昨日(1月20日)、第68回となる新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが開催されました。時間をいただいて、全国に先駆けてオミクロン株が流行している沖縄県より、その重症度やワクチン接種との関係、医療や介護へのインパクトなどをまとめて報告しました。

プレゼン自体は10分程度でしたが、以下、一般の方にも伝わるように文言など加筆して紹介します。他の地域でも確実にオミクロン株は拡大していくと思います。対策の参考としていただけると幸いです。

筆者作図
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図1をご覧ください。沖縄県では、正月休みがあけてから急速に感染者数が増加しましたが、1月13日ごろより頭打ちとなっています。

検査体制の上限に近づいていることから、予約が取れないなど受検を諦めている方が一定数いるものと考えられます。また、オミクロン株に感染しても、若者にとっては軽症であるとの情報が拡がっていることで、検査を受けない方が増えている可能性もあります。

感染症の発生数が高いレベルで横ばいになるとは考えにくく、減らない限りは増えていると解釈するのが妥当だと考えています。

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図2に、性・年齢階級別で直近7日間の新規陽性者数を示しています。20代が2,147人と最多ですが、その前の7日間の3,906人からは大きく減少しています。一方、小児、高齢者が増え続けており、全体の陽性者数を押し上げています。

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図3に、そのトレンドを示しています。1月上旬には半数近くを占めていた20代の割合が急速に縮小し、小児、高齢者を含めた全世代へと拡散していることが分かります。

検査を受けなくなった影響も考慮すべきですが、20代の陽性者数が急減していることは事実です。20代の感染者数が最大だったのは1月7日で915人、最近は200人前後です。1月9日から実施されている重点措置を含めた施策により、若者層における急速な感染拡大にはブレーキがかかったと考えられます。

沖縄県の夜間滞留人口が大きく減少していることからも(西田淳志先生の報告)、若者たちの協力については、素直に評価してよいのではないかと思います。これだけ頑張っているなかで、さらに厳しい措置を若者たちに求めることがどれくらい理解がえられるかとも感じます。むしろ、増えてきた高齢者や子どもたちを守る戦略をとるべきです。

重点措置のような社会全体への制限とは、結局のところアクティブな若者たちの行動を抑制するものであって、高齢者や子どもたちを直接的に守る効果は低いと考えられます。つまり、社会への影響に比して、目標への影響は限定的と考えられます。

とくに重症化しやすい高齢者を守るうえで、もっとも効果的な戦略はワクチン接種にあります。ブースター接種は、発症予防効果に明確なエビデンスがあります。つまり、高齢者へのワクチン接種こそが最優先で取り組まれるべきであり、社会全体への制限を延長するのであれば、その面での説明が求められると思います。

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図4は、保健所管轄区域別で新規陽性者数の推移をみています。北部と離島では減少に転じた可能性がありますが、中南部の都市部では高いレベルでの流行が続いています。ただし、重点措置後、流行動態に変化が生じてきています。

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1月19日時点で、県内では11,673人が診断されて療養しています。入院 380人、ホテル 323人、社会福祉施設 168人、そして自宅療養が10,802人です。その内訳を図5に示しました。重症度別に再集計すると、無症候または軽症が97.9%を占めています。酸素投与が必要な方が0.9%、重症者が0.1%でした。

「なぜ、軽症が163人も入院しているのか」と指摘されることがあります。「軽症なら家に帰すべきだ」と。一般の方には、分かりにくい概念だと思いますが、ここで軽症としているのは、新型コロナとしての呼吸器症状が軽症ということに過ぎません。糖尿病などの基礎疾患を増悪させたり、心筋梗塞などを併発させたりして、全身状態不良の高齢者が多数入院しておられます。全身状態は決して軽症ではないのです。

なお、重症者6人について、デルタ株なのか、オミクロン株なのか、まだ検査が行われていません。現在、検体を取り寄せて、L452R変異について調べる予定としています。来週以降、改めて報告できればと思います。

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図6は、入院患者数の推移になります。新規陽性者数は頭打ちでも、中等症の患者が増え続けています。重症者も徐々に認めるようになりました。高齢者の感染が増え続ける限り、このトレンドも続きます。

もともと、1月から2月にかけては、寒冷であり、年間でもっとも入院患者が多い季節です。沖縄県でコロナ診療にあたる救急受け入れ重点医療機関におけるコロナ病床占有率は73%ですが、一方で、コロナ以外の一般病床占有率は94%です。

沖縄県のような地方県では、医療資源は限られています。コロナが増えたから、それだけ病床を増やしていると、他の疾患が診られなくなります。私たちは、コロナだけでなく幅広い急性期疾患全体を見据えながら、コロナへの病床配分を考える必要があります。

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図7は、宮古島と石垣島で診断された新規陽性者1,234人について重症度を確認しています。この離島地域では、自己完結的に医療が行われており、患者の追跡が容易であることから協力いただきました。図5の集計は、調査時点での重症度を表していましたが、こちらは、医療機関に聴取して、もっとも症状が重かったときの重症度を報告いただいたものです。

その結果、1月16日時点までに中等症Ⅰ 32人、中等症Ⅱ 20人と診断されていますが、年齢階級別でみると、60歳未満では、ほとんどが酸素投与を要する症例は認めていません。酸素投与を要した6人は、いずれもワクチン未接種であるか、基礎疾患や肥満など重症化リスクのある方でした。一方で、80歳以上では、21.4%が酸素投与を要する状態となっておられ、半分以上が中等症です。

