住民票等に「旧姓」が併記できる新制度スタート!~制度を活用するための知識と手続の方法

住民票等に「旧姓」が併記できる新制度を活用する知識と手続方法をご紹介します。(写真:アフロ)

住民票、マイナンバーカード等へ旧姓(その人の過去の戸籍上の氏のこと。法的には「旧氏」(きゅううじ)といいます)を併記できるようにするための「住民基本台帳法施行令等の一部を改正する政令」(平成31年4月17日公布)が、今月11月5日に施行されました。

この政令改正は、社会において旧姓を使用しながら活動する女性が増加している中、様々な活動の場面で旧姓を使用しやすくなるよう、との累次の閣議決定等を踏まえて行われたものです。

このように、この新制度によって、婚姻等で姓に変更があった場合でも、従来称してきた姓をマイナンバーカード等に併記し、公証することができるようになります。

そのことで、旧姓と現在の姓が簡明に紐付けできるので、旧氏を契約など様々な場面で活用することや、就職や職場等での身分証明に資することができると期待されます。また、旧姓と現在の姓に違和感や喪失感を覚える方にとっても朗報といえます。

さて、11月5日にこの制度についてご紹介したところ、大勢の方にご覧いただきました。おそらく、婚姻によって氏を改めたことで生活や仕事、契約など様々な手続で不便を強いられている方(ほとんどが女性)が高い関心を寄せられた結果と考えられます。そこで、今回は、さらに詳しく、この制度と実際の手続についてご紹介したいと思います。

※法律では、「姓」のことを「氏」と称します。そこで、以下は「姓」を「氏」と記載します。

氏が変わる場面

現行制度では、氏は家族関係の変化に伴って、本人の意思に関係なく当然に変わる場合があります。具体的には次のような場面があります。

1.結婚により、夫または妻のどちらか一方が氏を改める(民法750条)

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称します。このことを、「夫婦同氏の原則」といいます。法律の上では、「夫・妻どちらの氏でもよい」という平等の形をとっていますが、現実には、約96%近くが夫の氏を選択しています

750条(夫婦の氏)

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

氏は、単に個人の呼称というだけではなく、氏は名と結合することによって社会的に自己を認識させるものであり、自己の人格と切り離して考えることはできないといった側面も備えています。しかし、現行法では、このように夫婦の氏を定めなければ婚姻届が受理されません。そのため、選択的夫婦別姓制度の検討の議論が高まっています。

2.養子縁組により、養子は養親の氏に改める(民法810条)

このことを、「養親子同氏の原則」といいます。しかし、縁組継続中、常に養親の氏を称しなければならないという拘束はありません。たとえば、養子が婚姻によって相手方配偶者の氏を称するような場合があります。

810条(養子の氏)

養子は、養親の氏を称する。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。

3.離婚・婚姻の取消、離縁・縁組の取消により復氏する(民法767条1項、816条1項等)

復氏」とは、前の氏に戻ることをいいます。

767条(離婚による復氏等)

婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。

2前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。

816条(離縁による復氏等)

養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。

以上のような家族関係の変化によって氏が変わると、旧氏と氏を変えた後の人が、同一人物であることを証明することが困難になるケースが発生します。そのため、契約をするときや職場などで不都合なことが起きてしまい、「旧氏と現在の氏の私は同一人物である」ということを証明するために面倒な手続を強いられてしまうことがあるのです。

「旧氏」が記載される主なもの

実際にこの新制度を利用して旧姓が記載される主なものとして、次のようなものがあります。

住民票の写し

住民票は各市町村で作成される、住民の氏名や住所等を記録した帳票で、住民の居住関係を公証するものです。「住民票の写し」というと、コピー機で複写したものをイメージしますが、そうではありません。住民票の写しとは、「電算化された『住民基本台帳』から直接印字されたもの」をいいます。

ちなみに、2012年7月に外国人登録法が廃止され、外国人住民にも住民票が作成されるようになりました(それまでは、住民票の写しに相当するものとして、「外国人登録原票記載事項証明」が作成されていました)。加えて、日本人と外国人とで構成される世帯の全員が記載された住民票の写しが交付可能になっています。

マイナンバーカード・通知カード

マイナンバーカード(個人番号カード)は、マイナンバーそのものと違い様々な用途での活用が可能です。 カードのICチップには電子証明書などの機能を搭載しており、これらの機能は民間事業者も含め様々な用途に活用することができます。 電子証明書などの利用の際にはマイナンバー自体は利用することも提供することもありません。

