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Twitter規制の可能性も?Facebookは?SNSの自殺対策とは

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
Twitterが自殺サイト代わりに使われています。その声は「SOS」かも…(ペイレスイメージズ/アフロ)

座間市で9人の遺体が発見された事件で、容疑者が被害者と知り合うためにTwitterを使っていたことが社会問題となっています。

加害者は、Twitterで複数アカウントを使い、ハッシュタグを使って自殺したい人を探してコンタクトを取り、凶行に及びました。

なぜTwitterが使われたのか、運営企業や政府の対応などについて解説します。

出会い系・自殺サイトに変わるTwitter

Twitterは、匿名で複数アカウントを使用することができ、検索対象となります。

鍵をかけない限りは誰からでもツイートが見られるため、知らない人からのコンタクトも少なくありません。

警視庁の「平成28年におけるコミュニティサイト等に起因する事犯の現状と対策について」によると、Twitterによる児童被害数は前年度の二倍になっています。

平成20年の出会い系サイト規制法改正により取り締まりが強化され、出会い系サイトによる被害児童は減少しました。

一方、確実に10代がいることが分かっているSNSなどのコミュニティサイトにおける被害が増えているというわけです。

自殺仲間を募集したり自殺の手段を教え合う場、「自殺サイト」も規制が強化されました。

自殺サイトで知り合い集団自殺するなどの事件が続いたため、多くの自殺サイトが規制されたのです。

そこで代わりにTwitterが自殺サイトのように使われた結果が今回の事件につながったというわけです。

Twitterはその特性上から、出会い系や自殺サイト代わりに使われてしまっているのです。

IT企業各社の「自殺」問題対応は?

ニーズがあるとき、人は検索サービスで検索したり、SNSで本音を漏らしたり、人と繋がったりします。

自殺サイト代わりではありませんが、自殺したい時に検索サービスやSNSなどを使う人は少なくありません。

そこでそのようなサービスを運営するIT企業各社は対策に努め始めています。

たとえばGoogleやYahoo!などの検索サービスで「死にたい」などと検索すると、以下の図のように相談機関の電話番号がトップに表示されます。

自殺しようとしている人を止めたいという意志の現れです。

画像

(著者撮影)

米Facebookでも、友だちがトラブルを抱えていることが分かる投稿をしていた場合、Facebook社に報告したり、対処法を教えてくれたり、地元の相談機関に連絡を取ってくれたりします。

まだ日本語には対応していませんが、今後対応する可能性があります。

Twitterルールによると、Twitterでは、自殺や自傷行為の兆候があるという報告を受けた場合、Twitter社がその人物を支援するために対応することがあるとしています。

たとえば、メンタルヘルスパートナー、つまり相談機関などの連絡先情報を伝えるなどするそうです。

自殺をほのめかしているユーザーの報告フォームが設置されたため、今後日本でもそのような対応がされるかもしれません。

現地時間11月3日、Twitterルールが改定され、ルール違反行為が具体的に明示されました。

たとえば「暴力」「自殺や自傷行為」「児童ポルノおよび児童の性的搾取」などです。

このようなことをした場合、禁止されているコンテンツの削除、Twitterの一時的な利用制限、アカウントの所有権の認証の要求、アカウントの永久凍結などが強制的に執行される可能性があります。

自殺や自傷行為などについてツイートすることはルールに抵触する上、Twitter社に報告される可能性が出てきたというわけです。

Twitter規制の可能性も?

Twitterはハッシュタグによって検索ができます。

今回のように「#自殺」「#自殺募集」などの自殺サイト代わりのハッシュタグ以外にも、犯罪がらみなどの問題のあるハッシュタグがたくさん使われています。

今回のようにハッシュタグが悪用されることがある上、危険度の高いハッシュタグが放置されているのが現状です。

11月10日の会見で、菅義偉官房長官は再発防止策として、『自殺に関する不適切なサイトや書き込みへの対策の強化』『ネットを通じて自殺願望を発信する若者の心のケア対策の充実』を検討するとしています。

同時に、「Twitterの規制についても検討対象となるだろう」と言っています。

Twitterの規制は言論や表現の自由を制限する可能性が高く、反対の声は多いでしょう。

しかし、犯罪被害を減らしたり、自殺者を減らすことはとても大切です。

どのような対処をすれば減らしたりなくしたりできるのか。

IT企業各社だけではなく、ユーザーから声をあげていくときかもしれません。

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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