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中国、UAEと初の空軍合同訓練を8月に実施へ 日本の新たな"合従連衡"の動きに対抗か

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
中国軍の訓練用戦闘機「L-15」(写真:ロイター/アフロ)

中国国防省は7月31日、中国空軍がアラブ首長国連邦(UAE)の空軍と8月に中国の新疆ウイグル自治区で合同訓練を実施すると発表した。両国空軍が合同軍事訓練を実施するのは初めて。

航空自衛隊も昨年9月以降、ドイツとインド、フランスの空軍とそれぞれ日本国内で初めてとなる共同訓練を既に実施した。8月2日からはイタリア空軍と初の共同訓練を石川県の小松基地で行う予定だ。

中国空軍とUAEの初の空軍合同訓練は、中国を念頭に置いた日本の"合従連衡"の動きに対抗するものとみられる。

●中国メディア「中東諸国との軍事交流を強化するスタート」

中国国防省は31日、UAEと合意した年次計画などに基づき、両国空軍が8月に新疆ウイグル自治区で初の空軍合同訓練「ファルコン・シールド2023」を実施すると発表した。そして、「両国軍間の実務交流と協力を深め、理解と相互信頼を高めることが目的」と説明した。

中国共産党系の英字ニュース「グローバルタイムズ」も同日、中国空軍専門家の発言を引用し、「中東諸国との軍事交流と協力を強化する良いスタート」と評価した。

中国は今年2月、国内で開発された訓練用戦闘機「L-15」をUAEに輸出する契約が成立したと発表していた。UAE国防省はL-15を12機購入する予定で、将来的には同型機を36機追加購入する可能性も示した。L-15はJL-10(教練10型)の名前でも知られる。

UAEは1971年にイギリスから独立しての建国以来、伝統的な親米国として知られてきた。アメリカ軍も駐留している。しかし、近年はアメリカがシェールガス革命でこれ以上中東の石油に依存する必要がなくなり、中東での存在感を弱めている。その間隙を縫って、中東地域での影響力を強化しているのが世界最大の原油輸入国である中国となっている。

●日本は独印仏伊と初の戦闘機訓練

一方、航空自衛隊も、日本周辺で軍事活動を活発化させている中国軍を念頭に、各国との連携を強化している。初の戦闘機合同訓練として、ドイツ軍とは2022年9月、インド軍とは今年1月、フランス軍とは7月にそれぞれ実施した。

イタリア空軍とは8月2日から10日まで小松基地とその周辺空域で共同訓練を行う予定だ。両国から参加する戦闘機としては、空自から「F-15」4機、イタリア空軍からステルス戦闘機「F-35A」4機がそれぞれ参加する。防衛省は2025年度に「F-35A」4機を小松基地に配備する計画を立てており、近い将来を強く意識した各種戦術訓練となる。

日本とイタリアはイギリスとともに次期戦闘機の共同開発を進めている。昨年12月に発表された日英伊3カ国首脳声明によると、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」を擁護し、「自由、民主主義、人権、法の支配といった共通の価値に基づく」同志国として日英伊は連携を深めている。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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