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大阪IRプロセス延期へ

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

さて、以下の様な発表が大阪府/市から行われました。以下、MBSからの転載。

大阪IR“万博開幕前の開業”を『断念』…“日米渡航制限で情報が停滞”手続きを延期

https://www.mbs.jp/news/sp/kansainews/20200327/GE00032286.shtml

大阪府は3月27日、IR(カジノを含む統合型リゾート)について、目標としていた『2025年大阪・関西万博前の開業』を断念する考えを明らかにしました。「IRの誘致について3か月の延期という判断をしました。(万博との)相乗効果は認められなくなった。」(大阪府 吉村洋文知事)

大阪府・大阪市が進めるIR(カジノを含む統合型リゾート)施設の開業時期について、大阪府・大阪市はこれまで2025年大阪・関西万博前の一部開業を目指すとしていましたが、吉村知事は公募手続きや事業者の決定などの手続きを3か月延期すると発表しました。

そもそも「万博前開業」と言っていたものが「部分開業も認める」→「事業者の判断に任せる」と撤退戦の様相を見せて来た大阪IRの開業時期を巡る論争ですが、いよいよ事実上の万博前開業の断念となった様です。理由として挙げられたのは、当然ながら現在世界中で大騒動となっている新型コロナウィルス拡散。渡航制限などによって応札事業者側のコミュニケーションが困難になった為の配慮とのことです。

これまでずっと私は申し上げて来た通り、大阪IRは無理なスケジュールを立てて無理やり万博前に部分開業したところで、応札企業側にとっては開発コストが高くなるばかりで何も良いことなし。大阪にとってだって、たかだか6か月しか開催されない大阪万博の為に無理して半端な施設を建てる意味もあまりなく、普通にポスト万博の域内観光振興施策としてIRを使えば良いわけです。

正直、そんな当たり前のことが当たり前に通って来なかったのは、先の大阪府市の首長選で「IRの万博前開業には拘らない」と政策主張していた自民党系候補に対して、維新系の現首長達が「万博前開業が必要なんだ」との主張で戦ったという100%政治家としてのメンツの問題でしかなかったわけで、何となく方針転換の正当性が出来て良かったですね(棒、という話であります。

で、次なる論議というか、寧ろそっちの方が先に方針発表しろよという話になるのが国側の方針でありまして、国側はこの3月~4月の間にIR導入に関する基本方針の正式版を発表。その後、大阪を含めてIR導入検討を行っている各自治体がそれぞれの候補地の開発パートナーを決める入札を行い、来年1月~7月の間に各自治体が国に向かって申請というプロセスを予定していたワケですが、それって今の状況で無理じゃありません?という話は、既に数週間前のエントリで述べたとおりであります。

【参照】IR区域申請:来年1月からなんて無理なんじゃない?って話

http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/10203358.html

五輪も来年に延期になり、コロナ禍の発生により来年10月に任期切れとなる衆院の改選選挙の予定もかなり流動的になっています。この様な状況下で1~7月という長期に渡って国側のIR申請期間が設定されているのは、色々と都合が悪い人も居るんじゃないでしょうかね? というよりも、そもそも現在の様な状況下で来年に申請をせよと言われても各自治体は勿論のこと、それぞれの母国側で新型コロナ被害の直撃を喰らっている各事業者にとってもその準備を進めるのは困難を極めるわけで、私としては国側の申請も期間を切り直しするしかないのでは?と思っておるところです。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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