女のライヴは、ハマる人が続出するまさにエンターテイメントだ。ライヴに対する考え方を聞いてみると、ここでも瞬時に明確な答えが返ってきた。「CDは別として、私が生で歌うものとしては、聴いてもらう度にどんどん完成していく感覚があって。でも録音している時はその時が完成だという感覚もあって、やっぱり音源とライヴは別ものと考えているからかもしれません。だからライヴにCDの再現性を求めてはいなくて、その時に合わせて歌詞を変えてもいいと思っているし、それくらいライヴというのはお客さんありきで、生という事ありきなので、熱量が大事だと思っています。歌詞は音源の方がしっかり聴けるので、ライヴで一番大切なのはエンターテイメント性です。お客さんの心に、ワクワクして、楽しかったという事が漠然と残っているという事が一番大切」。

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「一年後の自分がどうなっているのかわからない」と言う、セルフプロデュースの意識、能力が高い20歳のシンガー・シングライターの作り出す音楽は、ペットボトルに光を当てた時に、光の屈折が作り出す虹のように、いつもカラフルで美しいもの――そう思わせてくれる、圧倒的な個性と計り知れない可能性を感じさせてくれるシンガー・ソングライター、エンターテイナーがデビューした。

ましのみオフィシャルサイト