Yahoo!ニュース

年金減額に備えるiDeCoとNISAの上手な使い分け方とは?

高橋成壽お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA
写真はイメージです(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

※内容に合わせてタイトルを修正しました。

厚生労働省は毎年年金額の通知を出していることをご存知でしょうか。令和3年1月の発表で、令和3年度は物価下落に伴い年金額も引き下げられることになりました。引き下げ額は0.1%です。国民年金を満額受給している人は66円下がり、月額65,075円となります。厚生年金を受給している夫婦の場合は228円下がり、月額220,496円となります。

就労期間の年収で変わる厚生年金と一律の国民年金

年金額をご覧いただいて、少なすぎて驚いた人、こんなものかと納得した人、結構もらえると安心した人など、反応は様々と思います。

まず、厚生年金は夫婦で22万円となっておりますが、専業主婦のご家庭を想定して計算しましょう。すると、夫の国民年金(老齢基礎年金)6.5万円、妻の国民年金(老齢基礎年金)6.5万円、夫の厚生年金(老齢厚生年金)9万円という内訳となります。夫婦共働きで、夫婦間の年収が同じであると仮定すれば、妻の厚生年金(老齢厚生年金)9万円が加わりますから、夫婦共働き家庭の年金受給額は31万円となります。

自営業やフリーランス、専業主婦の場合は国民年金に加入しますから、年金保険料をきっちり40年払い続けると毎月6.5万円を死ぬまで受け取れることになります。夫婦で国民年金への加入であれば、13万円が夫婦の年金額となります。

厚生年金は年金の計算が複雑です。毎月の給料に応じて年金保険料が異なります。同じ給料の人でも、交通費の金額や会社で加入する確定拠出年金の積立額などにより、個々の状況に合わせて変化します。給料は勤務先や働いた時代背景によっても変わりますから、平均的にいくら受け取れるという考えは馴染みません。自分の収入でいくらの年金が受け取れるかは、毎年のねんきん定期便に記載があります。気になる人は現時点での年金受取額を確認してみましょう。

都市部などにお住まいで年収の高い人は、年金保険料の計算上、給与の支給額が63.5万円を超える人は、年金額が頭打ちになることになっています。年俸制で考えると762万円を超えると、年収1000万円でも年収1億円でも年金額は変わりません。年金を受け取ることを前提に考えると、年収750万円くらいの人は老後の生活がしやすいかもしれません。

手取りを一定水準保障する公的年金制度

年金制度は今後どうなっていくのかをお伝えいたします。厚生労働省の「2019年財政検証の資料」によると、2019年時点での公的年金は専業主婦家庭の夫婦で22万円の受け取りとなっています。22万円は働いている男性の平均手取り収入である35.7万円に対して61.7%相当となります。この数値を所得代替率といいます。現役男性の手取りの6割相当が年金額であるということです。

現時点で6割相当である所得代替率は今後5割に低下することがほぼ決まっています。(前出の財政再検証による)つまり、給与水準が今と同程度であった場合は、17.9万円が平均的な年金額になります。

このような状況ですから、年金は破綻しません。支払いを少なくして継続すると考えることができます。人によっては、このような状態を破綻と言うのではないかと考えるでしょう。確かに、そう言われても否定はできません。ただ、破綻というのは支払いが停止されたり、システム自体がなくなってしまうことだと考えれば、状況に応じて修正されていると認識された方がいいでしょう。

投資優遇制度の上手な選び方

現役時代の手取りに対する所得代替率が5割に落ちるということは、手取りを全額支出している人は、老後の生活は苦しいものとなります。収入が半減しますから当然と言えます。このような状況ですと手元に貯蓄があっても枯渇してしまうでしょうし、そもそも貯蓄ができないのであれば、老後は年金と生活保護を受給しての暮らしとなる可能性もあります。

手取りに対していくら貯めるべきかと問われたら、25%と考えることができます。手取り100に対して、25を貯蓄に回して、75を支出します。その場合、25は老後に積み立てられます。

老後の生活水準は75で足りますから、年金額50では足りませんが、不足する25は貯蓄で賄うことができます。25も貯められない人は20でも15でも構いませんので貯蓄し手元に残ったお金を投資に回すことで将来の生活を維持できる可能性があります。

現在日本では個人向けの投資優遇制度としてiDeCoと一般NISA、つみたてNISAがあります。どれを使ったらいいのかわからない人もいるでしょうから、筆者の主観で説明します。

・まったくお金が貯められない人

→そもそも投資をしてはいけません。収入を増やすか支出を減らすようにしましょう。

・毎月手元にお金が残る人(月数万円)

→iDeCoかつみたてNISAをおすすめします。

・毎月かなりお金が残る人(月10万円以上)

→一般NISAをおすすめします。

・手元にまとまったお金がある(500万円以上)

→一般NISAをおすすめします。

手元にまとまったお金がある人は、これから積み立てる必要はありません。むしろためている時間がもったいないですから、一般NISAを使っての投資がよいでしょう。

iDeCoとつみたてNISAの比較

見たところ似ている仕組みです。選び方はお金のゆとりに左右されます。

・投資したお金は絶対に使わない

→iDeCo

・投資するがお金は必要に応じて使うかもしれない

→つみたてNISA

iDeCoは老後の受け取りか死亡時の遺族受け取りが選択肢となります。従って、積み立て途中で家を買ったり、子供の教育資金にお金を流用したいと考える場合は不適です。つみたてNISAであれば途中の換金が可能です。

iDeCoは運用期間中の売買益が非課税となりますので、短期で価格が上昇しそうな銘柄への投資でも問題ありません。つみたてNISAは複数回売買すると非課税枠がなくなりますので、一度購入した商品は売らずにひたすら保有し続けることになります。となると、iDeCoとつみたてNISAは投資戦略が異なります。

投資商品の選び方については別の機会にお伝えします。今回は、老後の年金対策を検討する場合の、iDeCo、一般NISA、つみたてNISAの選び方をお伝えいたしました。

お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA

日本人が苦手なお金を裏も表も解説します。お金の情報は「誰がどんな立場から発信したのか見極める」ことが大切。寿FPコンサルティング、ライフデザインセンター代表。無料のFP相談・IFA相談マッチングサービスとして「ライフプランの窓口」「住もうよ!マイホーム」「保険チョイス」「アセマネさん」を運営。1978年生神奈川県藤沢市出身。慶応大学総合政策学部卒業後、金融関係のキャリアを経て有料FP相談を開始。東海大学では非常勤講師として実務家教員の立場から金融リテラシー向上の授業を担当。連載:会社四季報オンライン。著書:ダンナの遺産を子どもに相続させないで。メディア出演、メディア掲載多数。

高橋成壽の最近の記事