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闘会議2018、終了のお知らせ!?

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

闘会議の主催企業の一つGzブレイン代表の浜村弘一さんが、来年の闘会議にて始まる認定プロゲーマーによる高額賞金制大会に関して以下のような発言をしていらっしゃるのを見掛け、鼻水を噴きました。以下、日経トレンディからの転載。

eスポーツで、ゲームは「プロ野球」になれるか

Gzブレイン・浜村弘一社長に聞く

http://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/pickup/15/1003590/122101516/?ST=trnmobile&P=3

----AMDの先日の発表では、そうした法的な問題がクリアできそうだということでした(関連記事:デジタルメディア協会がeスポーツ大会の賞金を支援)。法律が変わったわけではないですよね?

浜村氏:  法律が変わるのを待つのではなく、法解釈で対処しようということです。例えば、ゴルフではウェアや用具のメーカーが賞金を出して大会を開いています。これは「プロ」という資格がきちんと認定されているからです。

 ゴルフの一部の大会は、プロもアマチュアも参加できますが、アマチュアが優勝しても賞金はもらえません。プロはあらかじめ機材などをそろえて仕事として競技に挑んでいるので「賞金につられてスポンサーの賞品を買う」わけではない――そこを明確に区別することで、景品表示法の違反には当たらないことになるんです。

 ゲームも同じように「プロ」宣言をすればよかったんですが、「プロ」と呼ぶ根拠がとても分かりにくく、公的に認められづらいものがありました。そこで、JOCへの加入を目指すeスポーツの団体を作り、技術があって、高度なパフォーマンスで観客を魅了できるプレーヤーにプロライセンスを与えようということになったんです

えっと…大変申し訳ないのですが超絶な間違いだらけなんですが、大丈夫なんでしょうか?

ゴルフの大会においてウェアや用具のメーカーが高額賞金を出してよいのは、プロ制度によって景表法の適用回避を行っているからではありません。ゴルフを含め、多くのスポーツコンテンツというのは、「特定メーカーのウェアや用具を購買すること」というのがそこで争われるゲームの勝敗に影響を与えません。だからこそ、そこに賞金を拠出することが景表法の規制する販促行為にあたらないと解されているワケです。

ゲーム業界の方々は、現在興隆の途にあるeスポーツをリアルのフィジカルスポーツになぞらえて語る事が多いのですが、eスポーツとその他スポーツとの最大の相違点は、ゴルフも含め多くのフィジカルスポーツが特定の事業者に権利が属さないパブリックコンテンツであるのに対して、eスポーツで争われるゲーム種はどこまで行っても究極的には「特定企業の販売する商品」でしかないという点にあります。ゴルフをするのに、もしくはその技術を磨くのに特定メーカー商品を購買することは必須ではないわけですが、多くのeスポーツ種はゲームに参加し、その技術を磨くにあたって商品購買やその他の課金が前提となっている。だからこそ、その大会にゲーム会社自身が賞金を拠出することが「販売促進になる」として景表法の規制対象と見なされているわけです。

一方で、私自身が昨年9月に消費者庁への法令適用確認を行ってたことで、景表法の規制が適用されないeスポーツ大会の形式が明示されました。その要件となるのが「free to play(基本プレイ無料)」のゲームであって、その課金様式がゲーム上の優劣に影響を与えないルールで行われるゲーム大会。すなわち消費者の購買行動とゲームでの勝敗が必ずしも紐づいていないと判断できるからこそ景表法の適用がなされないという理屈なのであって、むしろこれこそがゴルフ大会にスポーツ用品メーカーが高額賞金を拠出して良いのと同じ理屈であるわけです。

一方で浜村氏は上記インタビューで「プロ認定があるからこそ景表法を回避できる」などと主張をしているわけですが、ゴルフのプロアマ規定による「アマチュアによる賞金受け取りの禁止」は景表法を回避することを目的として定められているものではありません。以下、日本ゴルフ協会の定めるゴルフ規則からの転載。

3-1 賞金のためのプレー

3-1 a 通則

アマチュアゴルファーはマッチ、競技あるいはエキシビションで、賞金やそれと同等のものを目的にゴルフプレーをしてはならない。しかしながら、アマチュアゴルファーは参加前にそのイベントでの賞金を受け取る権利を放棄することを条件に、賞金または同等のものが提供されているゴルフマッチ、競技あるいはエキシビションに参加することができる。

[中略]

3-2 賞品の限度額

3-2 a 通 則

アマチュアゴルファーは、小売価格75,000円を超える賞品、あるいは統轄団体によって決められることがあるそれより小額の賞品(表象的賞品を除く)や賞品券または同等のものを受け取ってはならない。この限度額は、アマチュアゴルファーが1競技、または1つのシリーズ競技で受け取る賞品や賞品券の合計額に対し適用する。

もしこのゴルフのプロアマ規定が景表法を意識して作られているものである場合、賞金(現金)も賞品(物品)も関係なく「10万円を最高価額にして元商品の取引価格の20倍まで」というのが上限となります。ところが実際の規定では賞金は一切受け取ってはならないとする一方で、賞品に関しては小売価格75,000円までの受け取りを許している。もし浜村氏が主張しているようにこの規定が景表法を回避する為のものであるとするのならば、アマチュアゴルファーがこの最高価額の75,000円の賞品を貰う為には元取引としてその20分の1、すなわち3,750円分の本取引がなければこの賞品拠出は「違法」ということになるわけです。

ところが日本ゴルフ協会の定めるプロアマ規定がそのように作られていないのは上で解説したとおり、そもそもゴルフを含め多くのスポーツ競技において用具メーカーが賞金拠出をすることそのものは景表法の規制範疇に入っていないから。すなわち、日本ゴルフ協会の定めるプロアマ規定は、景表法とは全く関係ないところで定められたものであるからに他なりません。

ていうか浜村氏の論がもし正しいのであるとすると、ゴルフと違ってプロ化していないスポーツ種であるにもかかわらず用具メーカーが高額賞金を設定しているような大会、例えばバドミントンのヨネックスオープンなんかは違法であるってことになるわけですが、浜村氏はご自身が発言していることの意味が判っていらっしゃるのでしょうか?

実は浜村氏およびその周辺は、以前これとは全く違う法令回避スキームで多くの大手ゲームメーカーを巻き込んで一時は賞金総額で1億円を超えるようなイベントを開催したものの、その後、そのスキームに法令上の問題がある可能性が高いとされてゲーム各社を法令リスクに晒した実績があるわけですが(詳細はコチラ)、アレに懲りずにまたこんないい加減な事を言い始めるワケですね。

闘会議2018では、この浜村氏の主張する「プロ認定制度」なるものの下で賞金制のeスポーツ大会が行われるとのことですが、こんな適当な論拠でそれが実施されるのだとすると、私としては「みんな逃げて」としか申し上げようが御座いません。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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