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音楽プロデューサー島田昌典の魔法が炸裂する新感覚舞台とは!?1テイク1マイクオーディションとは!?

田中久勝音楽&エンタメアナリスト

音楽プロデューサー・島田昌典というと、これまでにaiko、いきものがかり、秦基博、back number、JUJU、FUNKY MONKEY BABYS、YUKI、Chara、スガシカオ、ねごと等々、数え切れない程のアーティストのプロデュース、アレンジを手がけている、シーンを代表する”ヒットメーカー”の一人だ。そんな島田がこの夏取り組んでいるのが、自身も多大な影響を受けたという、1970年代の日本の名曲ライヴとホームドラマをドッキングさせた、斬新なステージ『History Of Pops』(8月22・23日/中野サンプラザ)の音楽監督だ。三浦大知、川畑要(CHEMISTRY)、上白石萌音、Liitle Glee Monsterという注目のボーカリストと、ボーカルグループが、日本音楽史上最も熱かった1970年代の名曲の数々をどう表現するのか。島田がどんな魔法をかけるのか楽しみだ。そして島田は、原石を求めオーディション「島田会ゼロ2017 NEW GENERATION みんな来てきて~!」をスタートさせた。ヒットメーカー島田が未来のシーンを担うアーティストを発掘、育成し、仕掛けていく。『HOP』とオーディションについて、島田にインタビューした。

「1970年代は日本の音楽シーンに大きなうねりが起こって、全てが新鮮だった」

――『History of Pops』(以下『HOP』)は1970年代の日本の音楽シーンを彩った名曲の数々を取り上げる企画ですが、島田さんにとって1970年代とはどんな時代でしたか?

島田 1970年というと、我が家に白黒テレビが入ってきて、家族みんなで観ていました。僕は仮面ライダーやアニメ、親は歌謡ショーなどを観ていて、そこから流れてくる歌、音楽が自然に体の中に入っていきました。歌謡曲や演歌の番組が始まって、確か1969年にザ・ドリフターズの『8時だョ!全員集合』がスタートして、番組の中でアイドルが歌っているのが楽しみで、ピアノにも目覚めていった時代ですね。

――一番多感な時期で、音楽に最も影響を受ける時代ですよね。

島田 中学生になるとビートルズにハマって、他の洋楽も聴くようになって、世の中的には69年にはウッドストックがあって、そこでフォークのムーブメントや学生運動が盛んになって、大きな波ができてきた時代でした。歌謡曲から60年代のウエスタンカーニバル、グループサウンズとかそういうポップスにどんどん変わって、そこにロックが入ってきて、融合していって、個人的にはその影響はをすごく受けました。非常に混沌としていたけど、全部新しくて新鮮でした。

――職業作家が曲を作っている時代に、フォークソングやニューミュージックのシンガー・ソングライターが登場して、生活に密着した、より身近な歌を歌うようになってきた流れは大きいですよね。

島田 そうですね、それまで、先日亡くなられた平尾昌晃さんを始め、素晴らしい作家の方がいい曲をたくさん作りあげ、その中でシンガー・ソングライターが登場して、吉田拓郎さんとか井上陽水さんが作る音楽が大ヒットして。70年代後半から80年代にかけてはニューミュージックやテクノ、ニューウェイヴがムーヴメントになってYMOが登場したり、MTVが入ってきて、洋楽とそのミュージックビデオに注目が集まる、そんなうねりのある時代でした。

「1970年代に生まれた、日本の中で進化と変化を繰り返した独特の音楽は、多くの人の体の中に入って、その後の音楽に大きな影響を与えた」

――当時はJ-POPという言葉はありませんでしたが、様々な音楽がクロスオーバーしてJ-POPが生まれた時代なのかもしれませんね。

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島田 そうですね、70年代に日本独特の音楽が作られたというか、悪くいえばガラパゴス化した音楽で、世界に出ていけばよかったのですが、日本の中で進化と変化を繰り返し、独特の音楽を作っていったという、非常にユニークな時代のユニークな音楽だと思います。それが現代のJ-POPに繋がっていますし、紐解いていくとルーツがそこにあったり、今のアーティストが70年代の音楽をやったり、多くの日本人の体の中に入っている音楽だと思います。そういう意味でも、音楽シーンにとって70年代は非常に大切だと思います。

――今回、そんな大きな波とうねりがきていた時代の音楽をテーマにした『HOP』の音楽監督を島田さんが務める事になりましたが、ライヴともミュージカルとも違う、新しいスタイルの舞台とお聞きしました。

島田 斬新だと思います。ドラマ形式というか役者さんも絡んだ、その時の色々なシュチュエーションの家族のお茶の間のシーンや、そこでテレビから流れてきた音楽をライヴで表現するというステージです。

「『HOP』ではゴージャスなアレンジが多い70年代の名曲の数々をフルバンドで演奏。それを若いアーティストが歌唱するのがユニーク」

――TBSの服部英司プロデューサーとの、膨大な曲からの選曲作業はいかがでしたか?

