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朝倉未来vs.平本蓮は『RIZIN』で実現するのか?その可能性と意義─。

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
9月にフロイド・メイウェザーと果敢に打ち合った朝倉未来(写真:RIZIN FF)

変わり始めた平本蓮の評価

「(朝倉未来を)俺がこの手で処刑する。お前の頭痛は(フロイド・メイウェザー戦の)ダメージじゃなくて、くだらねぇ自分のブランディングを守るためのストレスから来てるんだろ。逃げるなよ」(平本蓮)

「俺は全然いいんだけど。まだ早いと思うけどね。大丈夫? 俺は、まだまだ(平本蓮には)負けないよ。やった方がいいのなら、来年相手をしてやるよ」(朝倉未来)

因縁のふたり、朝倉未来(トライフォース赤坂)と平本蓮(ルーファスポーツ)の対決実現気配が漂い始めている。

11月6日、ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催された『RIZIN LANDMARK4』で平本が前DEEPフェザー級王者の弥益ドミネーター聡志(team SOS)を破るアップセットを起こしたからだ。

この結果には多くのファン、関係者が驚いた。

練習中に左足人差し指付け根部分を骨折しカラダを絞れなくなったことで、契約体重が66キロから70キロに変更される救済措置があったとはいえ、平本はMMAファイターとしての成長を随所に見せ完勝している。

グラウンドの展開に難があるのは変わらずだろうが、テイクダウンディフェンスができるようになり簡単には倒されなかった。また、倒された際にも、その後の対処で展開をスタンドに戻していた。

7月『RIZIN.36』での鈴木博昭(BELLWOOD FIGHT TEAM)戦に次ぐ勝利。これでRIZINにおける戦績も2勝2敗の五分としている。

SNS、あるいは記者会見で常に朝倉を挑発してきた平本。

それでも両者の間には大きな戦闘能力の差があり、弱い平本が吠えているとの観が強かった。だがここにきて「闘ったら面白いんじゃないか。平本もノーチャンスではない」と周囲が彼を認め始めてきたのだ。

11・6『RIZIN LANDMARK4』のメインエベントで弥益ドミネーター聡志(右)に圧勝した平本蓮(写真:RIZIN FF)
11・6『RIZIN LANDMARK4』のメインエベントで弥益ドミネーター聡志(右)に圧勝した平本蓮(写真:RIZIN FF)

「平本vs.萩原」のリマッチが観たい

さて、朝倉vs.平本は実現するのだろうか?

「大晦日に観たい」との声も聞かれるが、それは難しそうだ。

両者のコンディションが整わないからである。

「まだ頭痛が消えない。今年は大晦日には出ません」

朝倉は、そう明言しており、一方の平本も左足人差し指付け根部分の怪我を弥益戦で再発させている。互いに年内はカラダを休めることになろう。

それでも、来年に両者が対峙する可能性は高い。多大な注目を集めるカードが組まれぬはずがない。

RIZINのリングで朝倉が見据えるのは、クレベル・コイケ(RIZINフェザー級王者/ボンサイ柔術)へのリベンジ。そこへ辿る過程で、平本からの挑戦を受けることになるのではないか。

これまでの両者のRIZINにおける戦績は次の通り。

朝倉未来、10勝(4KO)2敗。

平本蓮、2勝2敗。

実績には大きな差があり、また闘ってきた相手のレベルも異なる。

朝倉は元修斗フェザー級チャンピオンでUFCにも参戦していた日沖発(ALIVE)、同じく修斗のベルトを腰に巻いたリオン武(RISING SUN)、斎藤裕(パラエストラ小岩)ら強豪を下している。対して平本が今回勝利した相手・弥益ドミネーター聡志は、一昨年の大晦日『RIZIN.26』で朝倉に初回KO負けを喫している選手だ。

「平本蓮の時代です!」弥益ドミネーター聡志に勝利した直後、ケージ内でマイクを手にした
「平本蓮の時代です!」弥益ドミネーター聡志に勝利した直後、ケージ内でマイクを手にした"美しきドブネズミ”は笑顔で絶叫した(写真:RIZIN FF)

ならば実績つくりの点で、平本には朝倉に挑むためのハードルがひとつ設けられてもよいように思う。

ハードルとは、MMAデビュー戦で敗れた相手・萩原京平(SMOKER GYM)へのリベンジだ。これは平本にとっても望むところだろう。

一昨年の大晦日、平本は萩原に2ラウンドTKOの完敗を喫した。その因縁の相手と再戦し勝てるか否か。平本が勝てば朝倉戦に前進、もし連敗を喫したなら「時期早尚」となるストーリーだ。

萩原は現在、3連敗中で相手を選べる立場にない。

RIZINからのオファーがあればリマッチを受けることになるのではないか。萩原にとっても”崖っぷちの闘い”となり、独特の緊張感が醸されること必至である。また、このリマッチでこそ平本の成長ぶりが正確に測定できよう。

いかなる流れにせよ、来年にRIZINの舞台で「朝倉未来vs.平本蓮」が実現すれば面白い。

現段階での力は朝倉が数段上のように思う。それでも、今後の平本の成長次第で差は縮まろう。意外な結末が待ち受けているのかもしれない。

また、観る者にとって食傷気味になりつつあるトラッシュトーク合戦も、二人の闘いをもって一つの区切りがつくのではないか。さらに、『Braking Down』の賛否を巡っても対立する両者の格闘技観が浮き彫りとなれば、それは「格闘技とは何か?」を改めて考える機会につながるとも感じる。

対戦実現を、急ぐことなく楽しみに待ちたい─。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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