中国海軍の軍艦4隻が8月末にアラスカ沖のアメリカの排他的経済水域(EEZ)内を航行していたことがわかった。アメリカ国防総省(ペンタゴン)傘下の国防総省画像配信サービス(DVIDS)のホームページに関連の写真が掲載された。

米軍が台湾海峡や南シナ海で航行の自由作戦を展開する中、アラスカ沖への中国軍艦の派遣はそれへの対抗措置だとみられる。インド太平洋地域の海洋覇権をめぐる米中の争いが激しくなっている。

英軍事週刊誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーによると、この4隻は中国人民解放軍海軍の北海艦隊所属の101海上編隊。具体的にはレンハイ級ミサイル駆逐艦(艦番号101)、ルーヤンⅢ級ミサイル駆逐艦(119)、フチ級補給艦(903)、ドンディアオ級情報収集艦(799)になっている。

統合幕僚監部が8月25日に発表した報道発表資料を筆者がキャプチャー
統合幕僚監部が8月25日に発表した報道発表資料を筆者がキャプチャー

4隻はアリューシャン列島北方のベーリング海公海で航行し、8月30日にはアメリカ沿岸警備隊によってアラスカ沖のアメリカEEZ内を航行しているのが確認された。アメリカの領海への侵入はなかった。

海上自衛隊はこれらの4隻がそれに先立つ8月22日から24日にかけて、対馬海峡と宗谷海峡を通過したことを確認している。

また、防衛省は9月15日、中国海軍の艦艇4隻が11日に大隅海峡を航行し、太平洋から東シナ海に入ったのを確認したと発表したが、これらの4隻は艦番号からアラスカ沖を航行していた艦艇と同じだったとみられる。8月から9月はちょうどイギリス空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群「CSG21」が日本周辺で訓練中の時期でもあり、その情報収集の狙いもあったとみられる。

●中国海軍、2015年にはアラスカ沖で初の領海侵入

中国海軍の軍艦がアラスカ沖に出現したのは初めてではない。オバマ政権時代の2015年9月には中国海軍の艦艇5隻がアリューシャン列島を通過した際に、米国の領海に初めて侵入した。ちょうどオバマ大統領がアラスカ州を訪問中だったこともあり、米中間で緊張がぐっと高まった。中国がオバマ政権を試したとの見方が有力だ。

中国共産党系環球時報の英文版グローバルタイムズは9月14日、今回のアラスカ沖での航行によって、中国海軍が遠洋航海能力や、「航行の自由」の名の下で中国の玄関先で軍事的挑発を繰り返すアメリカへの対抗措置を見せつけたと報じた

しかし、ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーでは、「中国艦艇のアラスカ沖での航海は、南シナ海と東シナ海での米軍プレゼンスに反対する中国の主張を弱体化させるほか、終息の兆しがみえないアメリカの航行の自由作戦への中国側のフラストレーションの高まりを反映している可能性がある」と分析している。

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