島田 大変でした(笑)。服部さんが「レコード大賞」や「紅白歌合戦」、オリコンなどのデータを元に、まず何百曲かピックアップして、リアルタイムで聴いていた音楽ばかりなので、そこから選んでいくのは面白かったです。改めて音源を聴いていると、やはり作家さんの作るものは素晴らしくて、アレンジもやっている方もいらっしゃったので、イントロも含めて作曲だったんだなと思いました。当時はコンピュータもないし、ビッグバンドというかオーケストレーションがわかっていないとできなかったことで、もちろんジャズもわかっていないとできないし、それだけちゃんとした音楽理論を持ち、みなさん素晴らしいメロデイメーカーだと思います。そんな方達が作った、当時お茶の間に流れていて、また時代が変わってもカバーされて、いつの時代も聴かれてきた、日本人なら誰もが知っている歌が揃った選曲になっていると思います。

――音楽監督としての大変な部分を教えて下さい。

島田 曲の構成を変え、リサイズしなければいけないのですが、譜面がない曲も多くて、当時はの曲は洋楽のテイストも結構入っていてストリングスプラス、コーラスといった割とゴージャスなアレンジが多く、それを一生懸命耳コピしてやっています(笑)。ただ、なかなか聴き取り辛かったり、でもそういうフレーズが皆さんの耳に残っているので、きちんと再現しなければいけなくて、ストリングス、ホーン、コーラスも入れたフルバンドで演奏します。

――ただのカバーライヴではなく、お芝居も絡めて、しかもお茶の間を感じさせながらそこら流れてきた音楽を、凄腕ミュージシャンが演奏して、圧倒的な歌唱力を持つ若いアーティストが歌うという、新鮮なステージになりそうですね。

8月22・23日/中野サンプラザ
8月22・23日/中野サンプラザ

島田 初めての試みなので、やってみないとわからない部分はありますが(笑)、チャレンジして面白いことができればいいなと思っています。でも若いアーティストが歌唱するというのが非常にユニークですよね。三浦大知さんはもちろんダンスも素晴らしいのですが、一度番組で共演させていただいた時の歌唱が非常にパワフルで素晴らしいなと思いました。CHEMISTRY川畑(要)さんも、ブラックミュージック、ソウルの歌い手なので、どういう風に70年代の歌を歌唱してくるのか楽しみです。リトグリは若いのに歌唱力もあるし、コーラスワークでどれだけ面白い事ができるのかワクワクしています。

――リトグリのコーラスワークは、今回のステージの中でも大きな聴きどころになりそうですよね。

島田 そうですね、コラボもできるし、その化学反応が楽しみです。上白石萌音さんの声は聴いている人を気持ちよくさせます。彼女が当時の曲をどう表現するのかも楽しみで、また違った聴こえ方がすると思います。

――ところで、たくさんのアーティストを手がけている島田さんが、まだ自分が一緒にやっていないアーティストで、最近気になっているアーティストはいますか?

島田 岡崎体育さんは面白いですね。音楽がかなりマニアックで、とにかく色々な音楽を聴いているのが伝わってきて、それを形にしようとしているのが、彼のフィルターを通して聴こえてくるので、非常に面白いですよね。新しいことをやってくれそうな感じがします。シンガーとしてはもちろん、ソングライター、プロデューサーとしても、面白いものを作ってくれそうです。

「若い才能の発掘、育成をやっていきたい」。そのためのオーディションを開催し、ライヴテイクのみの審査で、”歌える人”を求める

――そういう新世代の才能を求めて、島田さんが「島田会ゼロ2017 NEW GENERATION みんな来てきて~!」という、アーティストオーディションを開催する事が先日発表になりました。

島田 そうなんです。若者の発掘、育成をやっていきたくて、23歳以下で、形態はバンド、ユニット、シンガー・ソングライターからボーカリストと幅広く募集しています。

――応募方法が、YouTubeにワンテイクで収録したパフォーマンス動画をアップするという方法です。

プライベートスタジオの「Great Studio」。ヒット曲はここから生まれる
プライベートスタジオの「Great Studio」。ヒット曲はここから生まれる

島田 そうです、ライヴテイクが観たいんです。今は歌や演奏をDAWソフトなどを遣って編集、修正する事が当たり前になっていますが、でも今回はあえてワンテイクでのパフォーマンスを条件にしました。逆に宅録で才能がある人もいるかもしれませんが、海外でも「ワンテイクワンマイク」というオーディション方法が増えていて、僕も歌える人を求めています。でもむちゃくちゃうまくなくても、いい声であったり、未来に可能性を感じさせてくれるミュージシャンと出会いたいです。可能性を感じる、ちょっとでも光っている原石を見つける事ができればと思っています。応募のチャンスは3回(8~10月)あります。毎月末に応募を締め切り、翌月の5日に僕のSNS等でピックアップアーティストを発表するという形になります。そこで選ばれたアーティストは、11月に行う予定のイベント『島田会ゼロ2017』(原宿ストロボカフェ)出演してもらって、一緒にパフォーマンスしたいと考えています。

「島田会ゼロ2017 NEW GENERATION みんな来てきて~!」特設サイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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