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11月5日、住民票等に「旧姓」が併記できる新制度スタート!~女性の社会進出の後押しに期待

竹内豊行政書士
住民票等に「旧姓」が併記できる制度がスタート。女性の社会進出の後押しに期待です。(写真:アフロ)

住民票、マイナンバーカード等へ旧姓(その人の過去の戸籍上の氏のこと。法的には「旧氏」(きゅううじ)といいます)を併記できるようにするための「住民基本台帳法施行令等の一部を改正する政令」(平成31年4月17日公布)が、令和元年11月5日に施行されました。

この政令改正は、社会において旧姓を使用しながら活動する女性が増加している中、様々な活動の場面で旧姓を使用しやすくなるよう、との累次の閣議決定等を踏まえて行われたものです。

姓が変わる場面

現行制度では、姓は家族関係の変化に伴って、本人の意思に関係なく当然に変わる場合があります。具体的には次のような場面があります。

1.結婚により、夫または妻のどちらか一方が姓を改める(民法750条)

このことを、「夫婦同氏の原則」といいます。

2.養子縁組により、養子は養親の姓に改める(民法810条)

このことを、「養親子同氏の原則」といいます。

3.離婚・婚姻の取消、離縁・縁組の取消により復氏する(民法767条1項、749条、808条1項、816条1項)

姓が変わると、旧姓と姓を変えた後の人が、同一人物であることを証明することが困難になってしまいます。そのため、契約や職場などで不都合なことが起きてしまうことがあるのです。

旧姓が記載される主なもの

実際にこの新制度を利用して旧姓が記載される主なものとして、次のようなものがあります。なお、この制度の利用について詳しくは、住民票等に「旧姓」が併記できる新制度スタート!~制度を活用するための知識と手続の方法をご参照ください。

住民票の写し

マイナンバーカード・通知カード

署名用電子証明書

印鑑登録証明書

住民票の写し、マイナンバーカード等に記載できる旧姓(旧氏)について

旧姓を初めて併記する場合には、戸籍謄本等に記載されている過去の氏から1つを選んで併記することができます。

旧姓(旧氏)併記の申請について

実際に、この制度を申請する方法をご紹介します。なお、申請する場合に用意する書類は個々の状況によって異なる場合があります。そのため、申請する役所に事前に問い合わせることをお勧めします。

旧姓(旧氏)併記の申請場所

旧姓併記の申請は住所地の市区町村役場でします。

申請に必要なもの

・申請者の本人確認書類(運転免許証、保険証等)

・通知カード・マイナンバーカード

・申請者の戸籍謄抄本(本籍地に請求します) 等

申請に必要な戸籍謄本等について

1.現在の姓の一つ前の氏を併記する場合

現在の氏が載っている最新の戸籍謄本等が必要です。

2.それ以外の場合

併記したい旧姓が記載されている戸籍謄本等から現在の氏が記載されている戸籍に至るすべての戸籍謄本等が必要です。

住民票、マイナンバーカード等への旧氏の併記によって期待されること

このように、この新制度によって、婚姻等で姓に変更があった場合でも、従来称してきた氏をマイナンバーカード等に併記し、公証することができるようになります。

そのことで、旧姓と現在の姓が簡明に紐付けできるので、旧氏を契約など様々な場面で活用することや、就職や職場等での身分証明に資することができると期待されます。

制度としては創設しても、受け入れる社会が旧氏の併記を理解し認めることがこの制度の普及のポイントになると考えます。

婚姻等で姓が変わっても、その人自身であることは変わりません。旧姓の使用を「普通のこと」と受け入れることがより生きやすい社会の実現につながっていくのではないでしょうか。

※姓(氏)を歴史的変遷の観点から解説した「結婚式で『佐藤家・田中家』と『家』で呼ぶのはなぜか~『氏』の制度の変遷」も合わせてお読みください。

以上参考:総務省「住民票、マイナンバーカード等への旧氏の併記について」

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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