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消費税のインボイス導入迫る。「益税」の解消なるか

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
消費税の「益税」問題は、インボイス導入で解決できるか(写真:イメージマート)

消費税におけるインボイス(適格請求書)導入が、来月に迫っている。

インボイスは、業者の間での取引で、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を、請求書に記載して伝えるものである。

日本の消費税に当たる付加価値税を導入している欧州諸国などでは、以前からインボイスが導入されている。しかし、日本は、消費税を1989年度に導入する際に、インボイスを導入しないこととした。

加えて、その導入時に、課税売上高が1000万円以下の事業者の消費税の納税を免除する事業者免税点制度も設けられた。これにより、課税売上高が1000万円以下の事業者は、免税事業者となった。

しかし、消費税率を10%に上げる際、飲食料品などに8%の軽減税率を適用することにした。複数税率を設けることから、日本でもインボイスを導入する契機となった。

インボイスが導入されることで、いわゆる「益税」が解消されることが期待される。

「益税」とは、消費税を納める義務がない事業者が、「消費税」と称して上乗せした値段で買い手に品物を売って、税務署に納められず事業者の手元に残ったものである。

「益税」は、インボイスがないと、見分けることが難しい。なぜなら、品物を売った事業者は、免税事業者か課税事業者かを容易に見分ける手立てがないからである。課税事業者は、買い手から預かった消費税を納税しなければならないから、原則として買い手から預かった消費税が手元に残ることはないが、免税事業者はその納税義務が免除されている。

しかし、インボイスが導入されると、課税事業者のみがインボイスを発行する。免税事業者は、納税義務がないからインボイスを発行できない。だから、インボイスが導入されると、免税事業者か課税事業者かを見分けることが容易になる。

インボイスが導入されれば、インボイスを発行しない免税事業者が、「消費税」と称して上乗せした値段で買い手に品物を売ると、納税義務がないのになぜ「消費税」を上乗せするのか、という疑義が生じやすくなる。

すると、「益税」が生じにくくなると期待される。

では、インボイスの導入によって、「益税」は解消されるだろうか。

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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