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今こそマイナンバーでギャンブル依存対策を

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

さて、ビジネスインサイダーが以下の様な報道をおこなっております。以下転載。

「マイナンバー普及には3倍以上のスピードが必要」自民党がデジタル庁創設へ提言提出、全41項目……主なポイントとは?

https://www.businessinsider.jp/post-224390

自民党のデジタル社会推進本部(本部長:下村博文政調会長)は11月18日、菅内閣が設置を目指す「デジタル庁」についての提言を平井卓也デジタル改革担当相に提出した。

今回の「第一次提言」では「一度提出した情報は二度と提出しないワンスオンリー」の実現や「マイナンバーの活用範囲拡大」など行政サービスの利便性向上や拡充を盛り込んだ。さらに「内閣直属」「強い権限」を持つ常設組織とし、官民から専門家を登用し、幹部への若手抜擢も視野に入れた「官民問わず適材適所の人材配置」を求めている。

マイナンバーカード普及はカジノ産業にとって朗報

2022年度の終わりにはマイナンバーカードの国民全員への普及を目指して急速に歩みを進めている菅政権でありますが、このことは実は我が日本のカジノ産業にとっても非常に大きな朗報であります。我が国のカジノを規制するIR整備法ではその第70条じて、我が国のIRのギャンブルを提供する区画に関して、外国人にあってはパスポート、内国人にあってはマイナンバーカードによる入退場の管理を義務付けています。

即ち、我が国のカジノ産業はギャンブルを遊ぶことが出来る20歳以上という法定年齢のみならず、さらにマイナンバーカードを所持し、その身元確認が可能な人のみを顧客として扱う(※内国人は)ことができるということ。その様な法制下にあって、我が国では遅々としてマイナンバーカードの普及が進まず、その所持率が20%前後でウロウロしているという事実は、実は我が国のカジノ産業成立にとって非常に大きなリスクファクターとして数えられていたのが実態でありました。

カジノの依存対策システム

では、政府が「なぜ」カジノにこの様な厳しいマイナンバーカードによる入退場管理を課したのか。それは、依存症対策の為であります。

実はこのカジノ利用者が提示するマイナンバーカードは単純な年齢確認のみに使われるのではなく、入退場口に設置されるシステムを通して政府側のサーバーに利用データが積み重ねられます。我が国のIR法制では、内国人に関しては一週間に3日、1カ月間に10回という施設利用上限が設けられており(法69条)、このマイナンバーカードを利用した個人照会により利用上限に達した者を、期間中に事業者が立ち入らせることが禁じられています。

また、同時にIR整備法はカジノ事業者に対して、自己排除/家族排除プログラムの提供も義務付けています(法68条)。自己排除/家族排除プログラムとは、入場者自身およびその家族からの申し出により特定人物のカジノ施設の利用を制限するというプログラムのこと。このプログラムを利用すればギャンブル依存者、およびその家族は、依存者が「ダメだ、ダメだ」と思いながらも思わずカジノ施設に足を踏み入れてしまうことを防止する事ができます。この様なプログラムは、日本以外の多くのカジノを合法としている国や地域で採用されているもので、依存対策としては最も実効性のある施策であると評価されているものです。我が国のIR整備法では、このプログラムの提供にもマイナンバーカードを使えとする詳細規定までは定めていませんが、先述の回数上限ではマイナンバーカードによる照会が義務付けられている為、事業者側はここにもマインバーカードによる個人認証機能を利用することはほぼ確実であると言えるでしょう。

いずれにせよ、我が国のカジノ産業における依存対策は顧客全員がマイナンバーカードを携帯している事が大前提として実施されるものになるわけであります。

カジノ以外の依存対策システム

この様に国内で先行するカジノの依存対策法制ですが、一方でそれに圧倒的に遅れる形となっているのがカジノ以外のギャンブル等産業です。我が国には競馬、ボートなどの4大公営競技、パチンコ/パチスロ業など法によって認められたギャンブル等産業が複数存在しますが、未だそれぞれの産業を規制する論拠法はIR整備法がカジノ事業者に義務付けている様な依存対策を課していません。

一方、近年高まったギャンブル依存対策への国民的関心を受け、2018年に成立したギャンブル等依存対策基本法に基づき制定されたギャンブル等依存症対策基本計画において、「一応」各産業におけるギャンブル依存対策方針が示されていますが、これが驚く程ユルユル。我が国のIR整備法がカジノ事業者に義務付けている先述の排除プログラムの「真似ごと」を採用するとしていますが、カジノの様に入退場ゲートでのマイナンバーカード管理などの方式をとらず、例えば公営競技では「入場口及び投票券発売機付近への警備員等を配置して『目視で』排除者を識別する」などと、完全に関係者を舐めてるとしか思えない「排除プログラム(笑)」を実施している状況であります。

また、パチンコ産業においても「自己申告プログラム」なるカジノの排除プログラムのこれまた「真似ごと」の様なプログラムを走らせていますが、公営競技業界と同様の目視と、それに加えて各事業者がプレイヤー向けに発行している「プレイヤークラブの会員証」と使います、と。何なんですかね、そのクラブ会員証の利用ってのは? それ、利用者がクラブ会員証使わずに遊んだら、個人識別できないじゃないですか。

カジノ以外もマインバー管理に転向せよ

上記の様な問題点の指摘は、私自身は節々で小出しにしてきたものの、今まであまり大きな声でそれを主張してきたことはありませんでした。なぜなら、カジノ産業が背負って来た「今後のマイナンバーカード普及次第で産業が成立しない」という大きな十字架を、他の産業に背負わせるのはあまりに酷であったから。しかし、その状況が一変したのが今回の菅政権のマイナンバーカード推進政策であります。

これまで政府はマイナンバーカードの普及に関して「カード取得の意思は各国民判断に預けられている」という一種の「言い逃れ」を使いながら、カジノ産業側から幾度となく挙がる「マイナンバーカードの普及目標を示せ」という要請を交してきました。しかし今、菅政権はまさにその方針を翻し、2年半後に国民全体に普及させるという明確な方針を示し、その為に猛スピードで進み始めた。

だとするのならば、既に我々カジノ業界にとっても、その他ギャンブル等業界にとっても依存症対策にマイナンバーカードを利用する事に対する懸念事項はなくなりました。今こそ声を大にして主張しますが、カジノ以外の各ギャンブル等産業が現在行っている顔認証によるギャンブル依存者の排除なぞというのは、本来はマイナンバーカードなどの個人認証を「補助」する為の副次的な対策でしかありません。我が国の各ギャンブル業界の論拠法は、IR整備法が事業者に義務付けているマイナンバーカードによる入退場管理を同様に各産業に義務付けるべき。そして、各産業がマイナンバーで連結されることによって、一律に施設からのギャンブル依存者の排除を行うべき。今のように各産業がまさに産業ごとにバラバラの制度設計の元でバラバラに行っている依存対策なぞというのは、縦割り行政の打破と聖域なきDX化を旗印として掲げる菅政権においては、まさに真っ先に打破されて行くべきものと言えましょう。

ということで私自身、今後は声を大にしてマイナンバーカードを軸とした我が国のギャンブル等依存対策を声を大にして主張してゆく所存であります。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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