金融庁や政府が支援する国策投資優遇制度として認知されているNISA制度。NISAは3つの制度に分かれています。一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISA。最近は相談者からつみたてNISAの相談が増えていますが、実はつみたてNISAを選ばない方がいい場合もあります。どのような場合か紹介します。※2021年5月10日一部加筆しました。

つみたてNISAは20代、30代、40代向け?

金融庁が公表している「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(2020年9月末時点)」によると、NISAの口座の開設者は右肩上がりとなっています。2020年6月末と比べると、一般NISAは10万口座増の1210万口座、つみたてNISAは30万口座増の275万口座、ジュニアNISAは4万口座増の42万口座となっています。

つみたてNISAの年代別口座開設状況は、20代17.5%、30代26.8%、40代25.4%、50代17.5%、60代8.7%、70代3.6%、80代0.6%です。一般NISAは20代3.8%、30代10.3%、40代15.2%、50代17.3%、60代21.3%、70代21.5%、80代10.6%です。

一般NISAはシニア世代に浸透し、つみたてNISAは現役世代の開設が多いことがわかります。これは、もともとお金と時間にゆとりのあるシニア世代は証券投資の経験があり、「どうせ投資するなら非課税枠のある一般NISA口座を使おう」、と考えたためでしょう。筆者のお客様では高所得世帯を中心に、つみたてNISAがスタートする以前から投資している方は、一般NISA口座を活用して投資しています。

今、若い世代を中心にiDeCoにするか、つみたてNISAにするかという議論があるようです。それぞれ一長一短ありますが、とりあえず投資を始めてみたいという人は、投資対象が投資信託以外も選べる一般NISAも検討したほうがいいでしょう。一般NISAで株式を購入して配当金を非課税で受け取るだけでも効果があります。株式は安いものであれば2万円程度で買うことができます。

資金にゆとりのある人は、20年もコツコツ時間をかけて積み立てる必要性は薄いですし、50代以降の場合は、つみたてNISAの積立期間は長過ぎるように思えます。一般NISAで十分ではないでしょうか。

つみたてNISA(非課税)と一括投資(課税あり)の比較

インターネットの投資関係の情報を見ていると、投資するならiDeCoかつみたてNISA、インデックス投資を選ぼうという主張が多く見受けられます。つみたてNISAの弱点は後述しますが、そもそも利益が出ることを前提となっているように見えることが気になっています。またインデックス投資にコツコツ投資し続ければ成功するという風潮も気がかりです。

もし手元に投資資金が800万円ある場合、非課税のつみたてNISAで20年分散して積み立てた場合と、課税される一般口座で一括投資したらどちらが得だと思いますか?答えは「利回りによる」となります。東京証券取引所の上場企業の株式を購入した場合の配当利回りは一般的な銘柄で2%、少し高めの配当銘柄で5%、高配当銘柄で7%だとします。

800万円を投資した場合、利回り2%、5%、7%の比較(単利計算)

(1)2%で運用

800万円+800万円×1.6%(税引き後)×20年=1056万円

(2)5%で運用

800万円+800万円×4.0%(税引き後)×20年=1440万円

(3)7%で運用

800万円+800万円×5.6%(税引き後)×20年=1696万円

毎年40万円を20年間積み立てた場合、年平均利回り2%、5%、7%の比較(複利計算)

(4)2%で複利運用

40万円×24.297(年金終価係数)=9,718,800円

のため、一括投資で課税された場合の方が841,200円多いです。

(5)5%で複利運用

40万円×33.066(年金終価係数)=13,226,400円

のため、一括投資で課税された場合の方が1,173,600円多いです。

(6)7%で複利運用

40万円×403995(年金終価係数)=16,398,000円

のため、一括投資で課税された場合の方が562,000円多いです。

同じ利回りで比較すると、一括投資の方が課税後にもかかわらず有利だということが確認できます。これが、コツコツ積み立てることの弊害です。時間がかかりすぎるのです。すでにまとまった資金がある人は、わざわざつみたて投資をする必要がありません。お金持ちからすると、積み立てている時間がもったいないわけです。共働き世帯などで既に資金が溜まっている場合、つみたてNISAにこだわる必要がなければ、一般NISAにこだわる必要もありません。

もちろん800万円も一括で投資できない人はコツコツ積立投資を選ぶしか選択肢がありません。しかし資金に余裕のある人達は積立投資は選択肢の1つでしかありません。時間こそ有限で取り返せない資産です。

つみたてNISAの弱点はスイッチングができないこと

最後に、つみたてNISA最大の弱点についてお伝えします。それは、スイッチングができないこと。スイッチングとは企業型確定拠出年金やiDeCoなど仕組みでは、過去に購入した商品を売って別の商品を買うことができます。しかし、つみたてNISAはスイッチングが出来ないのと、過去に購入した商品を売却すればその時点で、売却した分の非課税枠を使うことになります。資産配分を変更できないということは、投資家目線で考えると非常に不便です。

例えば、20年後にリーマン・ショック級の値下がり、コロナショック級の値下がりがあるかも知れません。投資の考え方として、年齢が上昇するごとにリスクの高い商品を減らし、安全性を高めた投資先にする、というものがあります。しかし、つみたてNISAはそれができません。市場の価格が高すぎると感じて商品を売却すれば、つみたてNISAの効果は消滅します。

そうかといって、20年ギリギリまで積極的な運用を継続していいものか、20年後にならなければわかりません。

いかがでしょうか。前々回、iDeCoが駄目と言ってみたり、今度はつみたてNISAが駄目と言っているように感じるかも知れません。大切なことは、世の中の表面的な情報だけをみて投資を決断しないこと。iDeCoかNISAか考える以前に、他の手段はないのか、そもそも投資できる余力があるのか、より良い方法はないのかを考えることが私達には大切です。

次回は長期・分散・積立投資の理想と現実について解説予定です。