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あれからどうなった?:UAEに収容されているアフガン難民が抗議行動を起こす

髙岡豊中東の専門家(こぶた総合研究所代表)
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 2021年8月に当時のアフガン政府が崩壊し、ターリバーンが政権を奪取した際、より正確にはアメリカをはじめとする外国軍の撤退日程が現実のものとなり、多くのアフガン人が自身の将来と身の安全について深刻な不安に駆られるようになった2021年5月ごろから、多数のアフガン人が国外への逃亡を試みた。その一部がカブールの国際空港に殺到し、滑走路から離陸しようとする外国軍の輸送機に縋りつくありさまは、世界中の注目の的となった。外国の軍・政府・機関と共に働いていたアフガン人の脱出問題も国際的な大問題となり、本邦も世界中の関係者が大変な尽力をした。その結果、数万人のアフガン人が出国したのだが、その後の彼らの境遇や今後の命運について、いったいどれだけの人が気にかけているだろうか。

 アフガンを脱出した人々のうち、数千から数万人は彼らの出国や空港の運営に関してターリバーンと意思疎通ができたペルシャ湾岸のアラブ諸国に収容されることとなった。例えば、UAEには数千人が到着し、一時的な収容施設で暮らしている。当然のことながらアフガンの人々にとっても、彼らを収容しているUAEにとっても、UAEは最終目的地ではなく、第三国への移転が目標である。ところが、この第三国(特にアメリカ)への移転が遅々として進んでいないようだ。2022年2月10日には、アブダビの収容施設でアフガン人数百人が行動の自由とアメリカへの移送を要求する抗議行動を行った。UAEは世界的にもかなり高水準で管理・監視が行き届いている所なので、外国人も含む居住者が何か政治的な問題で抗議行動を起こすことができることはめったにない。また、国際的なものも含め報道機関がそうした問題を世に知らしめようとすることもめったにない。今般抗議行動を起こした者たちは、SNSで拡散を試みたほか、国際的な報道機関に動画や画像を送付する等して抗議行動を「なかったこと」にされないようそこそこ工夫したようだ。

 そうした努力のかいもあり、彼らはアメリカ政府の代表と面会することに成功した。とはいえ、面会についてのアメリカの反応は「将来アフガンに送り返されることを恐れるアフガン人たちのアメリカ入国問題について話し合い、アメリカは条件を満たした者についてアメリカへの査証付与を検討する」程度のものだった。しかも、アメリカ政府はアフガン人の処遇について「(アメリカ)国内の安全と危険にさらされるアフガン人の保護という二つの目標」を設定しているようである。つまり、アメリカの軍・政府に協力したり、彼らと共に働いたりした者も含め、行く宛を失って収容されているアフガン人は治安上の懸念材料として審査され、条件を満たさないと最終目的地であるアメリカへの移転を果たせないようなのだ。もちろん、誰をどんな条件で入国させるかについての判断は個々の国家がすることなので、かつて共に働いていたアフガン人に対するアメリカの「不義理」を責めてさえいればいいというわけでもない。

 より深刻なのは、アフガン人の脱出・逃亡の際にこれを一大危機として派手に記事を発信した色々な主体・媒体が、それから僅か半年しかたっていないのにそうした哀れなアフガン人について全くといっていいほど気にかけなくなっていることである。アフガン国内における人道危機(の可能性)には、国際機関などがそれなりの頻度で情報を発信するが、複数の国に分散して一時収容されているアフガン人は、第三国(ほとんどの場合はアメリカ)への移転も行動の自由もかなわないまま、統一的な状況把握の努力もなしに捨て置かれる恐れもある。

中東の専門家(こぶた総合研究所代表)

新潟県出身。早稲田大学教育学部 卒(1998年)、上智大学で博士号(地域研究)取得(2011年)。著書に『現代シリアの部族と政治・社会 : ユーフラテス河沿岸地域・ジャジーラ地域の部族の政治・社会的役割分析』三元社、『「イスラーム国」がわかる45のキーワード』明石書店、『「テロとの戦い」との闘い あるいはイスラーム過激派の変貌』東京外国語大学出版会、『シリア紛争と民兵』晃洋書房など。

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