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『M-1 2023』ナイスアマチュア賞のギャル2人組、受賞背景にマッコイ斉藤とインフルエンサーの両親

田辺ユウキ芸能ライター
ギャルギャルのミトミリリさん(右)、しずくらげさん(左)/写真:筆者撮影

8540組――。これは2023年の『M-1グランプリ』のエントリー者数である。プロとアマチュアの割合がどれほどなのかは分からないが、ただ『M-1』というお笑いの祭典に乗っかって、あわよくば名前を売ろうというアマチュア勢がその数字を年々底上げしていることは間違いない。

Z世代ギャルのコンビ、ギャルギャルもそのなかの1組。当時16歳(現在17歳)のミトミリリさんと26歳のしずくらげさんで構成された同コンビは、10月5日開催の東京会場での予選1回戦に出場。「ギャルアイドルの日常」をテーマにネタを披露し、漫才未経験でありながら、予選MCの印象に残ったアマチュア1組に贈られるナイスアマチュア賞に選出された。

『M-1』挑戦を決めたものの、周囲からは非難の声「芸人をバカにしている」

ギャルギャルは当初、ミトミリリさん、そしてしずくらげさんとは別の10代女性によるコンビで2023年8月に結成された。アイドル活動を軸にする予定だったが、自分たちの存在を知ってもらうために『M-1』へのエントリーを発表。ところが1回戦の舞台を踏む前に、最初の相方である10代女性が脱退。そこで同コンビのプロデューサーが「もともと『M-1』に出たくて、そのことをTwitter(現X)にも書いていた」というしずくらげさんに声をかけ、新たな相方として迎えた。

アイドル活動もおこなっているしずくらげさんは「まわりから『アイドルをやりたいと言っていたのに、なんで漫才なの?』『芸人になりたいの?』といろいろ言われました。私は自分の名前を売りたいから『M-1』に挑戦するのに。楽しみもあったけど、何気ないそういう声に不安がふくらみました」と振り返る。

ミトミリリさんも「友人から『売名行為のために出るのは芸人さんをバカにしているとしか思えない』と言われました」と痛烈な言葉を浴びたそうだ。それでも「自分たちにとって絶対にプラスになるチャレンジだから頑張ろう」と本腰を入れた。

マッコイ斉藤の助言「自分たちがおもしろいと思うことをやらないと、おもしろくならない」

ミトミリリさんは「ジェラードンさん、チョコレートプラネットさんが好き」、しずくらげさんは「ぱーてぃーちゃんの信子さんのノリを意識して1回戦に出た」と話す/写真:筆者撮影
ミトミリリさんは「ジェラードンさん、チョコレートプラネットさんが好き」、しずくらげさんは「ぱーてぃーちゃんの信子さんのノリを意識して1回戦に出た」と話す/写真:筆者撮影

ミトミリリさんは一度、最初の相方との漫才を、テレビやYouTubeの演出家であるマッコイ斉藤さんの前で披露したことがある。

そのとき、マッコイ斉藤さんから「自分たちでいろいろ考えてやらないと、おもしろくならない。自分たちがおもしろいと思うことをやらないと、おもしろくならない」と指摘された。ミトミリリさんは、「らげちゃん(しずくらげ)とコンビを組み直してからも、マッコイさんのアドバイスをもとに二人で話し合い、ネタの細かい部分や動きを自分たちで詰めていきました」と語る。

しずくらげさんも「ネタは、平成ギャルだったプロデューサーさんが考えてくれました。でもそのままやるのではなく、自分たちが普段から使っている言葉を入れたり、会話の仕方も大げさに見せたりしました。ネタのなかにMIYASHITA PARKという場所の名前が出てきますが、元のネタ台本ではそこは渋谷だったんです。だけどリアルJKはMIYASHITA PARKでTikTokを撮っている。自分たちで令和ギャルのネタにアップデートしました」と二人でネタの解釈を深めていった。

予選当日。1回戦ながら独特の緊張感が漂う出演者の控え室でギャルらしさが発揮された。しずくらげさんは「私のノリがギャルすぎたんです。シーンとしている控え室に『おっはよーございまーす! ギャルギャルでーす!』と元気良く挨拶をして入って行って。そうしたらみなさんに『え、なにあれ』って感じで見られちゃった」と笑う。しかも舞台衣装を着て会場入りしていたため、余計に目立っていたそうで「うちらだけノリが違いました」と思い返す。

ただ目立ってはいたものの、漫才未経験の自分たちが予選を勝ち上がることは難しいと感じていた。エントリー時から、『M-1』のYouTubeの公式チャンネルでネタ動画が紹介されるナイスアマチュア賞だけを狙っていた。

ミトミリリさんは「ナイスアマチュア賞が目当てだったから、目立つノリで全然オッケーでした。うちらは楽しみたい感じだったし」と緊張とはほぼ無縁でステージへ上がり、見事に同賞をかっさらった。

ミトミリリさんの両親は人気インフルエンサー「やっと自分も何者かになれた」

プロの芸人であれば劇場公演などでお客の前でネタを見せ、『M-1』に向けて調整ができる。しかしアマチュアのギャルギャルはそれが難しい。しかもミトミリリさんは東京在住、しずくらげさんは大阪在住。住んでいる場所が離れているので、直接会ってネタ合わせをしたのも数えるほど。そのため会った際は、ミトミリリさんの両親らに漫才を見てもらってネタ調整をおこなった。

しずくらげさんは「リリちゃんのご両親がやっているお店に何人か来てもらって漫才をやったんです。そこで『ここで笑ってもらえるのか』と気づくことがありました。あれがなければナイスアマチュア賞は獲れていなかったはず」と大きな経験を得た。

ちなみにミトミリリさんの両親はともにアパレルショップを経営。母親の関根メグミさんはYouTubeチャンネル「めぐさんTV」も運営し、登録者数は約1万4千人。父親のハズムさんもYouTubeチャンネルは登録者数が約13万人、Instagramはフォロワー数が約3万8千人。ともにファッション系のインフルエンサーとして人気だ。ミトミリリさんは「インフルエンサーである親に対して、自分は『何者でもない』という感情がありました。でもナイスアマチュア賞を獲って、やっと何者かになれた気がしました」と自信がついたようだ。

それでもミトミリリさんは、「2024年も『M-1』にチャレンジするか?」という質問に対しては口ごもった。

「受験があるんです。東京の芸大へ行きたくて。あと今回の『M-1』でやり切った感もあります。だから『M-1』にまた出るかは悩んでいます」

『R-1』出場も視野?「バラエティの舞台に立ってみたい」

一方のしずくらげさんは、お笑いへの意欲がさらに湧いたと明かす。

「ギャルギャルとしては、アイドル活動を中心にやっていきたい。でも最近はバラエティ番組もよく観るようになり、私個人としては『バラエティの舞台にも立ってみたい』と思うようになりました。『R-1グランプリ』への出演も迷っています。だけどリリちゃんがいないとやっぱり不安。漫才の練習も楽しかったし。だからコンビとしてまた『M-1』に出てみたいです」

ギャルマインド全開で『M-1』へ出場し、ナイスアマチュア賞を手にしたギャルギャル。ただ住んでいる場所も、進もうとしている道もバラバラ。これからどのような活動をおこなっていくのか。2024年の『M-1』の1回戦にギャルギャルの名前がエントリーされているかどうか、注目したい。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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