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わが子の写真が児童ポルノに?「AI時代」のSNS投稿のリスクとは #こどもをまもる

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
(提供:イメージマート)

夏休みになり、家族で旅行やお出かけする機会が増えています。子どものいい笑顔や、楽しい家族の思い出がたくさん撮れたという方も多いでしょう。

せっかく撮れた写真はSNSに投稿したくなりますが、子どもの写真の公開にはどのようなリスクがあるのでしょうか。公開する場合の適切な公開の仕方についても考えていきましょう。

デジタルタトゥーが親子の訴訟問題にも

投稿のリスクは主に2つあります。子どものデジタルタトゥーにつながるリスクと、個人情報流出で子どもの身に危険が及ぶリスクです。

小さな子どもの写真はとてもかわいいもの。しかし裸の写真などは、成長した子ども本人が見たら「恥ずかしい」など不快に思う可能性があります。オーストリアの18歳の女の子は、自分のトイレトレーニング中の写真やおむつ替えの写真が公開されていることを恥と感じ、Facebookに掲載したまま削除に応じなかった両親を訴えました。

このような写真が友達に見られていじめにつながった例もあります。それどころか、裸の写真が小児性愛者の集まるサイトに掲載され、児童ポルノとして扱われてしまった例まであります。そのような場に掲載されてしまったら、もう完全に消すことはできません。

裸の写真は絶対に撮影したり、投稿したりしないこと。将来子どもが恥ずかしいと思う可能性がある写真も、投稿しないようにしましょう。写真自体には問題がなくても悪用される可能性もあるので、公開する場合でも範囲を制限するとなお安心です。

AI時代に起きうるデジタルタトゥーのリスク

生成系AIが話題です。生成系AIとは、文章や画像などの新しいコンテンツを生成できる人工知能のこと。ChatGPTやGoogle社のBard、Microsoft社のBingなどの総合型の他、Stable DiffusionやMidjourneyなどのテキストから画像が生成できる画像生成AIもあります。

生成AIを使えば、裸の写真の顔部分を特定の人物の顔と入れ替えたディープフェイク画像や画像も簡単に作成できます。2020年には、アダルトビデオの出演者の顔を芸能人とすり替えた動画をアップロードして有料動画に投稿していた男等が、名誉毀損罪などで逮捕されています。

実際、生成系AIで作り出したと思われる実物と見分けがつかない児童ポルノコンテンツが取り引きされており、日本のSNSを通じて提供されていた例もあります。児童ポルノ関連フォーラムに参加していたユーザーを対象に調査したところ、約8割がAIで児童ポルノコンテンツを生成したことがある、またはするつもりと回答したという報道もあります 。AI児童ポルノコンテンツが蔓延することで、実在の児童ポルノ被害者が判別できなくなるリスクが指摘されています。

最近、ドイツテレコムのCMが話題となりました。テーマとなっていたのは、子どもの写真をSNSに公開するリスクです。前述のように、AIによって子どもの写真から児童ポルノコンテンツを生成することは容易です。つまり、AIによって裸の写真の顔部分を差し替えられ、 児童ポルノ写真が作成されてしまえば、本物の写真と見分けがつかずにデジタルタトゥーになる可能性もあるのです。

個人情報流出で子どもの身に危険が及ぶリスク

2つ目は、子どもの身に危険が及ぶリスクです。

SNSの投稿には、多くの個人情報が含まれています。投稿によっては学校や園名、自宅の場所などがわかってしまうこともあります。自宅や学校、園などが特定されると、待ち伏せされたり、誘拐などにつながるリスクがあります。子どもの名前を公開してしまうと、名前と個人情報が紐づいてしまいます。

学校名や園名などは出さず、自宅の周囲1、2キロ四方以内の写真は掲載しないようにしましょう。最寄りの駅名や路線、行きつけの店などの固有名詞を掲載するだけでも居住地区は特定できてしまうので、取り扱いに注意してください。不特定多数が見る場では子どもの本名は出さず、ニックネームや「息子」「娘」などの呼び方がいいかもしれません。

SNS投稿で孤独から救われる面も

SNSで子どもの写真を公開する心理とはどのようなものなのでしょうか。ピクスタの「子ども写真のSNS投稿に関するアンケート」(2022年12月 )を見てみましょう。

子どもの写真をSNSに投稿する理由について聞いたところ、約半数が「家族や友達に近況を伝えたい(54.5%)」、「子どもの成長の記録として残したい(52.1%)」と回答。3人に1人が「同じ年頃の子どもを持つママ友・パパ友と繋がりたい(28.8%)」と回答しました。

