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冬休みに増える子どものネット上トラブル 対策は? いじめや自画撮り被害、高額課金も #こどもをまもる

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
(写真:イメージマート)

冬休みなどの長期休暇には、子どものSNSやゲーム関連のトラブルが増える傾向にあります。ネットの利用時間が増え、保護者の目が行き届かなくなることで、トラブルが深刻化する可能性に注意が必要です。

冬休みに特に注意が必要なポイントと、保護者ができる対策について、ご紹介します。

長期休暇で注意したいネットいじめと自殺願望

文部科学省によると、昨年度のいじめの件数は61万件を超えて、過去最多となりました。SNSなどインターネットを使ったいじめの件数も、2万1900件と前年から約3000件増えて最多でした。

対面のいじめと違い、ネットいじめは長期休暇でも止むことはありません。いつでもどこでもいじめられ続け、見られたくないことを拡散されたり、投稿したものが残り続けたりするため、子どもが受けるダメージはとても大きなものです。

直接的な誹謗中傷ではなくても、「あけおめLINE」が自分にだけ届かないとか、仲間の集合写真の投稿を見て自分だけ集まりに呼ばれなかったことを知り、仲間はずれにされたことに傷つくこともあります。

休み明けが近づくと、学校に行きたくないあまり、TwitterなどのSNSで「死にたい」「家出したい」などと弱音を吐く子もいます。このような投稿をする子は、孤独で居場所がないことがほとんどです。そのため、ネットで知り合った相手に優しくされると信用して心を許してしまいがちです。

この心理を悪用されることが、過去の座間市9遺体事件や、横浜市の女子中学生自殺幇助事件などにもつながっています。子どもたちは「相談にのるよ」「一緒に死のう」など、彼らが言ってほしい言葉に騙され、被害にあっているのです。

普段より子どもと過ごす時間が長い長期休暇中は、保護者が子どもの変化に気づくチャンスです。学校での様子、先生や友だちの話を聞いたり、嫌なことや困ったことはないか聞いたりしてみましょう。子どものLINEのタイムラインやTwitter、Instagramなどの投稿や、やり取りを確認したり、子どもが親しくしている友人やその保護者などとコンタクトを取ってみたりするのもいいでしょう。

大切なのは、「何があってもあなたの味方だから、どんなことでも相談してほしい」というメッセージを子どもに伝えること。普段から相談される関係性を築いておき、話しやすい場を作り、コミュニケーションをとるようにしましょう。

ただし、悩みによっては身近な人には言いづらいこともあります。SNSで相談にのってくれる相談機関もあるので、子どもに利用させるのもおすすめです。SNSを利用し始めた時に、登録させておくと安心です。

自画撮り被害も―SNSで知り合った人とのやり取りに注意

警察庁の「令和3年における少年非行、児童虐待および子どもの性被害の状況」によると、SNSに起因する事犯の被害児童数は、2021年で「1812人」となっています。子どもがSNSやゲームで知らない人とつながり、やり取りする機会が増えた結果、先程の事件を含め、様々な被害につながっているといえます。

警察庁の発表によると、子どもの性被害でもっとも多いのは「自画撮り被害」です。自画撮り被害とは、子どもが相手に騙されたり脅されたりして、自分の裸の撮影をさせられた上で、SNSなどで写真や動画を送らされる被害のことです。

多いのは、SNS経由で「グルーミング」という手口で信頼させたり、好意を抱かせたりした後、裸の写真を送らせる手口です。グルーミングとは、子どもに性的な欲求を抱く加害者が、巧みに子どもの心をつかんで関係を構築することを指します。

加害者と知り合うきっかけとなっているTwitter、Instagram、TikTokなど、多くのSNSは、利用規約で13歳以上が対象となっています。年齢上は対象外なのに、利用している小学生も少なくありません。利用していけないわけではありませんが、利用させるのであれば、必ず保護者による見守りが必要です。

SNSを利用させる前には、子どもが「信頼」している相手であっても裸の写真は絶対に送らないこと、小学生などの場合は知らない人とはやり取りしない、会わないことを約束させるようにしましょう。

なお、最近は未成年がSNS経由で知り合った人と会うことは珍しいことではありません。隠れて会われると被害が大きくなる可能性があるため、中学生以上の場合は、「事件も起きていて心配だから、できたら知らない人とは会わないでほしい。でも、それでもどうしても会いたくなったら、必ず相談してほしい」と伝えるといいのではないでしょうか。

オンラインゲームの高額課金に要注意!

