【気になる新人】King Gnu「同世代の他のバンドは洋楽を目指し、俺達は邦楽をやる。そこが違う」

左から新井和輝、勢喜遊、常田大希、井口理

音楽シーンを賑わせる注目のバンド・King Gnu

『Tokyo Rendez-Vous』(10月25日発売)
『Tokyo Rendez-Vous』(10月25日発売)

今、King Gnu(キング・ヌー)という4人組バンドがシーンをざわつかせている。新世代の要注目バンドとしてすでに注目しているリスナーも多く、今年「フジロックフェスティバル2017」などにも出演し、ライヴシーンでもその圧倒的なパフォーマンスが話題になっており、波が確実に広がってきている。圧倒的センスとオリジナリティを感じるミクスチャーではあるが、根底にはJ-POPをしっかりと見据えたスタンスを持つ、間口の広いバンドともいえる。それは10月25日に発売した、本人たちが「歌モノのアルバムを作りたかった」という1stアルバム『Tokyo Rendez-Vous』に強く感じる。オルタナティブでありつつ、メロディは美しく、歌謡曲が持つ大衆性と豊潤な音楽性を感じさせてくれるその絶妙なバランス感覚は、お見事のひと言だ。個性派の4人、常田大希(G/Vo)、勢喜遊(D/Sam)、新井和輝(B)、井口理(Vo/Key)に、King Gnuというバンドについて、記念すべき1stアルバム『Tokyo Rendez-Vous』について話を聞いた。

なんと説明していいのかわからない、というのが彼らの音楽に初めて触れた時の感想だった。でもすごくイイ、なんか気になる――居ても立ってもいられずライヴを立て続けに観て、バンドが醸し出す空気、その音楽から感じるセンスとクールさと熱量に、どんどん魅せられていった。自分がこれまでに感じた事がない感覚をくすぐられるような、そんな新しさだった。アルバム『Tokyo Rendez-Vous』もそうだ。全曲、一行目の歌詞から気になる言葉、フレーズが置かれ、どんどん引き込まれる。

「みんなが歌いたくなるものをという事を意識して作った1stアルバム」(常田)

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King GnuはそれまではSrv.Vinci(サーヴァ・ヴィンチ)と名乗っていた。今年3月、米国・テキサス開催されたSxSxW (サウスバイサウスウエスト)JAPAN NIGHTに出演し、その後全米7か所(ニューヨーク、シカゴ、シアトル、ポートランド、サンディエゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ)でライヴを行い、帰国後の4月に改名した。それは常田を中心にして、固定メンバーが存在しなかったSrv.Vinciに、現メンバーが集まり、アルバム表題曲「Tokyo Rendez-Vous」という、バンドの方向性を示す作品が完成した事で、新しいバンドとしてスタートを切った。それまでの音楽性は常田の「個」が強く出ていたが、今は4人それぞれの「個」、迸る才能がぶつかり合い、せめぎ合い、その摩擦から生まれる音楽は、アカデミックさとアナーキーさが混在している。「決め込んだ音楽性よりも、それぞれが強い場所、やりたいことを入れて欲しい」(常田)。「このバンドは最初からメジャーに行くんだと言っていましたね」(新井)、「規模を大きくしたいという思いもあって、King Gnuというバンド名にしました。その名刺代わりになる曲が集まっているのが『Tokyo Rendez-Vous』で、みんなが歌いたくなるようなものという事は意識しています」(常田)。ちなみにヌーという動物は、嗅覚が鋭く、草食性で草原を求めて集団で大移動するのだとか。

常田大希の才能は、音楽業界でも一目置かれる存在。米津玄師のアルバムにも参加

強烈すぎる「個」を持つ4人が集まり作り上げたアルバム『Tokyo Rendez-Vous』に込められたエネルギーは、凄まじいものがある。東京藝術大学でチェロを専攻していたクリエイター・常田の才能の凄さは、音楽業界でも一目置かれ、『Tokyo Rendez-Vous』の収録曲「破裂」での美しいストリングスアレンジは聴きどころのひとつだ。「クラシックをやっていましたが、それはしっかり生きていて、「破裂」のストリングスのアレンジは、どちらかというと雑なストリングスアレンジが目立つJ-POPの中では、“ちゃんとしている”方だと思います(笑)」。また常田は注目のアーティスト・米津玄師のアルバム『BOOTLEG』の中でも一曲、プロデュース、アレンジを手がけ、ギターと鍵盤もプレイしている。

「歌はもちろん、映画にも舞台にも出たい」(井口)

