【インタビュー】金子ノブアキ 俳優とミュージシャン、二刀流を貫く理由

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大きな括りでいうと、エンターテイメント業界で“今、最も注目を集めている男”の一人であり、その魅力に男も女もホレる男――今年結成20周年を迎えるロックバンドRIZEのドラマー、ソロ活動、AA=のサポートと、音楽を軸に活動し、また俳優としても活躍する金子ノブアキである。数々の話題の映画やドラマに引っ張りだこで、いずれの作品でも際立った存在感を放ち、ワイルドさと色気、そして温かさを感じさせてくれる、貴重な存在の表現者だ。そんな金子の温かさを感じる、自身も「どちらかという普段の自分に近い」という、カメラマン役で注目を集めているのが、現在出演中のドラマ『セシルのもくろみ』(フジテレビ系毎週木曜22時~)だ。ファッション雑誌業界を舞台に、専業主婦、独身、共働き、シングルマザーなど様々な立場の女性たちクローズアップした物語で、とにかく女性出演者が多い。そんな女性中心のドラマは、数少ない男性出演者の目にはどう映っているのだろうか?その視線の先に見えるものを金子に教えてもらった。

ドラマ『セシルのもくろみ』でカメラマン役 「一服の清涼剤、相談役になれれば」

「見方を変えて、男女逆転って考えると完全に任侠モノな感じなんですよ。撮影初日に、よう子ちゃんのあのキャラクターを見て、あれだけ勢いがある役だから、僕は思い切り柔らかい空気を出した方が、そういう役割の人が他にいないのでいいのかなと思いました。相談役(笑)というか、一服の清涼剤じゃないですけど、緩急でいうと緩めるポジションだと自覚して演じています」。

雑誌『ヴァニティ』の専属カメラマン山上航平役の金子は、主婦から同誌の読者モデルへと成長していく主人公・宮地奈央(真木よう子)を、ファッションライター沖田江里(伊藤歩)、カリスマヘアメイク安原トモ(徳井義実)と共にサポートしていく“チーム・ミヤジ”の一員だ。嫉妬、見栄、生存競争、経済格差、禁断の男女関係が渦巻く業界で奮闘する奈央を、厳しくも真剣に支える役どころだ。

「特に前半は、チームを組んで4人で動くという感じが強く、そのバランス感を考えました。バンドを組む感覚でした。このチームもそうですが、出演者全員がとにかくキャラが強くて、ルフィとか悟空、桜木花道みたいなキャラの人が集まっていて(笑)、女性ファッション誌が舞台ですが、「週刊少年ジャンプ」を地で行っているような感じなので(笑)、男性が観ても共感できるドラマだと思います」。

「奈央(真木よう子)は強さと優雅さ、品格を兼ね備えている。でも優しくて脆くて、どこか寅さんみたい」

金子が真木よう子を実際に撮り、番組内で使用されたカット
金子が真木よう子を実際に撮り、番組内で使用されたカット

普段は被写体として写真を撮られる側の金子が、今回は撮る側、カメラマン役にチャレンジしているが、そのスタイルや空気感を参考にしたカメラマンがいるという。「本当に素晴らしいカメラマンさんと普段から仕事をさせてもらっているので、入り方やフォーム、見方、アシスタントさんとのやり取り、全ての空気感を「参考にさせてもらうよ」と連絡しました。劇中でいい写真が撮れたら、オンエアでそのまま使ってくれて、4話でも実際に奈央を撮ったカットを使ってもらったり、最近はそこの勝負になっていますね(笑)。でも撮る事に集中しすぎて、「顔が映らない」って監督に注意されたり、自分の仕事がわからなくなっています(笑)。でもそういうモチベーションを現場で作ってもらえているという事なので、これからも作品が採用されるように頑張ります(笑)」。

その被写体でもあり、役者陣の座長でもある主役の真木よう子という女優については、どう見ているのだろうか。「彼女は象徴的な強さと優雅さと品格を兼ね備えていて、その瞬間瞬間で、どの武器を使って仕掛けてくるのか、彼女の選択や判断をすごく楽しみにしています。座長がここまで仕掛ける作品はあまりないかもしれない。主役ってニュートラルなところにいなければいけないし、そんな中で尊重したいのは、今回本当に振り切った役作りをしてきたところです。強さとチャーミングさがあって、優しくて脆くて、という一面もあって、どこか寅さんみたいですよ(笑)」。

「普段の自分に近い役をこのタイミングで演じる事ができて、今後にもいい影響が出そう」

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金子は今回このドラマに出演した事、山上航平という役を演じた事は、自身のキャリアの中でも非常に大きいという。そして視聴者にこの役を通して感じる雰囲気が、印象に残って欲しいと願っている。「今春にはドラマ『CRISIS(クライシス) 公安機動捜査隊特捜班』に出演させていただいて、本気でアクションに取り組み、あのチームと共演させていただいた事は本当に光栄でした。同時にRIZEのツアーもやっていて、精魂尽き果てるというか、どこかやりきった感じがして。次の作品はどうなるのか、いただくお話は怖い人、悪い人、戦う人というのがやっぱり多くて、40代に向かっていくとき自分はどういう風になっていくのかと考えました。そこに今回のこの柔らかい、普段の自分に近い役をいただいて、パーソナル的に今後を見据えても、いい広がりが出ると感じ、幸運だったと思います。その時その時の役を通して、あなたは今ここにいるんだよという事を教えてもらっていて、どんなキャラクターでも鏡になる部分があります」。

