前回、「iDeCoの節税効果がなくなる場合。退職、出産、あと1つは?」では、収入がなくなる退職、社会保障からの手当がありながら無収入とみなす産休・育休、そして住宅ローン控除で所得税・住民税を減らすことができるマイホーム購入についてお伝えしました。住宅ローン控除については初耳だった人が多いようでしたので、もう少し詳細に解説することにいたしました。

iDeCoは所得控除、住宅ローン控除は税額控除。似て非なるもの

まず、iDeCoの所得控除について。所得控除とは控除枠を設定し収入から除外することで、税金のかかる収入である「所得」を下げることができる仕組みです。社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、雑損控除、医療費控除、特定支出控除、青色申告特別控除など、所得税の計算において様々な「控除」があります。控除は課税所得を下げる効果があるため、税額を下げるため制度を通じて望ましい行動を起こすように誘導することができます。

税額控除である住宅ローン控除はどうでしょう。税額控除とは、所得に応じて算出された税額(ここでは所得税、住民税)を直接減らすことができます。税外控除は確定申告や年末調整により、収入を問わず一定額の納税額を減額します。

iDeCoは課税の繰延で将来的に所得税を払うよう先送りしているに過ぎず、実際は節税ではないのに対し、住宅ローン控除は税金を戻してくれますから真に節税と言えます。確定申告の間違いでもない限りは、戻ってきた税金を払うことなく個人の手元にお金を残すことができるのが住宅ローン控除なのです。

自分の納税額を知らない人が多いから、節税効果が薄れても気が付かない

日本で働く人は所得税の納税に源泉徴収が適用されています。源泉徴収は支払う側(勤務先)が給料額に応じて給与支払いのタイミングで、見込み納税額を天引きします。働いている人は納税額が天引きされた状態の「手取り」として給与を受け取るため、自分の所得税がいくらなのか認知する機会を失います。このことは、税金を集める側、税金を使う側には都合が良い制度とされています。

一方で、フリーランス、自営業者、一定以上の所得の会社員などは確定申告をすることで、自分の税額を目の当たりにします。会社員であっても確定申告が必要な年収は2000万円超です。年収が2000万円の人は、筆者試算ですと所得税額で371万円、住民税で158万円を支払うことになります。

一部の職業の人たちは自分で確定申告しますから、納税額に対して敏感になります。多くの人たちは源泉徴収制度で知らぬ間に納税するため納税額に対する意識が磨かれません。確定申告を税理士や会計事務所に丸投げしている人は、所得税の計算の仕組みに触れる機会が減るため、納税に対する感覚は養うことが難しいようです。

年収別の所得税額、住民税額を確認しよう

筆者がもったいないと感じているのは、iDeCoにせよ住宅ローン控除にせよ、それぞれについては調べて活用する人が増えているのに、合わせた場面になると望まぬ結果にたどり着いている人が多い現実です。

iDeCoを推進したい金融業界はiDeCoの加入者が増えて投資してもらえればよく、住宅購入を推進したい不動産業界は住宅ローン控除を活用して家を買ってもらえればいいのです。iDeCoを通じて投資をしても景気はよくなりませんが、住宅ローン控除を通じて住宅購入者が増えれば景気を支えたり盛り上げる効果があります。だからこそ、住宅ローン控除は税額控除という強力な飴(アメ)になっているのです。

家を買うならiDeCoの効果は半減しますよとか、iDeCoをやっているなら住宅ローン控除の効果は半減します、といったような余計なアドバイスは販売側はしません。したがって、世の中で両方と適用させようとして、失敗している人が多いのではないかと危惧しています。

前置きが長くなりましたが、以下年収別の税額をまとめましたので確認ください。所得税額と住民税額は、収入の受け取り方、家族構成、お住まいの自治体などいくつかの要因によって変化しますので目安としてお考えください。

