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ホークス九鬼隆平が手術、復帰まで6カ月。無念離脱も「遠回り」を力に変えられる男

田尻耕太郎スポーツライター
しっかり完治させて戻ってきてほしい(筆者撮影)

7月にプロ初安打を本塁打でマーク

 ソフトバンクは9月30日に九鬼隆平捕手が大阪市内の病院にて、頸椎前方除圧固定術および自家骨移植をうけ無事終了したと発表した。併せて復帰まで約6カ月を要する見込みであることも明らかにし、実戦復帰は来年開幕以降になるもようだ。

 九鬼は入団4年目。秀岳館高校時代は4番捕手で主将の中心選手で、3年春と3年夏の甲子園ではいずれも全国4強進出の原動力となった。

 プロ入り後はファームで栗原陵矢らとスタメンマスクの座を争いながら経験を積み、昨季一軍デビュー。今季は7月4日に一軍昇格すると、翌5日の日本ハム戦(札幌ドーム)でプロ初先発出場を果たし、その日の第1打席でプロ初安打を豪快なプロ初本塁打で記録した。今季一軍では5試合に出場。打率.250、1本塁打、1打点の成績だった。9月3日にファーム行きとなって以降は二軍公式戦に出場しておらず、リハビリ組で調整をしていた。

小久保氏の動画を参考に打撃改善

 悔しい離脱だ。入団当初から強打の捕手として期待が高く、若いながらに堂々とした立ち振る舞いから「城島2世」との呼び声もあった。開幕延期期間の自主練習中には打撃力アップをテーマに掲げて、バットを振り込むと同時に研究も欠かさなかった。

「同じ右打者の動画を探して見ています。よく見るのが元ホークスの小久保さん。打つ時に頭の位置が動かずにバットが出るのがすごい。あのような打ち方が自分の理想。参考にしています」

 それが実を結んだプロ初本塁打だった。「自分でもびっくりしています。体が上手く反応して打てた感じでした」と喜んでいた。

中学時代は控え捕手だった

 しばらくの間、次代の正捕手争いから少し距離を置かざるを得なくなる。遠回りをすることになるが、九鬼はかつてそのような人生を歩み、その後成功をつかんできた。

 父の義典さんはかつて池田高校の選抜優勝メンバーであり、社会人の松下電器でもベストナインに輝いた名選手だった。しかし、九鬼少年は、まずバレーボールやサッカーに打ち込んだ。

「父の勧めでした。野球は体が出来上がってからでいい。それまでは色々なスポーツで体を強くすることも大切だからと言われました」

 野球を始めたのは小学校高学年になってから。経験が浅い分ずっと控え捕手だった。ただ、あらゆる経験を積み、様々な立場に身を置いたからこそ捕手に必要な視野の広さを身につけ、野球以外のスポーツでしか鍛えられない箇所も強くなった。高校時代にはスポーツメーカーが全国数千人の高校球児を対象に行った身体測定テストにおいて、太もも裏と背中の筋力で1位、30メートル走では4位を記録。根本的な体の強さは持っている。

 昨季と今季、一軍での出場機会こそ少なかったが、ベンチ入りした期間は長かった。高いレベルを肌で感じることも確かなプラスだ。

 苦難を乗り越えた分だけ、人間は強くなる。来季、ひと回りもふた回りもたくましくなった九鬼がグラウンドで輝いていることを期待している。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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