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一軍でも二軍でも防御率1点台なのに・・・ホークス大関友久がファームで投げるワケ

田尻耕太郎スポーツライター
一軍昇格へ”稽古”も順調!(筆者撮影)

 9月8日、ウエスタン・リーグ公式戦。福岡ソフトバンクホークスと中日ドラゴンズがタマホームスタジアム筑後で対戦した。

 

【9月8日 ウエスタン・リーグ公式戦 タマスタ筑後 無観客】

中日     000200000 2

ソフトバンク 00000302× 5

<バッテリー>

【Ⅾ】笠原、●高橋宏(0勝4敗)、鈴木、佐藤、橋本、丸山――郡司

【H】奥村、田浦、◯尾形(3勝5敗)、高橋純、大関、S椎野(8セーブ)――海野、渡邉陸

<本塁打>

なし

<スタメン>

【D】8岡林 3石岡 D遠藤 6根尾 7井領 2郡司 5山下 4石垣 9三好

【H】8真砂 9水谷 4野村 Dバレンティン 7アルバレス 3中谷 5井上 2海野 6小林

<戦評>

 ソフトバンクが3連勝。試合のなかった阪神とのゲーム差を「1」に広げ、ウエスタン・リーグの首位を堅持した。

 逆転勝ちだった。六回、1アウト二塁から2番・水谷瞬の左前適時打で1点を返し、なお2アウト一、三塁から5番・アルバレスが中越え2点二塁打を放ち3-2と試合をひっくり返した。

 八回には1アウト二、三塁の場面に代打で出場した明石健志が右中間へ2点二塁打を運び試合を決めた。

 先発した奥村政稔は5回4安打2失点(自責1)と力投。シーズン当初は中継ぎだったが、先発転向後は制球も安定し、倉野信次ファーム投手統括コーチも好評価をしていた。

 3番手で登板した尾形が1/3イニングのみの登板だったが3勝目をマーク。セーブを挙げた椎野は1回を打者3人で抑えて2三振を奪った。直球は150キロ台をマークするなど球に力があった。(了)

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大関友久が磨く「第3、4」の球種

 前日に2回完全投球と好投していた大関友久投手が、この日もマウンドに上がった。

 連投の登板だったが、得意球の直球とスライダーの切れ味は申し分なし。1回無失点。1安打を許したが、3つのアウトは全部三振で奪った。この日最速150キロをマークしたストレートで追い込み、決め球はいずれもスライダーだった。

 今季開幕後に育成枠から支配下入りを果たした左腕。一軍デビューを果たし、6試合に投げて勝ち負けなしの防御率1.93の成績を残している。

 そしてウエスタン・リーグでも好投を続けている。この日が24試合目の登板で4勝1敗3セーブ、防御率1.37という安定感だ。

 3月の一軍オープン戦では期待されながら防御率10.13と応えられなかった。それがシーズン開幕後はこの安定感だ。倉野信次ファーム投手統括コーチも「あのころとは別人といっていい」と大きく頷く。

「ボールの質、いわゆる切れが段違いに良くなりました」

倉野コーチも認める春からの成長

 一軍での防御率1点台も納得だという。ならば、なぜファームに置いておくのか。

「ストレートとスライダーの2種類が軸だけど、仮に一軍の勝ちパターンの中でその2つだけで勝負するならば、ストレートは155キロくらい投げるとか、スライダーはもっと切れるとかしないと難しい。そうじゃなくて、第3、4の球種もしっかり磨いて、上で勝負できる投手になろうと今取り組んでいるところなんです」

 この日の試合でも“新球”は投げていた。140キロ前後の少し動くボールだ。「1球速報」のサイトではストレートと表記されていたが、それはシンカー系のボール。そしてチェンジアップも操っていた。

「空振りをとる場面もあったし、今日くらいの感じで投げてくれればいいなと思います」

 しっかり目標を持った中で成長を促す。有意義な時間の過ごし方だ。

 大関は“昇進”ならぬ一軍昇格ロードを、着実に前進している。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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