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どこを探しても見つからない「親の遺言書」を探し出す奥の手~「自筆証書遺言」編

竹内豊行政書士
遺言書保管制度を活用すれば「亡親の遺言書」が見つかるかもしれません。(写真:sazanka/イメージマート)

亡くなった親が遺言書を残したのか残していないかが判明しない状態では、遺産の引継ぎに支障を来す場合があります。

そこで、亡くなった親の公正証書遺言の見つけ方については、どこを探しても見つからない「親の遺言書」を探し出す奥の手~「公正証書遺言」編で解説したので、今回は自分で書いて残す自筆証書遺言の探し方についてご説明します。

今までは自力で探し出すしかなかった

亡くなった親の自筆証書遺言を探すには、従来は探し出すしかありませんでした。その結果、見つからなかったら、遺言書を残したのかは謎のままで終わってしまいました。

自筆証書遺言の保管制度がスタートした

2018(平成30)年7月6日、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(遺言書保管法)が成立し、2020年(令和2年)7月10日に施行されました。

これにより、従来は自筆証書遺言を作成し終わった後の保管については、自己責任であったのが、遺言書保管所(法務大臣の指定する法務局)に預けることができるようになりました。

親の遺言書の見つけ方

親が死亡後、相続人は遺言書保管所に対して、「遺言書保管事実証明書」の交付の請求をして、遺言書保管所に親の遺言が保管されているか否かの確認をすることができます。なお、この請求は全国のどの遺言書保管所に対しても行うことができ、手数料は1通につき800円です。

「遺言書保管事実証明書」の内容

請求の結果、遺言書が保管されている場合は、「上記の遺言者(=亡くなった親)の遺言書が遺言書保管所に保管され、遺言書保管ファイルに記録されていることを証明する。」という内容の認証文が発行されます。反対に、保管されていない場合は、「上記の遺言者(=亡くなった親)の遺言書が遺言書保管所に保管されていないことを証明する。」という内容の認証文が発行されます。

遺言書が保管されていた場合

そして、遺言書が保管されている場合には、遺言書保管情報証明書の交付の請求や遺言書の閲覧を行い、遺言書の内容を確認することができます。

2020年7月10日以降が対象

このように、親が自筆証書遺言を遺言書保管所に保管していたか否かを遺言書保管所に対して遺言書保管事実証明書を請求することで確認することができます。その結果、保管していたら、遺言書保管情報証明書の交付請求または遺言書の閲覧請求をすることでその内容を確認することができます。

ただし、前述のように遺言書保管法の施行は2020年7月10日です。したがって、その日以前に自筆証書遺言を残していたか否かはこの制度ではわかりません。

なお、遺言書保管事実証明書の請求は、遺言者が死亡している場合に限られます。したがって、親が遺言書を保管していても生存中は確認することはできません。

遺言書を保管してみた

今回ご紹介した自筆証書遺言の保管制度は、自筆証書遺言の弱点であった、遺言書の紛失や毀損などを補うものです。実は、私自身もこの制度を利用して自筆証書遺言を保管しています。私自身が自筆証書遺言の保管制度を利用した模様は、潜入ルポ「遺言書保管法」~7月10日午前9時 日本一早く、法務局に「遺言書」の保管を申請してきたに書いています。ご興味がある方はぜひお読みください。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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