一方、「あなたやあなたの周りで、お子さんの写真をSNSに投稿してトラブルになったことはありますか?」と聞くと、約4割が「ある」と回答。具体的にどのようなトラブルだったかについて聞くと、「知人のお子さんも写っており、苦情を受けた(36%)」が最多に。次に「個人情報を特定された(30%)」となりました。

子どもの写真や動画を投稿しているSNSの公開範囲については、「一般公開(オープンアカウント)」は41.0%で、「友達や家族・知人のみ」は49.5%でした。

オープンアカウントと限定公開アカウントのそれぞれに、子どもの写真をSNSに投稿してよかったことを聞くと、オープンアカウントで最も多かった回答は「投稿を通して他人から共感や助言をもらえるので、孤独にならずに済んだ(52.1%)」。続いて、「SNSを通して新しくママ友・パパ友と繋がることができた(47.9%)」、「子どもの写真を褒めてもらえた(47.9%)」などでした。

限定公開アカウントで最も多かった回答は「家族や友達に近況を伝えることができた(62.3%)」であり、続いて「子どもの成長の記録を知り合いと共有できる(32.1%)」、「子どもの写真を褒めてもらえた(30.6%)」という結果でした。約2割が「投稿を通して限定した知り合いから共感や助言をもらえるので、孤独にならずに済んだ(19.8%)」となりました。

自分の承認欲求を満たしたり、収入につなげるためにSNSに子どもの写真を投稿するのは問題です。しかし実際は、子育てで追い詰められて孤独に陥り、パパ友ママ友とつながりたい、子育てのための情報がほしいという方は多いのです。

公開範囲制限や顔をスタンプで隠して公開を

SNSでは、多くの場合に投稿の公開範囲を制限することができます。特に子どもの写真を投稿する場合は、生成AIでの悪用を防ぐ意味でも友だち限定で公開したり、鍵をかけたアカウントで公開するなど、公開範囲をよく考えて投稿するようにしましょう。ただし鍵をかけていても、子どものデジタルタトゥーになるような写真は決して投稿しないようにしましょう。

公開アカウントで他の人とつながりたい場合でも、子どもの顔をすべて載せる必要はありません。後ろ姿や横顔、小さな手足やほっぺたなどの写真にしたり、顔をスタンプなどで隠した写真などもおすすめです。顔を公開する場合でも、成長により大人の顔に近づく前の乳幼児期に限定するようにしましょう。

友だちと一緒に笑顔でいる写真なども公開したくなりますが、トラブルにつながりやすくなるので、他の子どもの顔はスタンプやモザイクで隠すのがおすすめです。公開する場合でも、撮影時に「この写真をSNSで公開してもいい?」と許可を取っておくようにしましょう。

子どもが成長してくると 、保護者のSNSに写真を公開されることを嫌がることも多くなります。子どもの肖像権は本人にあるので、本人の意向を尊重し、削除してほしいと言われたらすぐに削除すべきでしょう。

なお、生成AIで子どもの顔写真でディープフェイク画像などを作成された場合、名誉毀損罪などの他、肖像権侵害が問える可能性があります。しかし単に似ているだけであればどのような扱いになるかは、今後判断を仰ぐことになりそうです。

生成系AIの悪用を規制する法律制定へ

生成系AIによるリスクにも、対策は進められています。EUでは、AI技術に対する包括的な規制を行う法律「AI規制法」の制定に向けた議論が進んでおり、生成系AIの悪用に歯止めがかかることになるでしょう。

Googleは、2018年にネット上の児童ポルノ画像検出ツールを発表、「Content Safety API」の1ツールとして、市民団体やNGO、テクノロジー企業など、対策に取り組む団体に無償で提供しています。pixivでも、7月から児童を写実的に描写したイラスト・マンガが非表示とされました。

法的整備と共に、企業などの児童ポルノコンテンツ対策が進むことで、AI児童ポルノリスクも減らしていけるかもしれません。

SNSで一人一アカウントを持つ時代となりました。しかし、デジタルタトゥーや子どもの身に危険が及ぶリスクは避けて安全に利用する必要があります。ご紹介したことを参考に、気をつけて利用するようにしてください。

「子どもをめぐる課題(#こどもをまもる)」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。 子どもの安全や、子どもを育てる環境の諸問題のために、私たちができることは何か。対策や解説などの情報を発信しています。

【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサー編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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