今年の夏休み明け、国民生活センターから子どものオンラインゲームにおける高額課金に関する相談の急増が発表されました。長期休暇で時間ができ、保護者の目が行き届かなくなった結果、知らぬ間に高額課金をされていたというわけです。

コロナ禍でもあり、子どものネットやゲームの利用時間は伸びています。全国一斉休校をきっかけに利用するようになった子どもも多く、友だち同士のコミュニケーションにも利用されています。その結果、はまりすぎて子どもが勝手に高額課金してしまうトラブルが増えているのです。中には小学生が何十万円も使い込んだ例もあります。

課金されても、保護者の同意なしでの未成年者がした課金は未成年者契約取消権で取り返せる可能性もありますが、すべてのサービスが対応してくれるとは限りません。子どもによる高額課金は、保護者の見守りや、決済・課金を制限するペアレンタルコントロール機能で防ぐなど、早期発見することが大切です。

知らぬ間のゲームの高額課金を防ぐ3ヵ条

そもそもオンラインゲームは、ハマるように、お金を注ぎ込みたくなるようにできています。プリペイドカード払いを始め様々な課金方法を設けており、クレジットカードがなくても業者が課金できてしまいます。禁止しても、保護者に隠れて高額課金されてしまう例も少なくありません。

大人でもハマりすぎて自ら高額課金してしまう人もいます。まして、自制心が低い子どものうちは、約束や見守りが必須ということを忘れないでください。

知らぬ間に高額課金されることを防ぐためには、以下の3ヵ条が大切です。

①現金やクレジットカードは保護者側でしっかり管理。カードの利用明細書、アプリストアからの領収メールも必ず確認

保護者の財布から現金やクレジットカードなどを抜いて使った例もあります。子どもの手に届くところに放置せず、しっかりと管理を。パスワードは子どものわからないものにしましょう。

無断課金はなるべく早く気づくことが大切です。カードの利用明細書やアプリストアからの領収メールは毎回確認しましょう。

②子どもに利用させるゲームの課金の仕組み、課金の方法を知る

子どもが利用するゲームでの課金はどんな仕組みなのか、支払い方法などについてもあらかじめ調べておきましょう。

③課金されてもいい額について決め、お金がかかるゲームをしたい時は子どもから相談させよう。課金制限をした端末を渡しても

あらかじめゲームにお金を使ってもいいかどうか、課金されてもいい額について子どもと話し合って決めておきましょう。

ただし、完全に禁止してしまうと隠れてゲームをして課金されてしまうことも。「うちではお金を使うゲームはしない約束だけれど、もしどうしてもしたくなったら相談してね」というように、子どもと話しておくと安心です。実際に子どもがゲームを始めてみて気持ちが変わることもあるので、その都度話し合いながらルールを変えていくといいでしょう。

iPhoneやiPadなどのiOS端末、Android端末では課金制限設定ができます。事前に保護者が設定した端末を渡して利用させたり、家族共有のゲーム機などではクレジットカードが紐付いたアカウントからは必ずログアウトしておいたりすることも大切です。

毎年、長期休暇明けはこのような相談が急増します。学校に相談が持ち込まれることもあります。トラブルが起きてから後悔することがないよう、しっかりと対策をして安全に楽しく過ごすようにしてください。

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「#こどもをまもる」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の1つです。

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■特集ページ「子どもの安全」(Yahoo!ニュース):https://news.yahoo.co.jp/pages/20221216

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

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成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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