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『あたらしいテレビ2022』でインフルエンサーたちが問いかけた「今のテレビ番組はおもしろいのか?」

田辺ユウキ芸能ライター
(写真:beauty_box/イメージマート)

さまざまな世代の出演者がテレビ番組について語る、年始恒例の番組『あたらしいテレビ2022』(NHK総合)が1月1日に放送された。

今回は、かまいたちをMCに迎え、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)などの演出を手掛ける藤井健太郎、さらば青春の光の森田哲矢、テレビプロデューサーの佐久間宣行、BiSHのセントチヒロ・チッチ、俳優の菅田将暉らが出演。ゲストたちが複数の部屋に分かれ、「今のテレビ番組は果たしておもしろいのか?」の話題を中心に、YouTube、SNS、配信プラットフォームなど多様化する映像コンテンツについて語った。

チャレンジングな企画続々『水曜日のダウンタウン』

まず、2021年で印象深かったテレビ番組をいくつか振り返りたい。『水曜日のダウンタウン』の10月6日放送回は、不仲で知られるお笑いコンビのおぼん・こぼんが仲直りする奇跡の結末が話題に。10月20日放送回では、タレント・あのが『ラヴィット!』(TBS系)に仕掛け人でゲスト出演し、別室に控える芸人たちの遠隔指示を受けて珍解答を連発するドッキリがおこなわれた。『水曜日のダウンタウン』はチャレンジングな企画を次々と発表し、毎週のようにSNSのトレンド入りを果たした。

1月6日放送『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京系)は、パンクバンド・オナニーマシーンのイノマーの生き様と最期の瞬間をとらえて衝撃を与えた。

松たか子主演のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ)はストーリーはもちろんのこと、週替わりのエンディングも見逃せなかった。『あたらしいテレビ』のなかでも、『大豆田とわ子と三人の元夫』がいかにおもしろかったかが語られ、さらに同ドラマが放送された4月クールは『今ここにある危機とぼくの好感度について』(NHK)や『コントが始まる』(日本テレビ系)といった連続ドラマが充実していた話でも盛り上がった。

また藤井と森田は「行き着く先として、ダウンタウンはやっぱりすごい」とあらためてその影響力の大きさを口にし、6月12日放送『キングオブコントの会』(TBS系)では松本人志の笑いが健在だったことなどを挙げた。

「テレビの番組表は文字ばかりで見づらい」

一方、『あたらしいテレビ』に出演した10代インフルエンサーたちのほとんどは「地上波のテレビは観ない」とした。その理由は「シンプルにつまらない」「新しいものは観る気にならない」と内容面に関するものから、「放送時間に合わせるのが難しい」「番組を途中から観ることができない」「(テレビを観るために)部屋から出るのが面倒」と視聴環境にまで話が及んだ。

ただ「(YouTubeやTikTokで)テレビの切り抜きは観る」「TVerを観ている」との声もあった。結局は時間とデバイスの問題なのではないか。実際、若者たちはスマホ視聴に最適な映像コンテンツを優先して観ているという。10代インフルエンサーのほとんどは「テレビを観る時間は0分」としていたが、それは「テレビ画面で、リアルタイムで観ているかどうか」の話であり、見逃し配信などを含めると数字以上に「テレビ番組」には何らかの形で触れているように思える。

特に今回番組に出演した10代は経営者、クリエイター、タレントの忙しい立場。映像コンテンツを観る時間はそもそも少ないはず。別の過ごし方をする10代であれば、登場したインフルエンサーほどの偏った意見はないかもしれない。

ちなみに、若者たちのそういう声に耳を傾けているテレビ制作者も少なくない。『田村淳のコンテンツHolic』(MBS)などは、見逃し配信や外出先でのスマホ視聴を大いに意識した番組内容だった。

10代インフルエンサーたちによる、「テレビの番組表は文字ばかりで見づらい」という意見も興味深かった。

YouTube番組であればサムネイルがあって、目立つ画像と文字で動画内容が分かりやすく明記されている。Netflixなど配信プラットフォームも場面写真が掲載されており、パッと見で興味を引かせようとしている。びっしりと文字で埋め尽くされているテレビ番組表はその点でかなり前時代的と言える。

テレビ画面で、リアルタイムで番組を観るという部分では、この「番組表が見づらい」という話は今回もっとも建設的な議論だったのではないだろうか。

10代が好んだ「朝倉未来のストリートファイト企画」

10代インフルエンサーが好んで鑑賞している番組として挙げたのが、『チーターズ〜浮気調査団〜』(ABEMA)や『朝倉未来にストリートファイトで勝ったら1000万円』(ABEMA)など。どちらもリアル、もしくはリアルに近いジャンルだ。若者たちは日頃からYouTube番組のドキュメンタリー性の濃さに慣れているだけに、フィクションよりリアルな番組の方を好むのも理解できる(もちろんリアル系のYouTube番組も大なり小なりの演出はある)。

10代インフルエンサーと好みの感覚が近かったのが、藤井健太郎だ。彼は2021年でもっともおもしろかったコンテンツとして、一般撮影者によるYouTube映像「群馬伊勢崎の乱闘映像」を挙げた。藤井は「この映像の前には何も勝てない」と話した。

朝倉未来の1000万円企画や群馬伊勢崎の乱闘映像のような過激な中身は、炎上する可能性もはらんでいる。だが、現在の地上波のテレビではなかなか観ることができない「生身の刺激」が求められているあらわれではないだろうか。

YouTube番組『街録ch〜あなたの人生、教えて下さい〜』や『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(中京テレビ)を例にした、佐久間宣行の「ただ働いてきた人の話がこんなにおもしろいなんて」との意見や、クリエイティブディレクター・澤本嘉光の「普通の人がおもしろい」という話も、リアルさが醸し出す映像の魅力に通じるだろう。

テレビのおもしろさについて議論すると、必ず世代間の考え方の違いがクローズアップされる。しかし番組内容面だけではなく、デバイス、視聴環境などいろんなケースを踏まえていかなくてはならない。テレビ好きとしては、その上でさらに多様でおもしろい番組が生まれることを期待したい。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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