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aikoの”凄み“と”愛”を改めて感じた、年末のアリーナツアーと初のカウントダウンライヴ

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
12/27横浜アリーナ
12/31大阪城ホール
12/31大阪城ホール

CD-露出ーライヴのサイクルを、17年間愚直なまでに続け、常にファンの近くにいるaiko

12/27横浜アリーナ
12/27横浜アリーナ

年が明けたとたん、芸能マスコミは大きなネタが次から次へと舞い込んできて、大忙しだろう。Yahoo!ニュースのトピックスも、同じネタの、切り口が違うニュースが、一日に何度も配信され、なんだか目まぐるしい、一日が過ぎていくのがより早く感じる。気づいたら1月ももう中盤が過ぎ、年末に行った数々のライヴが、もう遠い昔のことのように感じる。そんな中で、今思い出してもゾクゾクするような強烈な余韻を残してくれたのがaikoのライヴだった。どのライヴもそうだが、終演直後は、大音量の中にいると人の脳は一時的に麻痺するといわれているので、感動が刷り込まれ興奮状態が続いているが、時間が経ってもその余韻が続く”おいしい”ライヴだったのが、aikoのライヴというわけだ。それはきっと”愛“で溢れていたからだと思う――。

12/27横浜アリーナ
12/27横浜アリーナ

aikoは昨年、シングル「夢見る隙間」「プラマイ」の2枚のシングル、ライヴBlu-ray&DVD『aiko 15th Anniversaty Tour『POPS』『ROCKS』」をリリース。さらに4月から8月まで、全7都市25公演の約1年半ぶりのライヴハウスツアー『Love Like Rock vol.7』を開催。そして8月30日には3年ぶりとなる野外フリーライブ『Love Like Aloha vol.5』(サザンビーチちがさき)を行い、約36,000人ものファンが神奈川県・茅ヶ崎に集結。11月22日には40歳の誕生日を迎え、年末には先述した”おいしい”ライヴ、横浜アリーナ2daysと、自身初の大阪城ホールでのカウントダウンライヴ『Love Like Pop vol.18〜CountDown Live あっという間の最終日〜』という3本のみのプレミアムライヴツアー『Love Like Pop vol.18』を行い、変わらず精力的に動き、ファンを楽しませた。その中でもやはりデビュー18年目で初めてとなる地元・大阪でのカウントダウンライヴが、大きなトピックだろう。こうして彼女はデビューして18年間歌を作り続け、CDをリリースし続け、そしてテレビ他メディアへの露出もしっかりやり、ライヴもライヴハウス、ホール、アリーナと様々な規模のツアーを組み全国を回る。このサイクルをずっと続けていることで、ファンは常にaikoを近くに感じることができ、満足度が高いのだ。

3本のアリーナツアーにありたけの情熱と愛を注ぎ、ファンの胸に刻み込む

12月26日と27日の横浜アリーナでのライヴは、27日の方に参戦したがセットリストを前日からマイナーチェンジしていた。以前ここでも彼女が愛され続けるその魅力について書いたが、そのひとつがライヴだ。ライヴハウス、ホール、アリーナ、会場の広さは関係なく、お客さんとの距離はいつも同じだ。とにかく近い。この日も広い横浜アリーナのセンターステージから、2階のお客さんと普通に会話を楽しんでいた、まるで友達と話をしているように。とんでもない親近感をファンは感じる。だからそこにいる人達全員がaikoのラブソングは、まるで友達の失恋話や男性への想いや悩みを聞いているようで、スッと入ってくるし、より”親身“になって聴くから深く伝わる。ファンからお題をもらい、それを元に即興で曲を作り、歌う弾き語りのコーナーは、もちろん横浜アリーナでも健在だ。aikoがコード(進行)を探りながら曲を作り、詞を作り、曲が出来上がる瞬間を目撃できるという貴重なコーナーだ。一切仕込みがないから面白い。しかも毎回”名曲”が生まれ、ファンはここでaikoというシンガー・ソングライターの凄さを、目の当たりにする。このコーナーは特にゆったりとした時間が流れ、aikoがまるで自分の家に友達が遊びに来ている時に、曲を作っているかのようなリラックスタイムだ。当のaikoの方は必死かもしれないが。

