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西武相手に開幕3連勝のソフトバンク。工藤野球に“変化”を見た

田尻耕太郎スポーツライター
ソフトバンク工藤監督(筆者、2月に撮影)

“3番”柳田が開幕シリーズで2発6打点

 やはり柳田悠岐が打てば、ソフトバンクは強い。

 30日の開幕2戦目は逆転満塁ホームラン、翌31日は逆転2ランを放ち2日連続でお立ち台に上がった。開幕3戦で打率5割、2本塁打、6打点、3盗塁。早くも手がつけられない状態だ。

 ただ振り返れば開幕前日、工藤公康監督は頭を悩ませていた。「打順はまだ決めていません」。試合直前まで思案したのは、柳田を3番に据えるか4番に座らせるか。もともとの基本線は3番起用だったが、オープン戦終盤に4番起用も試すと5試合で16打数7安打1本塁打と結果を残していたのだ。

 それでも首脳陣が出した結論は「3番柳田」だった。

「初回に回ってくることで相手にプレッシャーになる」

 開幕戦という独特の緊張感の中、少しでも優位に試合を進める狙いがあった。その大事な一戦でチームは16安打と打線全体が機能した。そしてサヨナラ勝利を収めたことで当面の打順が固まった。

“2番”今宮がバントゼロの意味

 勢いのままに、ソフトバンクは開幕3連勝を飾った。まさしく、戦い方に勢いがあった。なぜなのかと振り返ると、ソフトバンクはこの3試合で送りバントを1個しか決めていないのだ。開幕戦の4対0とリードした六回無死一塁、甲斐拓也の投前バントのみだった。

 ソフトバンクといえば、かなり手堅い野球をする印象が強かった。昨季はシーズン102犠打(リーグ3位)を決めていることを考えれば、3試合で1つはかなり少ない。

 なかでも2番打者の今宮健太は、誰もが知るバント名人だ。この3試合、ノーアウトで走者を置いて打席に入ったのが5度もあったが、すべて強行策に打って出た。

 工藤監督はその辺りの意図を、31日の試合前にこのように語っていた。

「今宮くん自体の調子がいい(3試合で打率5割4分5厘)のもある。でも、1番が出てただ送ると一塁ベースが空いてしまうので、ピッチャーは柳田くんに対して『フォアボールでもいい』と大胆に攻めることが出来てしまう。(走者が)詰まっている方が良い場合もある。ただ、その中でも今宮くんはチーム打撃をしてくれていますけどね。だから、今日『も』打たせます」

 バッティングは良くても7割は失敗する。強行策が裏目に出た場面もあった。しかし、最初の3試合で相手ベンチに「何か仕掛けてくる」と警戒心を植えつけたのだけは確かだった。

 この意味は大きい。スコアラーを通じて、対戦した西武以外の他球団にも浸透していくことになる。

 今年のソフトバンクのスローガンは『奪Sh!』だ。盗塁増はもちろん、もう一つの意味は走塁力のアップ。工藤監督が好む「相手が嫌がる野球で1点を奪う」との狙いが込められている。「少ないヒットで点を奪う」のが理想だ。

 宿敵相手の3連勝スタート。最高の結果はもちろん、この3試合で“タネ”を蒔いたことが、今後の戦いにじわじわ効果を表していくだろう。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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