「ミュージシャンと俳優、両方をやる事によって自分は成立している」

金子は1994年から子役としてテレビドラマなどで活躍していた。しかしその後RIZEを結成し、音楽に軸足を置き活動を行っていた。そして20代後半になり、自分が創造出来る可能性を模索したときに改めて形に残す事の意味を考えるようになった。音楽活動以外でも、自分が参加する事でその作品のプラスになるなら、積極的にベストを尽くそうと決めた。時を同じくして映画『クローズZEROII』(2009年/三池崇史監督)への出演依頼が舞い込んできた。そしてこの年はフジテレビ系月9ドラマ『ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~』にも出演し、役者として新たなスタートを切り、その後の活躍は誰もが知るところだ。

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「俳優部の仕事は、監督他スタッフの皆さんが作り上げたものがそこにあって、カメラの前で待ち合わせる感じで受動的ですが、音楽の現場に行くと監督、脚本、出演も自分という事もあって、その時立ち位置の違いをすごく感じます。そういう意味で俳優部は楽もさせてもらえますが、スタッフさんの熱、役者の熱がぶつかり合う熱い現場で、違ったプレッシャーもあって、そこに慣れるまでに時間がかかりました。しかも俳優とミュージシャンの世界を行ったり来たりしているので、こっちでピントが合ってきたらまた音楽の方に行って、という時期が2~3年あって、でも今は役者の方は先回りできるくらいの余裕が出てきました」。

最近は、俳優とミュージシャン、両方をやる事によって自分は成立しているという事を、強く実感する事が多いという。音楽一家という環境の中で育ち、金子ノブアキという人間を構成する成分のルーツは音楽にあるかもしれないが、子役時代から考えると、役者としてのキャリアの方がミュージシャンとしてよりも長い。“表現者”としての血がさらに濃くなったという事だろうか。「自分自身の人生を考えると今の形がベストだと思えます。今年の前半はRIZEのライヴツアーで全国を回っていて、結構タイトなスケジュールだったのですが、欲深い話ですけど、何か全然足りなくて。それは役者としての時間が足りなくて、心が渇いてしまいそうになりました。こんなことでいいのかと。それで『CRISIS~』の現場に参加できて、この感じがやっぱりいい!と思って。その後ツアーに戻ってまた足りない足りないってイライラして(笑)。それで今回『セシルのもくろみ』に参加させてもらって、最高です(笑)。これで心の渇きの出所がハッキリしましたね」。

RIZE結成20周年。12月、初の日本武道館公演に臨む

今年結成20周年を迎えたRIZE。9月6日には7年ぶりのオリジナルアルバム『THUNDERBOLT~帰ってきたサンダーボルト~』を発売し、12月20日には春から続いているロングツアー『RIZE IS BACK』のファイナルとして、初の日本武道館公演を行う。俳優としての時間を過ごした後は、ミュージシャンとして、RIZEのドラマーとしてファンにメッセージを届けに行く。「日本武道館は大きなハコですが、最初で最後というつもりでやりたいです。それくらい特別な1日にしたいと思っています。若い人も、血気盛んなお兄ちゃん達もいっぱい来ると思うし、当時から来てくれていた人もたくさんいて。僕達のライヴで知り合って結婚して、子供が生まれて、という話もよく聞くので、そういう尊さを大切にしたいので、全部を祝福する、祝祭にしようと思っています。僕らの音楽、ライヴが、聴いてくれる人の人生のサントラになってくれたら嬉しいです」。

「ライヴ中も撮影の本番中も、自分の周りを包む静けさの中で集中できる」

ライヴもドラマも、観てくれている人に喜んでもらう事が一番だが、同時に、本番当日まで、セットを始め様々な事、モノを一生懸命作り上げてくれた、スタッフの熱い想いに応えるというところは同じだ。「音楽業ではドラマーというある種職人気質のポジションでやってきていて、スタッフとの関係も最初から深くて。俳優部の仕事でも、やっと大きな声でそういう発言をできるようになってきたのは、精神的な余裕ができたからだと思う。胸を張ってそこは頑張ります、いいものにするのでと、責任の所在をちゃんと自分に向けて発信する事が怖くなくなってきたというか。でも気持ちとしてはすごい静けさの中にいて、いいライヴもそうなんですよ。よく、ライヴ中何を考えているんですか?と聞かれることがあって、でもあの狂乱の中で、張り詰めた空気の中で、調子がいい時ほど何も考えていないんです。本当に静けさの中にいて、爆音の中でも自分の周りは静かで。ドラマの撮影でも、本番のブザーが鳴っても自分の中では静けさが支配していて、テストも本番も変わらない感じで、役に入れるようになってきました」。

今あぶらが乗っている充実の時

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こういう状態で表現できている時を、ノリにノッているとか、あぶらが乗っているというのではないだろうか。精神的にも技術的にも充実し、放つ熱量や空気感も含めて、多くの人に支持される状態。金子は今まさにそういう時を迎えている。「自分で言ってはダメだと思いますが、いいタイミングなんだと思います。楽しいし充実しているし、優しい時間を過ごす事ができているなって。やっぱり演じる役とかそのキャラクターに影響される事が多いし、今は『セシルのもくろみ』の山上航平に引っ張られているのかもしれない。でも自分に幅が出てきたというか、余裕が出てきて、自由度が高くなってきたのかもしれません」

ミュージシャンとしても俳優としても、これからの金子ノブアキが放熱するエネルギーは、これまで以上に、深い感動を作り出し、観る人、聴く人の心を潤してくれそうだ。

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<Profile>

1981年生まれ、東京都出身。幼少期から子役として活躍。1997年RIZEを結成し、2000年メジャーデビュー。RIZEは今年結成20周年を迎え、12月20日に初の日本武道館公演を行う。9 月8日 (金)~10日(日)、東京・世田谷パブリックシアターで行われる舞台「VOYAGER」では、音楽監督を務める。

『セシルのもくろみ』オフィシャルサイト

金子ノブアキ オフィシャルサイト