12/27横浜アリーナ
12/27横浜アリーナ

この日のセットリストはニューアルバムを引っ提げてのツアーではないので、新旧の作品を織り交ぜたベスト的な内容で、シングル曲はもちろん、アルバム『泡のような恋だった』(‘14年)、『時のシルエット』(‘12年)という最近の強力なアルバムからもタップリ披露してくれ、濃い内容だった。今回のツアーではバンドメンバーが変わったせいか、音にどこか緊張感があって、どこかいつもとは違う肌触りのライヴを作り出していた気がする。それが逆に新鮮でもあった。

この日はセンターステージで、映像と照明の演出が、いつも以上に素晴らしかった。歌の世界観をよりしっかりと、かつ感動的に伝えるべく、考え抜かれた演出で、あの照明に包まれて歌うaikoの姿はファンは忘れられないだろう。照明でも観る側に幸福感を残してくれる。これも徹底したサービスだ。今回3公演のみのアリーナツアーだが、チケット代以上のものを観せたいというチームaikoの意気込みが伝わってきた。そのサービス精神の旺盛さには毎回頭が下がる。18年目のベテランにこんなライヴをやられたら、若手は太刀打ちできない。キャリアがなせる技といえばそうかもしれないが、そのパワーは年々増すばかりで、誰もがまた来たくなるライヴを観せてくれる。

意外にも!?初のカウントダウンライヴ。地元・大阪での開催に本人もファンも感激

12/31大阪城ホール
12/31大阪城ホール

12月31日、大阪城ホールにはaiko初のカウントダウン、しかも地元で、ということで多くのファンが大きな期待感とワクワク感は抱え、詰めかけていた。そんなファンに開演前から盛り上がってもらうために、会場の外にはオリジナルののぼりが掲げられ、飲食ブース、金魚すくいやヨーヨー釣り、スーパーボールすくいなどの屋台も用意され、一夜限りのスペシャルライヴに向け、気分が盛りあがってくる。そしてその盛り上がりがまず最初に爆発したのがオープニングだった。オープニングナンバーの最新曲「プラマイ」で、aikoはなんと振袖姿で登場。ものすごい大歓声が会場を包む。4時間半を超えるライヴのスタートだ。軽やかさに艶やかさを加えたステップに客席はくぎ付けだ。会場を真っ赤な照明で染めた「Aka」ではしっとりと聴かせ、瞬時に衣装チェンジ。激しいバンドサウンドが続き、早くもライヴハウスのような盛り上がりに。そして「今日はこの日のために初めて振袖を着ました!」とメッセージし、アルバム『時のシルエット』に収録されている名曲「冷たい嘘」、さらに「リップ」「向かいあわせ」とラブソング3曲を披露。

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「合図」では、歌詞をスクリーンに映し出し、唯一無二のaikoの歌詞の世界観へといざなう。「クラスメイト」では、花道の先のサブステージがせり上がりファンを驚かせ、定番の弾き語りコーナーでは、会場との会話のキャッチボールを楽しみつつ、ファンから投げかけられた8つのキーワードを基に見事に即興ソングを完成させ、会場を沸かせた。

「大阪でお正月を過ごすの10年ぶりぐらい」と語るaikoは、デビュー18年目で初のカウントダウンライヴを地元で開催できるということが感慨深いようで「昔、デビューしたくらいの頃に、年越しのラジオに出させていただいて。こうやってまた大阪で過ごせるのはすごい嬉しいし、みなさんと一緒に過ごせるのも本当に幸せで楽しくて仕方ないです。いろんな曲をお届けしたいなと思います」と押さえられない感謝と感激の言葉をファンに贈った。そして13年ぶりの披露となった「今度までには」を熱唱した。さらに約8年ぶりとなる「明日もいつも通りに」も披露。本人もファンも当時の思い出が蘇っていたのではないだろうか。間髪入れずにデビュー曲「あした」を歌い、aikoのヒストリーを地元・大阪で辿る歌の旅はどこかグッとくるものがあった。

