Yahoo!ニュース

今最も注目を集める若手女優の一人・飯豊まりえが挑む、野島伸司作品『パパ活』「演じ切れるか不安だった」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
dTV×FOD系ドラマ『パパ活』で、主役の女子大生・杏里を演じる飯豊まりえ

渡部篤郎×飯豊まりえ×野島伸司=「パパ活」

画像

「パパ活」という言葉を知っているだろうか?体の関係なし、デートをするだけで金銭的支援をしてくれる男性との交際の事だ。情報番組でも取り上げられるほど、話題を集めているこの新たな男女関係を、ヒットメーカー・野島伸司が独自の視点で切り取り、紡いだ“スキャンダラス”なラブストーリーが、dTV×FOD共同製作ドラマ『パパ活』(配信中)だ。主演は渡部篤郎と、今最も勢いのある若手女優の一人・飯豊まりえ。「パパ活」を通じて知り合い、隠されていた真実に直面しながら衝撃的な運命へと導かれる45歳の大学講師と、ごく普通の20歳の女子大生をそれぞれ演じている。「自分とは正反対」の難しい役どころの、女子大生・杏里を演じた飯豊に、このドラマについて話を聞いた

「私が演じる杏里ちゃんと私は、何もかもが違っていて、あまりにもリアルではないので、演じ切れるのか不安だった」

「正直に言うと、私にはできないと思いました」――この「パパ活」という企画と共に野島の脚本を手にした時の感想を、素直にそう語ってくれた飯豊はさらに「まず自分の父親と近い年齢の男性との恋愛を理解するのが難しそうだなと思いました」と、テーマになっている「パパ活」自体を理解できないところから、役作りに入った。それは共演した渡部篤郎も同じで、渡部は「自分には似ていない人物を演じる事は、大変貴重な経験で、役の感情を理解することに、普段以上に時間をかけたように思います」とコメントしている。

しかし飯豊は、そんな難しいテーマのドラマも、前向きに捉えて出演を決断した。「10代でこういう役を演じる機会ってなかなかないと思いますし、お話をいただいたのも何かの縁だと思って、出演させていただこうと思いました。色々な人の話を聞いたりしていくうちに、恋愛は愛さえあれば年齢は関係ないんだ、という事がわかりました。私が演じた杏里ちゃんは普通の女の子なので、普通に恋をする気持ちだったらできるなと思っていました」。これまでは、どちらかというと自分の延長線上にある役が多かった飯豊だが「杏里ちゃんは、口調も普段の私とは全然違うし、私は大人の男性との恋愛も経験していないし、杏里ちゃんの家族環境とも全然違うし、なにもかもがあまりにもリアルではなかったので、演じ切れるのか不安でした」と、やると決めたものの不安は消えなかった。

「私にはできない恋愛の形。でも杏里ちゃんを頑張れ!と応援したくなります」

杏里はごく普通の女子大生だが、母親に恋人ができた事がきっかけで家から追い出されてしまう。交際中の彼氏からも見放され、ネットカフェを転々とする日々の中で、友達から「パパ活」の存在を聞くというストーリーだ。そんなあまりにも自分が置かれた環境の違いに、戸惑った飯豊だったが、プロデューサーからの「逆に恋愛をあまり知らない人、恋愛体質じゃない人に演じて欲しかった」という言葉を聞き、自信を持つ事ができたという。

画像

飯豊演じる杏里は、恋愛に不器用で、でも恋をすることによって男性の気持ちを理解できるようになり、自分の気持ちにも気づき、成長していく。そんな一人の女性が美しく成長していく姿を描いている。「恋愛のきっかけがたまたま「パパ活」だったという事ですよね。でもそんな人生を変えるような出会いがあるなんて、素敵だなと思いました。でもあそこまで振り切っちゃう杏里ちゃんは凄いと思いました」と、同じ女性として理解できる部分もあるが、相容れない部分もあったという。「私は石橋を叩きまくるタイプなので、杏里ちゃんは潔くてすごいなと思いました。私にはできない恋愛の形ですけど、そういう気持ちを持っている杏里ちゃんを、頑張れ!って応援したくなります」。