なお、マイナンバーとは、日本に住民票を有するすべての方(外国人の方も含まれます。)が持つ12桁の番号です。マイナンバーは、「社会保障」「税」「災害対策」の3分野で、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されます。

マイナンバーは、社会保障、税、災害対策の法令で定められた手続のために、国や地方公共団体、勤務先、金融機関、年金・医療保険者などに提供するものです。 マイナンバーの提供を受けた者は、こうした法令で定められた目的以外にマイナンバーを利用することはできません。

(参考:内閣府ホームページ

一方、通知カードは、紙製のカードで、住民にマイナンバー(個人番号)を知らせするものです。券面には住まいの市区町村の住民票に登録されている「氏名」「住所」「生年月日」「性別」と「マイナンバー(個人番号)」等が記載されています。ただし、顔写真は記載されておらず、通知カードを使用してマイナンバーの確認と本人確認を同時に行うためには、別に運転免許証や旅券等の本人確認書類が必要となります。このように、通知カードは、マイナンバーの確認のためのみに利用することができる書類です。

(引用:地方公共団体情報システム機構ホームページ)

署名用電子証明書

インターネット等で電子文書を作成・送信する際に利用します(例 e-Tax等の電子申請)。「作成・送信した電子文書が、利用者が作成した真性なものであり、利用者が送信したものであること」を証明することができます。(詳しくは、総務省ホームページをご覧ください)

印鑑登録証明書

印鑑登録証明書は、その印鑑が登録されたものであることを公証するものです。登録された印鑑と印鑑登録証明書があれば、間違いなく本人の意思表示であるとされ、不動産登記や契約証書作成などの重要な手続に使われています。印鑑証明関係の事務は国の法律がないため、市町村が独自の条例で定めていますので、登録や証明の方式が市町村で異なります。

住民票の写し、マイナンバーカード等に記載できる旧姓(旧氏)について

旧姓を初めて併記する場合には、戸籍謄本等に記載されている過去の氏から1つを選んで併記することができます。

旧姓(旧氏)併記の申請について

実際に、この制度を申請する方法は次のとおりです。なお、申請する場合に用意する書類は個々の状況によって異なる場合があります。そのため、申請する役所に事前に問い合わせることをお勧めします。

旧姓(旧氏)併記の申請場所

旧姓併記の申請は住所地の市区町村役場で行います。

申請に必要なもの

一般的には、次の書類が必要になります。

・申請者の本人確認書類(運転免許証、保険証等)

・通知カード・マイナンバーカード

・申請者の戸籍謄抄本(本籍地に請求します) 等

申請に必要な戸籍謄本等について

現在の氏の一つ前の氏を併記する場合とそれ以外の場合で用意する戸籍謄本等が違います。

1.現在の氏の一つ前の氏を併記する場合

現在の氏が載っている最新の戸籍謄本等が必要です。現在の氏が載っている最新の戸籍謄本等には、一つ前の氏が記載されているからです。

2.それ以外の場合

併記したい旧氏(その人の過去の戸籍上の氏のことです。氏はその人に係る戸籍、または除かれた戸籍に記載がされています)が記載されている戸籍謄本等から現在の氏が記載されている戸籍に至るすべての戸籍謄本等が必要です。

効率よく申請を行うためのポイント

次の手順の沿って行うと比較的、効率よく手続を進めることができます。

ステップ1.申請窓口に問合せをする

住所地の市区町村役場に、現在の氏と併記したい旧氏の関係を伝えて、必要書類の指示を受けます。

ステップ2.旧氏が記載された戸籍謄本等を用意する

戸籍謄本は「本籍地」に請求します。住民票の写しのように、住所地の市区町村役場とは必ずしも同一とは限りませんのでご注意ください。また、戸籍謄本は郵送でも請求できます。なお、郵送請求する際は、請求する前に、本籍地の市区町村役場のホームページで必要書類を確認しましょう。書類に不備がなければ、通常、発送から手元に届くまで1週間前後です。また、手数料は、定額小為替を同封します。定額小為替は郵便局で購入できます。

ステップ3.住所地の市区町村役場に出向いて必要書類を提出して申請を行う

ステップ1で事前に必要書類を確認していれば、スムーズに手続は完了するでしょう。

このように、ステップ1で、「併記したい氏」と「現在の氏」との関係を正確に伝えて、申請窓口から提出書類を具体的に聞き出すことがポイントです

住民票等に「旧姓」が併記できる新制度をする場合は、以上をご参考にしてみてください。そして、この制度を活用して、より快適な生活をお楽しみください。