「あたしの向こう」から一気に後半戦へとなだれ込み、「舌打ち」を歌い終わるといよいよカウントダウン。そして「あけましておめでとうございます!みなさん、本年も宜しくお願いします!新年明けたのでさらに楽しみましょう!」と2016年の幕開けはaikoらしいポップでせつないナンバー「beat」から。会場中に降り注ぐ大量の紙吹雪の演出も、新年の幕開けを更に盛り上げる。「年明けて早々なんですけど、次で最後の 曲っぽいんですよ」と会場から「え~」という声が上がるも「しっかりみんながお腹いっぱいになるまで用意してますんで!」と、アンコールを約束 して本編ラスト「キラキラ」を歌い上げる。ファンもみんな歌っている。

4時間半超えのスペシャルな一夜。満足度の高いライヴを常に演り続けるチームaikoの”凄み”

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アンコール一曲目は名曲「カブトムシ」をアカペラで披露。途中バンドの音が重なってくるが、この曲のイントロの素晴らしさに改めて感動。そして「ボーイフレンド」ではサビで大合唱が巻き起こり、「大阪でまたこの曲 を歌えるのがすごく嬉しいです」というコメント共に、映画『阪急電車 片道15分の奇跡』の主題歌「ホーム」を噛み締めながら、感慨深げに歌い、届けた。

これで終わりかと思いきや、「じゃあ第二部休憩に入りたいと思います!」とまだまだ続くことを約束。ライヴのエンディングをイメージして作られた名曲「さよなランド」からダブルアンコールがスタート「「さよなランド」からは何も決まってないんです。こっからは セットリストじゃないんです。アドレナリンが出ている感じ」とまさにスペシャル感満載の一夜になった。ライヴでは欠かせない盛り上げ曲「Power of Love」「ジェット」「be master of life」を立て続けに披露。会場の温度がファンの熱気で一気に上昇した。誰もがいよいよ終わりかと思っていると、aikoはバンドメンバーと改めて円陣を組み直し、大阪の親友を思い出す曲と「マント」を披露し、会場からの拍手に乗せられるように「もう一曲やる!?」と 「鏡」の大合唱が沸き起こるまで、なんと6曲もサービス。

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そしてエンドロールも流れ、夢の一夜もいよいよ終演、でも満足感しか残っていないという状況の中「みなさん、もう帰っちゃいましたか?どうしてももう一曲だけ歌いんたいんですけれども、みなさんよろしいでしょうか?」とaiko本人が場内アナウンスで喋り始め、とどめのトリプルアンコールがスタート。「milk」そして本人弾き語りによる「えりあし」と全33曲を2015年の終わり、そして2016年の始まりとなる大阪の夜に歌い切った。前代未聞の4 時間半を超える内容に、ファンは全員笑顔で会場を後にした。

aikoとチームaikoのライヴにかける情熱は”凄み“さえ感じさせてくれる。それは全てファンへの”愛”となって昇華していく。

aikoは新年早くも動き出した。新曲「もっと」が1月12日からスタートしたTBS系火曜ドラマ「ダメな私に恋してください」(主演:深田恭子)の主題歌に起用されている。

aikoは今年も止まらない。

『Love Like Pop vol.18〜CountDown Live あっという間の最終日〜』/12月31日大阪城ホール

<セットリスト>

01.プラマイ

02.夢見る隙間

03.Aka

04.猫

05.彼の落書き

06.冷たい嘘

07.リップ

08.向かいあわせ

09.合図

10.寒いね…

11.クラスメイト

12.4秒

13.今度までには

14.透明ドロップ

15.傷跡

16.明日もいつも通りに

17.あした

18.相合傘

19.あたしの向こう

20.舌打ち

21.beat

22.キラキラ

アンコール

23.カブトムシ

24.ボーイフレンド

25.ホーム

ダブルアンコール

26.さよなランド

27.Power of Love

28.ジェット

29.be master of life

30.マント

31.鏡

トリプルアンコール

32.milk

33.えりあし

aikoオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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