気持ちはボールに乗り移る。パトリックのゴールを見るたびに、そんな思いが頭に浮かぶ。記憶に新しいAFCチャンピオンズリーグ(ACL)第6戦・全北現代モータース戦でのゴールも、ウズベキスタンから帰国後初めてのJ1リーグとなった前節、21節・アビスパ福岡戦での決勝ゴールも。本人も信じている。

「どういう状況でも、出場時間の長い、短いに関係なく、チャンスをもらったときには絶対にゴールを決めてやる、ということは常に思っています。そういったスピリットや貪欲さがボールに乗り移っているところもあるのかなと思います」

 もっとも、プロの世界は「気持ち」だけで結果を出せるほど甘くはない。ゴールはある意味、必然の産物。そのシーンに関わった選手だけに限らず、ピッチ上で起きる細かな1つ1つのプレーが『ジャブ』となって、最後に強烈なパンチに変わる。

「耕平(奥野)からのクロスボールでしたが、あの瞬間、相手の背後でもらう選択をして動き出し、きっちりゴールに押し込むことができた」

 攻撃陣だけではない。苦しい時間帯を守備でしっかりと耐え抜いていたことも、パトリックのゴールを決勝点に導いた大きな力だ。もっといえば、その勝利をつかみ取るためのたくさんの準備やトレーニング、目には見えない戦いも全てが『ジャブ』になったといえる。

 例えば今回、ガンバはウズベキスタンからの帰国後、アビスパ福岡戦を迎えるまで、たくさんの試練と向き合って試合を迎えている。ウズベキスタンから続くバブルを形成した生活。日常とは程遠い多くの制限下での行動。チームに新型コロナウイルスの陽性者が出たことで検査に追われ練習ができない日もあったし、クラブハウスが閉鎖されたためケガ人は十分な治療が受けられず、プレーが可能な選手もトレーナーの元で体のケアができないまま試合に臨まなければいけないという状況に置かれた。移動、連戦、暑さを思えば、それがどれだけ選手の体に負担をかけたのかは想像に難くない。

 それでも彼らは限られた環境でできる限りの最善を尽くし、準備をして戦いに挑んだ。ゴールを生むために。勝利をつかみ取るために。その最後の一押しになったのは、やはり気持ち、思いだろう。「勝ちたい」「決めたい」そして「悔しい」。パトリックの言葉がそれを示している。

「僕たちはACLに出場していたJリーグのチームの中で、唯一、グループステージ突破を果たすことができずに大会を終えることになってしまいました。そのことについて、少なからずチームにショックは残っていましたし、帰国後も、新型コロナウイルスの陽性者が出たりといろんなことが起きました。しかも、僕たちはバブルで隔離期間中という身動きがとれない状況の中、限られた時間でトレーニングをし、福岡戦に向けた準備をしてきました。そういう状況にあっても、みんながこの試合に対しての大事さをわかっていましたし、どうしても勝ちたいという気持ちもありました。僕は後半、途中からの出場でしたが、ゴールを決める準備はできていましたし、実際に点を取って勝つことができました。チームの勝利に貢献することができたのは凄くうれしかったし、今日のゲームはこれからの連戦につながっていくと感じています」

 着替えを済ませて取材に応じてくれた際は冷静に振り返ったパトリックだったが、試合直後のDAZNのインタビューでは興奮ぎみに日本語で気持ちを伝えている。すっかり板についた『大阪弁』が微笑ましい。

「今日の試合、めっちゃキツい。後半、めっちゃシュート、うれしい。素晴らしい、1−0。めっちゃうれしい」

 勝った試合では必ずと言っていいほど最初に「日本語」が飛び出すのは、「ともに戦ってくれたサポーターに早く感謝の気持ちを伝えたい」という思いから。それが決して流暢な日本語ではなくとも、彼の思いは確かに届いているはずだ。この日の決勝ゴールと同様に。

「今日、スタジアムにサポーター、久しぶり。テレビで応援、サポーターのみなさん、ありがとうございます」

 もっとも、ガンバが置かれている状況はまだまだ厳しい。この先、中2〜3日での夏場の14連戦は想像を絶する過酷さを極めることだろう。それでも、パトリックの言葉に見る、選手それぞれが胸に宿す『思い』は、きっとたくさんの歓喜を生む力になると信じている。