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代表監督にまで疑惑が及ぶ「サッカー八百長試合」とは

木曽崇国際カジノ研究所・所長

我が国のサッカー界において看過できないニュースが飛び込んできております。以下、関連する記事をいくつかご紹介。

アギーレ監督、八百長疑惑で出頭も!(共同通信)

http://www.hochi.co.jp/soccer/world/20141129-OHT1T50057.html

アギーレ監督の八百長疑惑!協会「情報収集中」(スポーツ報知)

http://www.hochi.co.jp/soccer/japan/20141129-OHT1T50240.html

現在、世界のサッカー界を騒がす八百長行為ですが、日本から多くの選手が海外リーグに進出している昨今、「いつかの時点で必ず日本でも大きなニュースになるだろうなぁ…」と思っていたところ、私の想像のさらに上から問題が降ってきました。代表監督ですか…それは、大変な事態ですな。

スポーツの八百長と言えば、違法賭博とセットとして存在する伝統的な違法行為の形式ではあるのですが、、かつては各国ごとに個別の反社会的組織がそれを取り仕切るという非常にローカルな犯罪行為でありました。ところが、特に2000年代半ば以降においては、サッカー競技自体の国際化がますます進行してきたことに伴って、その犯罪行為も次第にグローバルに展開されるものへと変貌してきたという背景があります。

また特に世間を驚かせたのは、この数年、それらグローバルなサッカーの八百長賭博シンジケートが東南アジアの反社会的組織を中心に展開していることが判明してきたこと。サッカーの八百長といえば、伝統的には「イタリアマフィアの十八番」などとも言われてきた業界の常識を、大きく覆すことになりました。

一方、我が国でも公営によるサッカーくじ(=toto)が存在するわけですが、我が国のサッカーくじの方式は単一の試合結果への賭金ではなく、複数の試合結果を予想させるものであり、公式上は「八百長に強い賭金方式であり、日本のJリーグでは八百長はない」とされてきました。ところが、その一般的に共有されてきた常識が大きく覆されたのが、今年3月の以下の事件です。

Jリーグ初の八百長警報 監視会社指摘で調査、不正なし

http://www.asahi.com/articles/ASG3L5WR0G3LUTQP012.html

Jリーグは18日、J1の1試合について国際サッカー連盟出資の監視会社「FIFA EWS」から八百長の疑いを知らせる警報を受けたことを明らかにした。海外のサッカー賭博の賭け金が異常な動きを見せたためで、Jリーグが関係者への調査などを行い、不正はなかったと判断した。2011年に同社の監視システムを導入して以降、警報を受けたのは初めて。

上記は「国際的な不正監視機関から警告を受けたが、調査の結果シロであった」という事件。前出の通り、日本のtotoは諸外国のスポーツベットと比べて「八百長に強い」のは事実でありますが、実はすでにイギリスなどのスポーツベット業者はJリーグの試合結果を彼らのシステムの中で賭けの対象として扱っており、当然ながらそこには海外リーグと同様の八百長リスクが存在するということが、業界関係者の中で実感として共有された事件でもありました。

また、当然ながらW杯等の国際試合は、違法賭博シンジケートにとって最も大きなビジネスチャンスであり、日本代表選手などともなれば彼らからのコンタクトが無いとも限らないワケで、ここにもサッカー競技の国際化の影響が反映されているといえましょう。

そして、当該アギーレ監督に関する疑惑ですが、すでに少なくとも8人のサッカー選手および当時スペインリーグのクラブチーム監督であったアギーレ氏にも及んでいる状況。勿論、未だ捜査が始まっただけの「疑惑」の段階であり、アギーレ氏本人は関与を否定していますから、予断をもってこれを判断すべきではありません。しかし、FIFAの慣例では八百長に関与したと確定した者は選手のみならず、監督も含めて国際サッカー業界全体から永久追放処分されることとなっており、日本代表監督として同氏を抱える我が国としても、今後の捜査の進捗を注意深く見守ってゆく必要があります。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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