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投手転向を志願し「二刀流」でキャンプ。ソフトバンク小林珠維が育成で再契約、高校では150キロ超の右腕

田尻耕太郎スポーツライター
筑後秋季キャンプでは、チームの投手陣と一緒に練習を行っていた。中央が小林珠維

 ソフトバンクから契約満了となっていた小林珠維内野手が14日、契約更改に臨み育成選手として再契約を交わした。

 小林は北海道出身の21歳。小学生時代は「北海道日本ハムファイターズJr.」入りして12球団ジュニアトーナメントに出場。中学卒業後は東海大札幌高校で主に投手として活躍した。

 高校時代から150キロ超の直球を投げる本格派右腕として注目された。投手としてドラフト指名を検討したNPB球団が多かったとも聞く。一方で、打者として高校通算30本塁打も記録。身体能力が高く脚力も光ったことから、ソフトバンクは野手としての将来性を見込んで2019年ドラフト4位で「内野手」として指名した。

プロで打者転向も苦戦、今オフ構想外

 プロではショート、セカンドを守り強打を期待されたが、入団から3年間で一軍出場はなく、今季も二軍公式戦では38試合出場で打率.160と苦しんだ。

 そして3年目の今季終了後に球団から、来季は支配下契約ではなく育成契約を打診された。その際に“投手再転向”の思いを球団サイドには伝えていた。

 現在、HAWKSベースボールパーク筑後での秋季キャンプに励んでいる小林は現状を次のように説明する。

「野手は継続的にやっていますけど、今はピッチャー中心で(練習に)励んでいます」

自分の可能性を発揮するため

 球団はシーズン終盤の打撃内容が良化を見て、野手としての可能性もまだ残しておきたいと考えているようで、たとえばこの第3クールの3日間は初日と2日目は投手組で練習を行い、最終日のみ野手で練習をしていた。これが第1クールの「4勤」の場合は3日目まで投手組で、最終日のみ野手で練習を行った。

身体能力が高く、二遊間を守れる大型野手としての期待も捨てきれない
身体能力が高く、二遊間を守れる大型野手としての期待も捨てきれない

「世の中では、大谷(翔平)選手を筆頭に“二刀流”という言葉が使われるけど、僕としては自分の持っている力を全部出せれば。二刀流と言われると思うけど、自分の可能性を発揮するための取り組みだと思っています」

 秋季キャンプではブルペンでの立ち投げも行った。投手としては約3年のブランクがある。

「野手は相手が取りやすいボールを投げるのが基本。だけど投手はバッターが打ちづらいボールを投げないと。投げ方も違う。相手が見づらいボールを投げないと。そのギャップは感じています」

打者目線で「勝てる投手」へ

 また、前述したように高校時代は150キロ級直球を投げ込む本格派だったが、今後目指すスタイルは少し違っているようだ。

「高校の時は腕を振って、ひたすらストレートを投げ込むイメージでした。だけど、この3年間はバッターを経験して、それも大事だけど、小さく動く変化球やテンポのいい投手が打ちづらいと感じました。誰を目標にするとか理想像はまだですけど、色んな投手を見て勉強して再現していきたいです」

 秋季キャンプ序盤に筑後キャンプを見に行った際には投手として練習を行う日だった。充実した表情で投内連係の練習に汗を流していた。まだまだ可能性無限大の21歳。覚悟を持って決めたチャレンジを応援したい。

※写真はすべて筆者撮影

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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