画像

脚本は名匠・野島伸司。「101回目のプロポーズ」('91年)「高校教師」(‘93年)、「未成年」(‘95年)等、数々のヒット作を生み出している野島は、このドラマについて「「パパ活」は、援助交際を綺麗事で包んだとも言われていますが、現代世相の1つです。背景には、授業料、奨学金が払えない貧困女子という、社会問題と繋がっているようです。物語はフィクションであり、入り口のモチーフとして使い、中年男性との想像も出来ない恋物語に移行します。ヒロインと同じように進むかどうかの選択肢は多義に渡ります。自分に置き換えて視聴して楽しんで貰えたらと思います」とコメントしている。そのセリフ一つひとつがリアルで、現代社会の“気分”を見事に描いている。そんなセリフの中で、飯豊が特に印象に残っているのは「あなたは橋の向こうにいるの」というフレーズだという。「とても素敵で、でも儚いなと思いました。今、年の差の恋愛も多いと思いますが、こういう風に感じている女性も多いんじゃないかなって。心地いいけどフワフワしていて不安定で、だけど一緒にいたいという気持ち」。演じていくうちに、色々な人の話を聞くうちに、年の差の恋愛にハマる女性の気持ちも理解できるようになった。そして「撮影している時に、ワイドショーで「パパ活」が取り上げられていて、そこで「本当に話題なんだ」ってビックリしました。このドラマの情報解禁の時に、Twitterで「パパ活」の事を検索したら、パパ活をやっている女子が「パパ活のドラマやるんだって!」って盛り上がっていたので、そういう人達にどういう風に感じてもらえるのか、楽しみです」と、リアルに「パパ活」をやっている女性からの反応を、楽しみにしている。

「役に入り込んでしまい、家に帰っても気持ちが沈んだり、誰かに助けて欲しいと思ったりしました」

「パパ活」という一見ライトな言葉のタイトルだが、ヘヴィなシーンもあって、でも大学生のリアルな生活が垣間見れたり、今の社会で起こっている事をとことんあぶり出している。「短期間で濃い体験をしました。大学生の友達同士の会話とか遊びとか、コメディ要素もちょっとあったり、ほっこりするシーンもあって、同い年の男の子との会話も甘酸っぱかったり。体を張るシーンもありましたけど、なんとか頑張りました。でも両親には観て欲しくないなって」と、撮影を思い出し、凛とした態度で語ってくれつつ、恥ずかしそうな表情も見せてくれた。

画像

飯豊が杏里という役柄にハマり、そこから抜け出すのが大変だったという苦労話も聞かせてくれた。「杏里ちゃんが、家を飛び出しても行くところがなくて、寝るところもネットカフェしかないというシチュエーションは、演じていてすごく孤独でした。家に帰って気持ちが沈んでしまったり、誰かに助けて欲しいって思ってしまいました。私は無意識のうちに役が自分に入り込んでしまって、プライベートにも持ち込んでしまいます」。素直でスポンジのようになんでも吸収できる今が、女優として飛躍するチャンスでもある。ベテラン渡部との共演も、大きな財産になっている。「渡部さんは距離感が大人でした。スマートですし、アドバイスもしていただきました。長いセリフの時に「今のセリフ、言おう言おうとしなくていいからね」とか、「ひと間空けてからやってみて」とか、的確でわかりやすいアドバイスをしていただいて、たくさん学ぶ事ができ、ありがたかったです」。そして「最初は不安でしたが、やり終わったらこの役をやらせていただいて、本当によかったと思いました。撮影が、ドライのリハはあったのですが、テストがなかったのでぶっつけ本番で、大変でしたけど楽しかったです。鮮度が保てていて、リアルなものが生まれる瞬間は楽しかったのですが、緊張感はありました。このドラマを経験して、近くにいる人によって本当に変わるんだなと実感しました。一緒に時間を重ねていく、周りにいる人って重要だなって。絶対影響されていくし、これから出会う人ってすごく重要だなと思いました」と撮影を振り返りながら、自身がこのドラマで受けた影響の大きさを改めて実感していた。

飯豊まりえ19歳。無限の可能性を秘めた大型女優のキャリアの中でも、この『パパ活』という作品を通して得た事は、大きな武器になるはずだ。「「飯豊まりえっていうのがまだわからないでしょ?」って言われる事もあって、正直自分でもわからなくて、今は何もない状態なので、その時その時の役とか監督さんの色をもらって、自分にあるものを出せたらいいと思っていて。だからどういう女優さんになりたいとか、どういう役をやりたいというのはあまりなくて、これから楽しみで、ワクワクしています」。恋愛をテーマにしたドラマではあるが、根底に流れているのは、心に傷を負った人間が、精一杯生きようとする、その前向きな姿勢を、愛を持って見守る優しさだ。

画像

<Profile>

いいとよ・まりえ 1998年1月5日生まれ、千葉県出身。2008年ファッション雑誌「ニコプチ」でモデルデビューし、「ニコラ」、「セブンティーン」の専属モデルを務める。その後、女優として活躍し、多くのドラマ、映画に出演。CMや広告にも引っ張りだこの、今も最も注目を集める若手女優の一人。主演を務める、現在配信中の、dTV×FOD系ドラマ『パパ活』は大きな反響を受け、これまでに配信してきた第1話から第4話までを無料配信することが決まった(視聴期間/7月22日(土)~7月30日(日))。

dTV『パパ活』特設サイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

田中久勝の最近の記事