“歌もの”アルバムで、しっかりと聴き手に心の奥深くまで届ける圧巻の歌を聴かせてくれる井口も常田同様、東京藝術大学で声楽を専攻したという、まさに筋金入りの歌うたいだ。「このアルバムを出すまではどう届くか不安でしたが、そうやって言っていただけて安心しました」(井口)。「(井口)理の声は、ストレートに歌うと、歌がうまいだけにアニソンのような感じになってしまいます。良くも悪くも洋楽っぽさが全くない」(常田)。井口はバンドと並行して舞台役者としても活躍している。「映画がすごく好きで、演技をやりたいです。バンドも大きいところでやりたいと思っていますし、映画も舞台もやりたいです。仕事下さい(笑)」。

“トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイル”

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バンドの要・リズム隊のドラムの勢喜は、高校時代ストリートダンスをやっていた。「小、中学校の時はダンススクールにも通って毎日ダンス漬けで、プロダンサーを目指していました。高校生の時レッド・ホット・チリ・ペッパーズの音楽で踊るようになって、そこからファンクにハマり、ブラックミュージックへと入っていきました。でも高校に入ってバンドを組んでドラムをやったらハマってしまい、上京してからは色々な人とセッションを重ねていました」。そんな時に現在のメンバーに出会った。ベースの新井はバンドに誘われて「ベースしか空いてなく仕方なく始め、最初はアジカンのコピーをやっていました。それからジャズやブラックミュージック、ヒップホップにハマっていきました」。常田は「洋楽がメインでしたが、中高生の頃はブランキー・ジェット・シティやザ・ミッシェルガン・エレファントにハマっていました」。井口は「親と兄弟の影響で、井上陽水やオフコース、J-POP全般しか聴いていませんでした」と、邦楽しか聴いていなかったメンバー、ファンクなどのブラックミュージックやジャズ、ヒップホップに影響受けているメンバーと、その“土壌”は様々で、同じ趣味で同じ方向を向いていないメンバーが集まっているからこそ、面白いものが生まれる。彼らは自分達の音楽の事を“トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイル”と呼んでいる。和洋折衷、なんでもありの東京という街に住み、東京発の新しい音楽を作り上げた。

「オアシスの歌でイギリスでは大合唱が起こる。日本で俺達の歌で大合唱を起こしたい」(常田)

「全員のストロングポイントの歯車がかみ合っていて、全てのバランスがとれているのが強み」(新井)

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このバンドが他のアーティストと圧倒的に違うところとして、常田は「同じシーンにいる、同世代のミュージシャンは洋楽をやろうとしている。でも俺達は邦楽をやろうとしていて、まずその姿勢が違う。日本で活動するという事は、日本人がたくさん聴いてくれるわけで、その人達の心に深く届けるなら、当たり前だと思う。オアシスが地元イギリスでライヴやフェスをやると、「Live Forever」という曲で大合唱が起こるんです。あれは彼らが、母国語の英語で、境遇を歌う事で共鳴し合って生まれるものだと思う。俺達は日本でKing Gnuの曲で、大合唱を起こしたいと思っています」と言い、「みんなが歌いたくなるもの」として今回のアルバム『Tokyo Rendez-Vous』を作った。新井は「バランス感だと思う。リズム隊がブラックっぽいノリで、日本語詞でロックな部分もあるし、(常田)大希が作る音楽の重量感というか質量と、理の声の軽さ、その全てのバランスが良くて、歯車がきちんとかみ合っている。そこは他にはない強さだと思う」と教えてくれた。

「“流行ガン無視の音楽”と言わるけど、洋楽ではなく邦楽をやろうとしているから、そう言われるのだと思う」(勢喜)

勢喜は「どこかの記事で、俺達の音楽の事を“流行ガン無視”という感じの事を書いてくれていて、これはさっき大希が言った、洋楽をやろうとしているバンドが多い中で邦楽をやっているという事だと思います。今のシーンにはいないタイプだと思う」(勢喜)と、やはり他のバンドとは目指しているところが違うという強さを挙げてくれた。井口は「例えばレコーディングの時は(新井)和輝と勢喜(遊)の噛み合わせ方と、歌とは別で考えていて、音に歌を寄せるとか、音が歌に寄り添っているとかそういう感覚は全くなく、でもひとつになると絶妙なニュアンスができあがっている」と、新井同様、それぞれのストロングポイントを活かした音楽作りが、結果的に絶妙のバランスを築き上げていると語ってくれた。

アートワークやMUSIC VIDEOは、常田が中心になっているクリエイティヴ集団「PERIMETORON」が手がけ、映画、テレビ、ファッションシーンからの依頼が殺到していて、こちらでも注目を集めている。音楽だけではなく、全てにおいて圧倒的な“センス”を発信するKing Gnu。“東京”が自信をもって日本へ、そして世界へプレゼンしたいバンドだ。

King Gnuオフィシャルサイト