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昼の新バラエティ『ぽかぽか』初回放送の確信犯的な構成、後半は奇をてらいすぎて「別番組化」

田辺ユウキ芸能ライター
(写真:イメージマート)

1月9日から放送がスタートした昼のバラエティ番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)。お笑いコンビ、ハライチの岩井勇気と澤部佑がMCに抜てきされ、またフジテレビ系の『笑っていいとも!』『バイキング』を手がけた制作陣がそろっていることで注目をあつめている同番組。前番組『ポップUP!』が不振に終わったこともあり、『ぽかぽか』は同局として意地の見せどころでもある。

初回放送は、そんな気合いが噛みあったところと空回りした部分がともに感じられた3時間だった。

澤部佑「岩井さんが『IPPONグランプリ』みたいな顔をしています」

『ぽかぽか』の狙いとしては、『笑っていいとも!』はもちろんのこと、朝の番組でありながら時事ネタを扱わずにバラエティ路線を突き進むことで革新的に飛躍する『ラヴィット!』(TBS系)のイメージなどもあったはず。初回放送からは、SNSなどでトレンドになりそうな仕掛けを盛りこみながら、昼番組として王道ではなく独自路線で攻めようという意識が感じられた。

特に前半、北川景子、山田裕貴をゲストに迎え、ふたりのイメージを勝手に想像して答えていくコーナーでは、岩井勇気、そしてもうひとりのMCである神田愛花による大喜利状態に。澤部佑が「岩井さんが『IPPONグランプリ』みたいな顔をしていますけど」「(『IPPONグランプリ』のように)低い声でお題を言わないですから」とツッコミをいれると、岩井勇気も「俺、一個書いて『あ、流れじゃないな』と思ったら書き直しているから」と明かしたほど。

山田裕貴がお題に沿って「一目惚れ」について話をしているときも、岩井勇気、神田愛花のペンを書く手が止まらず、澤部佑が「執筆活動に勤しまないで!」と呆れる場面も。ふたりに用意されたフリップの枚数からも、番組側がこのコーナーを大喜利状態へ持っていこうとする意図がはっきりうかがえた。

確信犯的な構成、視聴者に「ツッコミシロ」を与えながら進行

また2キロの肉の塊を出してきて、北川景子に誤差10センチ以内で300グラムに切り分けてもらうチャレンジのときにもハプニング発生。肉を切り分けていざ計ろうとしたとき、計量器の電源が入っていないミスが起きたのだ。しかも結果は、挑戦失敗。手本を見せるためにプロの料理人が登場して切り分けに挑むものの、こちらも280グラムでまさかの失敗。グダグダの展開を前に、岩井勇気も「これは良くないよ」と苦笑いを浮かべた。ただこのグダグダ感もある程度、狙ってのものではないか。

ほかにも、岩井勇気がひたすら猫を可愛がるだけの謎コーナーで肉球を嗅ぎまくったり、成人の日にちなんでラッパーが母親に向けて感謝のラップを披露するも歌と歌詞テロップが全然違ったり、北川景子がコメントしているところで、番組のマスコットキャラクターが「春日のスピード」(澤部佑談)でカメラを横切ったり。いろいろと「事件性」があった。

この日のハイライトとなったのは、FNS系のローカル番組に関するコーナー「日本中に知って欲しい!FNSおすすめジモTV」で、『どぶろっくの一物』(サガテレビ)について紹介されたとき。ゲスト出演したサガテレビのアナウンサーは「『どぶろっくの一物』はサガテレビが誇る生バラエティ番組」とコメントした。ただそのあと、フジテレビ1年目アナウンサーの岸本理沙が「ここでひとつ訂正があります。先ほど『どぶろっくの一物』を生放送バラエティとお伝えしましたが、正しくは収録のバラエティです」と神妙な表情で訂正を入れて爆笑させ、ハライチも「“一物”が“生”とか、1年目に言わせないで!」と困惑。番組側の臨機応変な演出が光った瞬間だった。

視聴者にも「ツッコミシロ」を与えながら番組を進行させたところは、SNSでの広がりを期待してのものだろう。そういった点でかなり確信犯的な笑いを散りばめていたと言える。

VTRコーナーで番組膠着、『どぶろっくの一物』ほぼ丸々放送で別番組に

ただ、勢い良く駆け抜けた前半にくらべて、中盤以降は一気にトーンダウン。村重杏奈による「肉食さんぽ」、野呂佳代と菊地亜美の「昼のみ主婦トーク」、ローカル番組紹介「日本中に知って欲しい!FNSおすすめジモTV」というVTRコーナーが続いて番組が膠着した。「昼のみ主婦トーク」について野呂佳代と菊地亜美が「昼の『グータンヌーボ』」とたとえていたが、皮肉にもその言葉通り『ぽかぽか』が別番組化していった。

特に終盤は『どぶろっくの一物』の初回放送をほぼ丸々放送しただけ。「『ぽかぽか』を観ているのに、『ぽかぽか』ではない番組を延々と観せられる」という、もはやなんの時間なのか分からない状態に。オンエア中、ワイプからハライチらの感想の声も視聴者にはっきり届かなかったことで、「異様さ」に拍車がかかった。

番組としては「別番組をほぼ丸々流す」というところに実験的なおもしろさを見出したのかもしれない。しかし、ハライチらの掛け合いを楽しみにしていた視聴者は肩透かし。奇をてらいすぎた感がいなめなかった。あと『どぶろっくの一物』の実際のCMタイミングに合わせてCMをはさみこんだことで、番組としてのリズムがさらに欠けた。SNSでも「初回放送なのになぜどぶろっく?」と感想があり、『どぶろっくの一物』も巻きこみ事故を食らったようになった。

番組の最後「4月から2時間になります」と、初回から放送時間短縮を宣言する異例の事態で「事件性」が再度ぼっ発。「Twitterでも『長い』という声があった」と感想をリアルタイムでチェックして、「時間短縮」の言い訳にしたところは、初回放送ながら「同番組らしさ」があったのではないか。

これからおもしろくなるかどうかは、やはりハライチの生かし方にかかっているだろう。初回放送でも、岩井勇気の毒、澤部佑の現実性をまじえたツッコミはすばらしかった。ただ今回の番組後半のように「見守るだけ」が続くと、持ち味が生かされないのではないだろうか。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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