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二宮和也が旧ジャニーズ事務所からの独立発表で口にしたショッキングな言葉「怖くなった」の正体とはなにか

田辺ユウキ芸能ライター
旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)(写真:アフロ)

嵐の二宮和也が10月24日、ファンクラブ向けサイトを通し、旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)から独立して個人で活動することをコメント動画で発表した。

二宮和也は、9月7日に開かれた旧ジャニーズ事務所の会見以降、自身の活動に大きな影響が起き始めたことが一つの要因だと語った。続けて「正直な話、僕も怖くなった」と口にした。

現役タレントが「怖い」という言葉を使って独立を報告したのは、とてもショッキングな出来事である。「不安な気持ちにもすごくなり、これからどうしていこうかなと考え始めました」という発言からも、この約1か月、苦悩の日々を送っていたことがうかがえた。

特に二宮和也は俳優として日本のトップレベルである。映画『硫黄島からの手紙』(2006年)ではクリント・イーストウッド監督、映画『母と暮せば』(2015年)では山田洋次監督など、その演技力の高さで名匠たちから信頼を勝ち取ってきた。2023年もドラマ『VIVANT』(TBS系)で秘密組織のナンバー2として厳格な姿勢を示しつつ、育ての親(役所広司)と深い愛情で結ばれる青年・ノコル役を好演し、大ヒットに貢献した。

筆者も過去に二宮和也を取材したことがある。現状に甘えず、とにかくハングリーで、なにより自分に対して一切妥協を許さない姿勢を感じた。だからこそ、良い意味で自信もみなぎっている印象があった。これは決してヨイショするわけではなく、その考え方は尊敬に値すると思えた。そんな人が今回「怖い」「不安」と話したのは驚きで、よほどの心境だったと考えられる。

旧ジャニーズ事務所の「これまで」と「これから」への不信感からくる「怖さ」

前述したように、「怖い」という言葉はとてもショッキングだった。それにしても二宮和也はなにに対して「怖さ」があったのか。

一つは旧ジャニーズ事務所への「怖さ」だろう。10月17日にジャニーズ事務所の社名がSMILE-UP.へと変更になった。そこでエージェント契約かマネジメント契約にするかの選択があったという。二宮和也は「頭で理解していても、個人的に引っかかってしまう部分がありました」「そんな状況の中で、自分の将来については自分自身で決めなくてはいけないし、でも、仕事は走っていっているしという中で、いったん落ち着いて物事を俯瞰で見て考えていたときに、『ちゃんとしよう』『ちゃんとしていこう』というふうに気持ちが生まれてきて、それからこのような決断になっていってます」とし、独立という形を選んだ。

二宮和也ほどのクラスになると、東山紀之新社長、井ノ原快彦新副社長ら上層部とも納得がいくまで話し合いがなされるはず。ただ「引っかかり」という言葉を見ると、やはりジャニー喜多川氏による性加害の罪とその対応、新体制となった事務所の方向性ややり方などへの不信感、疑問が拭えなかったのだろう。

そしてなにより旧ジャニーズ事務所がおこなった2度の「大荒れ記者会見」である。10月2日の2度目の記者会見では、出席した記者の一部を対象とした「指名NGリスト」の存在も明らかになった。旧ジャニーズ事務所は一貫して関与を否定しているが、真相には霧がかかったまま。なにより今回関与している、していないにかかわらず、これまで事務所はそういった「ジャニーズ忖度」を各所に強いる流れを作ってきたから、こういった混乱が起きたのだ。二宮和也がそういったことに「怖さ」を抱くのは当然である。浮き彫りになるさまざまな物事に対して二宮和也の私感が働き、独立の決断へと至らせたとコメントなどから読み取れる。

マスコミの「手のひら返し」に対する「怖さ」

写真:ロイター/アフロ

もう一つの「怖さ」は、マスコミのいわゆる「手のひら返し」だ。

旧ジャニーズ事務所とテレビ局など多くのマスコミはベッタリの関係だったり、旧ジャニーズ事務所にものが言えない関係性だったりしたことが明らかになっている。マスコミは自社コンテンツなどでこれまでの旧ジャニーズ事務所との接し方について自問自答し、誤りを認め、改善策を提案するなどしている。

もちろん自戒は重要なことである。そのためこれを「手のひら返し」と表現するのは正確ではない。それでも「大荒れの記者会見」などでの一部のマスコミの追及の仕方(その是非は別として)や、その後の報道内容からは、「手のひら返し」と皮肉を言われてもおかしくない箇所は多々ある。たとえばマスコミの糾弾の仕方も、「やり返してこないと分かった相手は徹底的に叩きつける」というように見えたりもする(それはこれまでの芸能人の不倫会見などでの芸能リポーターの対応を見ているとよく分かる)。

「所属タレントはこれまで通り活動できるように」というのは、旧ジャニーズ事務所もマスコミも同意見なはず。ただ一連の「手のひら返し」を見ると、所属タレントとしては「いつかその矛先が自分にも向くのではないか」「これまでと違った対応をマスコミなどにされるのではないか」など強烈な不安に駆られることだろう。あと「旧ジャニーズ問題がちゃんと解決されるまで、所属タレントはテレビ番組などに起用しない方が良いのでは」との考えもあることから、それらがまとまって「怖さ」につながっていると推察できる。

「怖さ」の番外編、「ジャにのちゃんねる」で話していたもっとも大事なこと

二宮和也は自身が携わっているYouTubeチャンネル「ジャにのちゃんねる」の10月4日配信回(収録は10月3日)『【ご報告!!】現状がわかんなすぎて皆で話し合った日』では、社名変更に足並みをそろえてチャンネル名の変更について話し合うなどしていた。

そこで「ジャにのちゃんねる」の壁画について、作者である中丸雄一(KAT-TUN)が「そっちの描いたやつどうなります」と尋ねた。二宮和也は「全消しです」、出演者・山田涼介(Hey!Say!JUMP)は「あれにみんなで白ペンキを塗る動画を」と答えた。そのときの二宮和也の違うところに顔を向けているところや、悲しみを押し殺してみんなで動画としてエンタテインメント的な会話を成立させようとしている模様が、いろんなことを物語っていたように感じられた。

ただ混乱状況にあるなかで、二宮和也は「みんなに誕生日プレゼントを渡せていなかった」として、メンバーたちに動画内でプレゼントを渡していた。ひとときではあるが、動画内の緊張がやわらぐ瞬間でもあった。

そして、この光景が実は「もっとも大事なこと」である。同配信回を観ると、二宮和也が口にした「怖さ」の番外編には、壁画を消さなければならないなどの現実、そして仲間と一緒に過ごす時間が少しずつ失われていくかもしれないことを指しているようにも思えたのだ。

同配信回を観た上で今回の独立発表を聞くと、二宮和也が自分にとって今もっとも大切なものはなんなのかを熟考した結果であることが分かる。そして、その大切なものの「中身」にも気付かされる(もちろん、旧ジャニーズ事務所を離れても嵐がもっとも大事なものの一つであることも変わりないはず)。

いろんな「怖さ」を抱えながらも、コメント動画内では、二宮和也は嵐での活動続行について言及したり、できるだけ努めてにこやかにカメラの前に立ったりしていた。すべてファンや仲間を思ってのことだ。「怖い」というショッキングな言葉を発しながらも、その上で自身の「これから」について語った二宮和也の活動を応援したい。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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