パターン1:一人が働き、配偶者が専業主婦(夫)の場合

年収300万円 所得税36,100円 住民税80,800円 

年収400万円 所得税67,400円 住民税142,100円

年収500万円 所得税100,500円 住民税208,500円

年収600万円 所得税169,200円 住民税275,700円

年収700万円 所得税243,100円 住民税345,200円

年収800万円 所得税400,700円 住民税422,500円

年収900万円 所得税571,800円 住民税506,200円

年収1000万円 所得税771,300円 住民税604,000円

パターン2:夫婦で働き、二人の年収が同じ場合

各々年収250万円 世帯年収500万円 所得税42,200円×二人 住民税90,200円×二人

各々年収300万円 世帯年収600万円 所得税55,500円×二人 住民税116,300円×二人

各々年収350万円 世帯年収700万円 所得税69,700円×二人 住民税144,100円×二人

各々年収400万円 世帯年収800万円 所得税86,800円×二人 住民税177,600円×二人

各々年収450万円 世帯年収900万円 所得税105,800円×二人 住民税208,600円×二人

各々年収500万円 世帯年収1000万円 所得税139,300円×二人 住民税241,500円×二人

ここではご自身の税額の目安がわかればいいでしょう。

住宅ローン控除額を計算してみよう

住宅ローン控除は正式には住宅借入金等特別控除といいます。情報を得たい場合は国税庁の「タックスアンサー(よくある税の質問)」を確認すると良いでしょう。チャットでの相談もできますし、最寄りの税務署に電話をかけるとコールセンターに繋がり一般的な制度の質問であれば回答を得られます。※質問はできますが、アドバイスはもらえませんのでご注意ください。

一般的な住宅であれば、年末の住宅ローン残高の1%が税額控除の控除上限となります。ただ、控除額の上限があり40万円までとなっています。

住宅ローン残高3000万円:税額控除上限30万円

住宅ローン残高4000万円:税額控除上限40万円

住宅ローン残高5000万円:税額控除上限40万円

住宅ローン残高10000万円:税額控除上限40万円

認定長期優良住宅等に該当すると、税額控除の上限が年間50万円まで増加します。

住宅ローン残高3000万円:税額控除上限30万円

住宅ローン残高4000万円:税額控除上限40万円

住宅ローン残高5000万円:税額控除上限50万円

住宅ローン残高10000万円:税額控除上限50万円

住宅ローン控除を控除上限まで利用するには、年収が800万円近く必要なことがわかります。年収800万円の場合、首都圏であれば年収の8倍近い物件を購入しますので、6400万円の住宅ローンを借りたとすると、税額控除の上限である40万円か50万円に到達します。

納税額>税額控除の上限

となっており、税額控除を活用することができています。また、税額控除では納税額が0円にならないため、iDeCoを活用することでさらなる税負担の軽減が実現できます。

一方、年収500万円の場合、所得税額が10万円、住民税額が20万円となります。年収500万円の8倍である4000万円の住宅を購入し住宅ローンを借りるとどうなるでしょう。税額控除の上限である40万円には納税額が到達していません。

納税額<税額控除の上限

となっており、税額控除が余ってしまいます。この場合、住宅ローン控除の効果も半減ですし、iDeCoの節税効果に至っては所得税では効果なく、住民税で効果が出ることになります。

iDeCoを続けるか、積み立てを止めるか、これから入るかを検討しましょう。

自分の所得税額が、思っていたより少なく感じた人がいたかもしれません。そして、住宅ローン控除の上限に満たない税額の人もたくさんいると思います。

iDeCoは所得控除のため、年収が高く所得税率が高い人の方が税額軽減効果が高いです。一方住宅ローン控除は年収を問わず、一律住宅ローン年末残高の1%という計算の上、40万円または50万円という上限があります。

iDeCo加入中の方で住宅ローンを借りている人やこれから住宅を購入する人は、iDeCoの積み立てを継続するか、積み立てを停止するかを考えるとよいでしょう。これから加入しようと考えていた人は、改めてライフプランを検討しておくと良いでしょう。なお、マイホーム購入に伴い節税効果が減少する人は、選択制確定拠出年金であっても同様ですのでご注意ください。

1つの制度は簡単でも2つになると条件設定が複雑になります。皆さんの税額は収入、家族構成等によっても異なりますので、源泉徴収票と住民税の課税決定通知書を確認するところから始めましょう。税金に詳しくなって損することはありません。