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萩原京平と平本蓮──RIZINのメインで敗北を喫した”人気先行”のふたりの「これから」。

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
弥益ドミネーター聡志(左)に地元のリングで敗れた萩原京平(写真:RIZINFF)

メイン抜擢もチャンスを逃した

「人気先行型」

RIZINフェザー級戦線には、そう称されるふたりの選手がいる。

萩原京平(SMOKER GYM)と平本蓮(ルーファスポーツ)。

ともにチャンピオンでもなければ、フェザー級のトップランクに名を連ねてもいない。平本に至ってはRIZIN未勝利だ。にもかかわらず、両者は今年に入ってからRIZINで主役(メインイベンター)を任された。それだけ注目度の高いファイターなのである。

しかし、結果は伴わなかった。

3月20日、丸善インテックアリーナ大阪『RIZIN.34』のメインで萩原は、弥益ドミネーター聡志(team SOS)と対峙する。連勝中、そして地元のリング、勢いに乗ってのKO勝ちが期待されたが、結果は三角固めでヒジを決められタップを余儀なくされた。

「完敗です。ここは勝ちたかったですけど、自分の実力不足。勝てると思っていましたし自信もありましたが、自分のワンミスを突かれてしまった」(萩原)

『RIZIN.34』のメインエベント。バックスピンキックをヒットさせ一気に攻め込むも弥益ドミネーター聡志(下)に寝技で絡み取られた萩原京平。この後、三角固めを決められてしまう(写真:RIZIN FF)
『RIZIN.34』のメインエベント。バックスピンキックをヒットさせ一気に攻め込むも弥益ドミネーター聡志(下)に寝技で絡み取られた萩原京平。この後、三角固めを決められてしまう(写真:RIZIN FF)

その2週間前の3月6日、東京都内シークレットスペースでの『RIZIN LANDMARK vol.2』では、平本がメインに登場。米国修行を経ての約1年2カ月ぶりのファイト、「どこまで強くなっているのか」と大いに注目を集めるも鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺)に見せ場も作れず判定負けを喫している。

「結果は悔しいです、負けました。けど、負けてないです。練習は死に物狂いでやってきたので後悔はない。ただ、練習と試合は別物だった。いまの自分に足らないのは、総合格闘技の(試合)経験。今年はどんどん試合に出る」(平本)

『RIZIN LANDMARK vol.2』のメインエベント。鈴木千裕(左)に組みつかれ倒された後、対処ができず判定完敗を喫した平本蓮(写真:RIZIN FF)
『RIZIN LANDMARK vol.2』のメインエベント。鈴木千裕(左)に組みつかれ倒された後、対処ができず判定完敗を喫した平本蓮(写真:RIZIN FF)

萩原と平本は、ともにフェザー級トップ戦線に絡むチャンスを逃した。これから出直しとなるが、それでも依然としてふたりの人気は高い。奇抜な発言、特異なキャラクターが観る者を惹きつけるのだろう。

実力が人気に追いついていない状態にある。

2023年以降を見据えて

いま、RIZINフェザー級戦線は大いに盛り上がり、そして混沌としている。

現王者の牛久絢太郎(K-Clann)、実力トップと目されるクレベル・コイケ(ブラジル/ボンサイ柔術)、そして朝倉未来(トライフォース赤坂)、斎藤裕(パラエストラ小岩)が、ここに続く。4・17『RIZIN.35』では、牛久と斎藤の間で再戦となるタイトルマッチが行われ、ここでまた勢力図が変わるかもしれないが、彼らがフェザー級「トップ4」である。

萩原と平本は、人気はともかく実力的に「トップ4」には及んでいない。

「すぐにでも次の闘いがしたい。今年はどんどん試合に出る」

そう平本は言った。

「自分には、グラップリングと寝技の力をアップさせることが必要。その練習をこれからしっかりとやりたい」

萩原は、そう口にしている。

ふたりの打撃は強く、魅力的だ。反面、組まれ寝かされるとウィークポイントが露呈する。まずは、ここの強化が課題。サブミッションで一本を決めようとする必要はない。それでも、ディフェンスとエスケープの技術は不可欠だ。これを身につけてこそ、得意の打撃が活かせる。

成長のためには練習はもちろんだが、短いスパンで試合経験を積むのも得策だろう。

『RIZIN.34』終了後に榊原信行CEOは、こう話した。

「今日敗れた萩原選手が強くなるには実戦が必要。それは、平本選手にも同じことが言えます。ふたりには強くなるチャンスを今後も与えていきたい」

萩原と平本は今年、フル回転でRIZINに出場することになりそうだ。

萩原京平、26歳、平本蓮、23歳。まだ時間は十分にある。

キャリアが浅い中でのメイン抜擢は、荷が重くもあった。これからは、ファンからの視線よりも自らの成長を重視してアンダーカードで闘ってもよいのではないか。

対戦相手は、同じタイプの打撃系ファイターよりも総合力に富んだ選手が望ましい。ネームバリューは低くともキャリアのある者を相手にフィジカルとフィーリングを練るのだ。

結果を残さなければ生き残れないRIZINの舞台だが、人気選手であるが故に与えられる猶予チャンス…ならば、それを自らの成長のために存分に活用すればいい。敗北を重ね幻想が消えたいま、もう失うものはない、成長あるのみ。持てる力を出し切るアグレッシブなファイトをしてもらいたい。

2023年以降にトップ戦線に躍り出ることを見据えて──。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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