今後、この勢いのまま高齢者へと感染拡大した場合には、急速に医療がひっ迫していく可能性が高まります。高齢者を感染から守らなければなりません。多発する入院患者に備える必要があります。一方で、若者たちにとっては、オミクロン株は軽症であることを率直に伝える必要もあります。ただし、社会はつながっているので、高齢者を守るためにも、感染しないよう訴えていかなければなりません。

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1月1日から16日までに診断確定した沖縄県全体の陽性者16,841人について、1月19日までの入院の有無を確認しました。その結果をもとに、図8に年齢階級別に入院受療率を示します。70代以上で入院の判断が急速に増えていることが分かります。

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図9に、ワクチン接種回数別に入院受療率を比較してみました。2回のワクチンを接種してから時間がたっている方が多いと思いますが、入院受療率は未接種もしくは1回よりも低く抑えられている可能性があります。3回目接種は少数ですが、80歳未満では入院されている方は出ていません。

80歳以上だと、コロナ以外の理由でも入院判断がされますし、とくに施設入所者であると軽症であっても入院判断となることが多いです。このため、重症度を必ずしも反映しているわけではないと考えられます。

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図10は、県内の新規陽性者への対応と医療提供の流れを示しています。左上に、自主検査とあります。すでに、沖縄県内はPCR検査が飽和状態になりつつあり、軽症の方々については、抗原検査キットを活用いただくように呼びかけています。

しかし、結果が陽性だったときの窓口が不明瞭であり、結果的に、夜間の救急外来などを混雑させてしまう要因になっています。そこで、軽症者については、電話による診療へと誘導し、写真等で検査結果を確認したうえで届け出ができる仕組みを構築するよう調整を進めているところです。

この疾患は、これまでの考え方とは切り替えて、効率的な体制を整えていかなければなりません。制度で切り抜けられるものは、制度を適正化し、中等症以上の患者さんを見逃さず、ハイリスク者を遅滞なく見守っていく体制をめざしたいと考えています。そのためにも、軽症の若者についての対応は、できるかぎり効率化させることが必要です。

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図11をご覧ください。高齢者へと感染が移行しているなかで、今後、急速に入院需要が増大する恐れがあります。医療資源は限られており、コロナ病床をこれ以上拡張することは難しくなってきています。

一般医療を守りながら、コロナと戦っていくために、私たちはバランスある戦略をとっていかなければなりません。となると、入院受療率を下げるか、入院期間を短縮することが必要になります。

入院受療率を下げる方法としては、まずは、ワクチン未接種者へのキャッチアップと高齢者への3回目接種を迅速に進めることです。そして、沖縄県では、すでに入院待機ステーションを整備していますが、これを拡張することで、プレホスピタルにおいて適切なトリアージが行われやすくなります。また、地域診療所の参画により、コロナ患者の在宅医療を推進することで、自宅で過ごしたい認知症の高齢者などの自宅療養が支援できるようになります。

入院期間を短縮する方法としては、ハイリスク者に対して治療薬を早期かつ広範に投与することで回復を早められる可能性があります。また、回復していてもADLが低下するなどで調整困難となっている症例などで入院が長期化していることがあります。こうした方の退院・転院調整を円滑化することで、入院期間の短縮が期待できます。あるいは、感染性のある期間であっても、宿泊療養のホテルに早めに退院させることができれば、やはり入院期間が短縮できます。そのためには、ホテルの医療体制を強化することが必要です。

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図12をご覧ください。当院における年齢階級別在院日数の推移を示しています。一番右端の全年齢でご説明しますが、平均在院日数は14.8日、13.1日、そして第5波では9.1日まで短縮してきました。これは地域連携のたまものです。

つまり、軽症であれば、自宅や施設、あるいはホテルで療養を続けていただき、入院が回避されるようになってきた。あるいは、退院時には速やかに回復期医療機関や高齢者施設が受け入れるようになった。こうして入院期間が短縮したため、病床を何とか確保することに繋がりました。

医療資源が限られた地方では、コロナ対応の病床を増やすということは、一般医療を犠牲にすることになります。医療従事者も限られていますし、急性期医療の効率化こそが現実的な対応でした。在院日数を半減させることができれば、理屈上、倍の患者を受け入れることが可能になります。

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図13をご覧ください。いま、沖縄県の高齢者施設が危機に直面しつつあることをお伝えしなければなりません。本日朝の時点で、高齢者施設で168人が感染しながら療養を続けておられます。1週間前から倍増です。しかも、23人が酸素投与が必要な状態です。地域の医師や看護師が支援に入って何とか支えていますが、施設での集団発生が続発しており、支えきれなくなってきました。

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図14をご覧ください。沖縄県では、施設療養の対応レベルについて基準を設けています。もちろん、ケースバイケースではありますが、医療のひっ迫状況に応じて段階的に施設での医療提供へと切り替えていきます。現在は基準2の段階ですが、一部の施設では、酸素投与も始めていますので、地域によっては基準3へと移行しつつあります。

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図15に、施設療養の支援までの流れを示しています。医療にアクセスできずに亡くなる人を出さないことが最大の目標となります。次に、施設のパニックを防ぐことが目標となります。時間とともに事態は進行し、また施設側の不安は増していきます。ですから、1人でも陽性者を確認したら24時間以内に支援に入ることが大切です。

現地で感染対策を指導し、広範に検査を行い、必要な資機材を供給します。そして、様々な側面から施設療養が継続できるかを現場で判断し、支援体制を構築していきます。ただ、こうした手厚い支援にも限界があります。BCPを策定するとともに、介護の効率化が求められています。

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最後に、沖縄県内の重点医療機関における医師、看護師の休職数を紹介して終わります。1月14日の事務連絡以降、休職数が急速に減ってきています。迅速な対応に感謝しています。ありがとうございました。