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有事の株式市場の暴落局面、お金を避難させる先には何がある?iDeCoとつみたてNISAの場合は?

高橋成壽お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA
株価下落のイメージです。(提供:イメージマート)

ロシア軍のウクライナ侵攻により世界の株式市場で株価が下落しています。日本では日経平均株価にTOPIXの他にも、アメリカではNYダウ、S&P500など好調だった株式指数まで広がっています。株価が下落する局面では、株価の値動きと相関関係の低い値動きや株価と反対の値動きをする投資対象に人気が集まります。具体的にはどのようなお金の避難先が考えられるのでしょう。

株式と相関関係の低い投資先として、かつては債券がありました。しかし、最近は株価と債券は仲良く似たような動きをすることもあり、株式投資の価格下落リスクを回避する投資先としては心もとない状態です。ロシアのウクライナ侵攻は、有事といわれる状態です。有事の金(ゴールド)という言葉もある通り、資金避難先の一つは金が考えられます。他にもあるのでしょうか。

■金(ゴールド)関連の投資商品

金は世界中で換金ができ、燃えて無くなることもないため、古くから財産的な価値を有していました。地球上で採掘できる量が限られており、希少価値があります。また採掘に費用がかかるため、供給過剰による価格下落の可能性も少ない貴金属です。類似の貴金属では銀とプラチナがあります。今回の有事で、金価格は上昇傾向、銀相場はそれほど上下せず、プラチナ相場は上昇傾向にあります。

金は直接貴金属会社から購入することもできますが、一時的な投資資金の避難先として考えるなら、金融商品が良さそうです。なお、金の売買で利益が出た場合は、譲渡所得として所得税が課税されます。税率は、給与所得などとの合算となるため高所得者ほど税率がたく不利、低所得者、無所得者であれば相対的に税率が低く有利になります。

モーニングスターなどのファンド検索サイトで「金 投資信託」と検索すれば、金関連の投資商品を探すことができます。金関連の投資信託、日本国内の上場投資信託(国内ETF)、海外の上場投資信託(海外ETF)となります。

まとまった資金であれば、ETFを購入すると信託報酬が低いですが、小口の資金を投資したい場合には、投資信託を選ぶとよいでしょう。

■過去の金価格の振り返り

筆者は2001年に社会人になったタイミングで、投資の勉強のためにカナダとスイスの金貨を購入しました。当時1,000円だった価格は本稿執筆(2022年2月26日)時点で7,000円と7倍になっています。

2001年はアメリカでワールドトレードセンターの爆破テロがあり、一時的に金価格が上昇しました。2008年9月のリーマン・ショックのタイミングでも近価格は上昇しています。2020年のコロナショックでは、株価同様に金価格も下落しているため、絶対に有事には金が買われるわけではなさそうです。

■原油関連の投資先

ガソリンと灯油の価格が上昇していることから、石油製品全般の価格上昇が肌で感じられるようになってきました。投資先の一つに原油関連の商品があります。

原油の価格は株価と反対の動きをする場合がありますから、原油関連のファンドに投資するのも株価下落の対策となりそうです。

金と同様にファンド検索サイトで「原油」と検索をかければ、原油関連のファンドリストが掲出されます。原油先物ファンド、WTI原油の上場投資信託、原油インデックスファンドなどがあります。

■物価連動債

ロシア侵攻とは直接の関係は薄いかもしれませんが、ロシア情勢をきっかけに各種資源関連の価格が上昇し、コスト高によるインフレが発生する可能性もあります。そのような場合には、物価連動国債に投資をするという考えもあります。

金と同様に、ファンド検索サイトで「物価連動国債」と検索すれば、関連のファンドがリストアップされます。

■有事の円

安全な資産として有事の際に日本円が買われる場合もあります。今回もロシアによるウクライナ侵攻のタイミングで一時的に円高になりました。しかし、その後は円安に戻りつつあります。

日本に住んでいる場合は、日本円で生活していますから、為替が多少上下しても日常生活が混乱するほどの影響はなさそうです。しかし、ドル、ユーロなどから円を購入する動きがあることも、お金の流れとして覚えておくと良さそうです。

このように、株式下落の局面でも価格が上昇する投資商品や、代替商品が存在します。問題は、ウクライナ情勢がいつまで続くのか、どのくらいの影響があるのか不透明なところです。お金を避難先に投資しても、ウクライナ情勢が直ちに収束し正常な世の中に戻れば、避難した資金は一斉に、元の投資先に戻るかもしれません。

■iDeCoは投資資金の避難先がある場合も、つみたてNISAは避難先なし

iDeCoにはゴールドが投資対象のファンドが組み込まれている場合もありますが、つみたてNISAの場合はゴールドに投資するファンドはなさそうです。相場は右肩上がりの局面だけではありませんから、投資資金の避難先まで組み込まれている仕組みの方が消費者にとってはありがたいですね。

お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA

日本人が苦手なお金を裏も表も解説します。お金の情報は「誰がどんな立場から発信したのか見極める」ことが大切。寿FPコンサルティング、ライフデザインセンター代表。無料のFP相談・IFA相談マッチングサービスとして「ライフプランの窓口」「住もうよ!マイホーム」「保険チョイス」「アセマネさん」を運営。1978年生神奈川県藤沢市出身。慶応大学総合政策学部卒業後、金融関係のキャリアを経て有料FP相談を開始。東海大学では非常勤講師として実務家教員の立場から金融リテラシー向上の授業を担当。連載:会社四季報オンライン。著書:ダンナの遺産を子どもに相続させないで。メディア出演、メディア掲載多数。

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