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なぜ大学生は「仮想通貨」投資の儲け話に騙されるのか、情報商材トラブルも多発する背景と対策とは

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
(写真:イメージマート)

国民生活センターの「若者向け注意喚起シリーズ」をご存知でしょうか。全国の消費生活センターに寄せられた相談の中で、10〜20代の若者に増えている相談を紹介、注意喚起するシリーズです。その中の一つに、「情報商材や仮想通貨」のトラブルがあります。

消費生活センターに寄せられた相談件数を見ると、情報商材・仮想通貨それぞれ、右肩上がりに増えています。たとえば以下のような相談が寄せられています。

「アフィリエイトの情報商材を購入して指示通りに作業したがもうからず、事業者と連絡が取れなくなった」(20代女性)

「学生ローンで借金をして暗号資産の投資契約をしたが、説明と違ってまったく配当がない」(20代女性)

国民生活センターの若者向け注意喚起シリーズより
国民生活センターの若者向け注意喚起シリーズより

2021年11月、金融商品取引法違反の疑いで、投資会社ジュビリーグループ役員等が逮捕されました。最新AIを使って仮想通貨を運用することで高い利ざやが生まれるとうたい、最高月利20%をうたって無登録で集金したのです。その結果、10万件、650億円を集めたといいます。

この事件でも、投資の知識のない若者が多く狙われており、学生ローンで100万円以上の借金を背負ってしまった学生もいるそうです。一口10万円からと手軽で始めやすく、一度儲けさせてから大金を投資させる手口で多くの学生が投資してしまいました。彼らはSNSの投稿で儲かっている印象を与え、SNSで知り合った若者対象に勧誘していたのです。

事実、大学生向けの講義や講演でも、「情報商材で自分が/友だちが騙された」「仮想通貨の投資で○十万失った」などの声を多く聞いており、被害が広がっていることを感じ、懸念を抱いています。なぜ大学生の間でこのようなトラブルが増えているのでしょうか。

投資に興味関心が高い学生たち

この背景には、投資に興味を持つ学生が多いという実態があります。

SMBSコンシューマファイナンスの15〜19歳の学生を対象とした「10代の金銭感覚についての意識調査2021」(2021年11月)によると、投資をしている人の割合は男性では10.8%と、女性(5.8%)と比べて5.0ポイント高くなりました。また、投資に前向きな人の割合は、大学生等では48.1%と、高校生(41.3%)と比べて6.8ポイント高くなっています。投資に前向きな大学生の割合は、前回調査の37.7%から10.4ポイント、大幅上昇しています

投資をしている人に投資をしているものを聞いたところ、「株式」(33.7%)が最多となり、次いで「仮想通貨」(16.9%)、「FX」(13.3%)、「投資信託」(12.0%)、「スニーカー」(10.8%)などとなりました。

また、投資をしたい人に投資をしたいと思うものを聞いたところ、「株式」(65.8%)が圧倒的に多くなり、次いで、「FX」(26.9%)、「仮想通貨」(17.9%)、「投資信託」(16.2%)、「債券(国債など)」(12.9%)などとなっています。仮想通貨が学生に身近なものであることがよく分かる結果です。

大学生を対象に講義や講演中でとったアンケートでも、やはり投資に興味がある学生が多くいました。投資をしている、興味があるという声も多い一方で、冒頭でご紹介したようにお金を騙し取られている例は少なくないのです。

仮想通貨に賭けたい環境に置かれた学生たち

このように投資に興味を持つ学生が増えているのには、コロナ禍で家計が苦しくなり、仕送りやバイト代などが減っていることも影響しているでしょう。全国大学生協連の「第56回学生生活実態調査」(2021年3月)などを見ても、学生の懐事情が苦しいことは明らかです。

調査・データ分析会社Engine Insightsの調査によると、Z世代の59%とミレニアル世代の46%は、仮想通貨に投資することで裕福になれると考えているといいます。

今年も仮想通貨の値上がりのニュースは多く聞かれ、デジタルであることに抵抗がない世代が、現在や将来の経済事情に関して不安に駆られ、このような投資話に一攫千金を狙って興味関心を持つのはまったく不思議なことではありません。

大学生はクレジットカードが作れ、学生ローンなど借金もできます。さらに前述のように、収入や仕送りが減り、金儲けに興味関心を抱かざるを得ない環境に置かれてもいます。しかし実際は、金融知識に乏しく、経験や知識などにも乏しく、騙される例が少なくないのです。一人暮らしなどをしていれば、家族などに相談もしづらいことも、被害に拍車をかけています。

将来のため、投資について学ぶことは重要です。しかし、極端に利回りがいいおいしい話には裏があります。仮想通貨や情報商材など、仕組みがよくわからない儲け話にはよく注意し、投資前に保護者等の信頼できる大人に相談するようにしてください。投資をする際にも、少なくとも借金をしてまで手を出さないようにすることが大切です。

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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