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2年前ドラフト指名漏れから上位候補へ。火の国の155キロ左腕・石森大誠の胸中「僕はまだ成長できる」

田尻耕太郎スポーツライター
ドラフト注目左腕の火の国サラマンダーズ・石森大誠投手(筆者撮影)

 9月10日、ヤマエ久野 九州アジアリーグの火の国サラマンダーズが、交流戦で四国アイランドリーグPlusの高知ファイティングドッグスと熊本県熊本市のリブワーク藤崎台球場で対戦した。

火の国・橋中がタイムリー2本

【9月10日 交流戦 リブワーク藤崎台 無観客】

高知  ’000000100 1

火の国 ’00040200× 6

<バッテリー>

【高】●今田、松田、屋比久、谷村、平間――大原

【火】猿渡、徳橋、◯佐野、橋詰、水野、石本、石森、西島――深草

<本塁打>

なし

<スタメン>

【高】7濱 4松尾 8サンフォ D関口 3長谷部 2大原 5大下 6萩須 9有田

【火】4高山 3猪口 D吉村 8水本 5高橋 7河添 9浦木 2深草 6橋中

<戦評>

 火の国が四回に集中攻撃を見せた。3番・吉村がバットを折られながら中前打を放つと、そこから一気の5連打。6番・河添、7番・浦木の連続タイムリーや相手守備のミス、さらに9番・橋中の適時二塁内野安打で一挙4点を奪った。六回には途中出場の松本、そして橋中がタイムリーを放ち追加点。2本のタイムリーを放った橋中はこの試合のMVPに選ばれた。

 火の国投手陣は小刻みな継投。3番手の佐野が勝ち投手となった。最終回は西島が最速153キロの力強い速球で1回3者連続三振の快投を見せた。

 高知は初回に先頭から2者連続安打を放つも、2連続盗塁失敗に終わり流れを引き寄せられなかった。(了)

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石森、馬原ピッチングGMと二人三脚で成長

馬原ピッチングGMの見守る前でピッチング練習を行う(筆者撮影)
馬原ピッチングGMの見守る前でピッチング練習を行う(筆者撮影)

 火の国のドラフト注目選手、左腕の石森大誠投手が八回から登板した。その名前がアナウンスされて背番号47がブルペンからマウンドに向かうと、ネット裏スタンドに陣取っていたNPBの複数球団のスカウトたちも前列へと一斉に動き出した。

 火の国は夏場の雨天中止に加えてチーム内に新型コロナウイルス陽性者が出た影響から一時チーム活動を停止するなどしばらく試合が行えず、この日が約1か月ぶりのゲームだった。

「久しぶりで、こんなにワクワクしているのかと自分でも驚くほどでした」

 笑顔で振り返った石森。「だけど、それが力みにつながった」と反省もした。最初の打者には初球から150キロ超の直球一本勝負でスカウトをどよめかせたが、3球目をレフト前ヒットにされた。

「力みが合わせやすい真っ直ぐにつながった。1、2、3で来られても詰まる真っ直ぐを追求しないといけない」

 ただ、走者を出して慌てるどころか逆に冷静になれるところが非凡だ。球速はそのままに直球のキレを取り戻し、そしてこの日は変化球が低めに集まった。1アウト目はカットボールで、2アウト目はチェンジアップで空振り三振を奪った。最後は直球で内野ゴロ。1回1安打無失点2奪三振の内容だった。

奪三振率は15.73

 今シーズンはリーグ戦ならびに交流戦の公式戦は30試合に登板し2勝1敗16セーブ、防御率2.08の成績。30回1/3を投げて被安打14、奪三振53(奪三振率15.73)、与四球12と圧倒的な数値も残している。

 昨年までの社会人やそれ以前の大学時代とは比べ物にならないほどの試合数をこなし、経験を積んできた。

 パフォーマンス維持に欠かせなかったのが、火の国の馬原孝浩ピッチングGMの存在だ。元ソフトバンク、オリックスで一線級投手として活躍した馬原は技術指導以外にもトレーニングや体のケアの部分で選手たちを熱心にサポートしている。その中で「プロとは何か」を何度も説いてきた。

 アマ野球は「部活」になりがちだ。体がきつくても、“体力が足りないからだ”と言わんばかりに、逆にトレーニングをして強化をして追い込もうとする。ただの根性論に走りがちだ。

「そんな部活感を排除しないといけない」と馬原ピッチングGMは言う。ケアや積極的休養の大切さ。さらに石森には肩周りや股関節周辺の可動域をしっかり拡げる“馬原メソッド”を注入した。それが左腕の生命線となっている。

NPBスカウト「左で155キロはなかなかいない」

 NPBドラフト会議は10月11日に開催される。ちょうど1か月前だ。

「2年前の大学生の時に指名漏れをして、挫折というか本当に落ち込みました。あと1か月。今は楽しみしかない。今年は野球を楽しんでやれているので」

 ネット裏のセ・リーグ某球団のスカウトは「左で155キロ投げる投手は日本中探してもなかなかいない。とてもじゃないが育成で獲れるレベルじゃない」と評した。独立リーグから初の「ドラフト1位」(過去最上位は香川オリーブガイナーズから2013年2位で中日ドラゴンズに入団した又吉克樹)も可能性ゼロではない。

 石森は「僕はまだまだ成長できる。この1か月の短い期間でも、ストレートのキレやスピード、変化球の精度も周りから見て『良くなった』と気付いてもらえるような変化を見せたい」と気をぐっと引き締め直していた。

石森大誠(いしもり・たいせい)

1997年12月3日生まれ、23歳。石川県出身。左投左打。身長178cm、体重78kg。遊学館高校→東北公益文科大学→熊本ゴールデンラークス→火の国サラマンダーズ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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