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工藤監督「見違えた!」と絶賛。背番号136右腕、初めてヤフオクDのマウンドに立つ

田尻耕太郎スポーツライター
マウンド投球練習後に工藤監督から声を掛けられる中村晨(右)

ヤフオクドームでCSへ試合形式練習

 クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージを2日前に控えた11日、ソフトバンクはヤフオクドームで試合形式の練習を行った。

 先発が見込まれるバンデンハークがマウンドに立ち、柳田悠岐がその右腕の152キロをバックスクリーン左の中段まで届く特大アーチを放つなど、無観客ではもったいないほどの対決も繰り広げられた。

 その中で3人の育成枠投手が招集された。

背番号122川原弘之
背番号122川原弘之
背番号140渡辺雄大
背番号140渡辺雄大

「相手には左サイドの投手もいる」(工藤監督)

 宮西(日本ハム)を想定し、川原弘之と渡邉雄大が登板した。

 川原は今季2軍公式戦でチーム1位の34試合に登板。3勝2敗5セーブ、防御率1.75の成績を残した。左肩や左肘の故障を乗り越え、今年が4シーズンぶりの公式戦登板だったが、見事にフルシーズンを投げ抜いて復調ぶりをアピールしてみせた。この日は松田と甲斐にヒットを許したものの、140キロ台中盤を常時マーク。かつてのような150キロ台連発の姿ではなくなったが、肝心のコントロールがかなり改善された。来季へ楽しみな存在だ。

 渡邉雄は初めてのヤフオクドームのマウンド。「投げやすかったです」と笑顔を浮かべた。打者5人と対戦してノーヒット2奪三振。デスパイネを二ゴロ、グラシアルを詰まった左飛に仕留めた。自信の登板になったに違いない。

マウンドで1人、公開投球練習

背番号136中村晨
背番号136中村晨

 試合形式の練習が終わった後、1人マウンドに上がったのは背番号136の中村晨だった。

 予備メンバーとして招集されて登板機会はなかったが、2日後のフェニックスリーグで先発予定ということもあり調整投球も兼ねての“公開投球練習”が執り行われたのだ。

 今季が3年目だった熊本出身の長身右腕。その投球をマウンドの脇でじっと見つめていたのが工藤監督だった。

 投球後に笑顔交じりで何やら声を掛ける指揮官。中村晨によれば「左足の踏み込みが弱い。重点的にもっと鍛えるように」と指摘をされたという。

工藤監督は成長を確信「楽しみ。腕も長い」

 ただ、工藤監督は中村晨のたしかな成長を目の当たりにして、本当に嬉しそうだった。

「今年のキャンプの頃を思い出します。佐久本コーチに指導を受けながら一生懸命投げていた姿を。リズムやバランスを大事にして、力を抜いたり、出したりするタイミングとかを意識しながらやっていました。今日見たら、見違えるほどよくなっていた。真っ直ぐも変化球の曲がりも。いいボールを投げていましたよ。これからが楽しみ。体が大きいし、腕も長いし」

 昨年までは140キロ前後の直球しか投げられず、せっかくの恵まれた体格を生かし切れていなかった。それが今季は140キロ台中盤のキレのあるボールを投げ込むシーンも見られ、3年目で初めて2軍公式戦に登板も果たした。7月4日のオリックス戦(タマスタ筑後)では先発も任された。3軍戦(非公式戦)では22試合に投げて9勝7敗、防御率3.22。投球回102はチーム内トップだった。オフの強化選手の1人として注目を浴びる存在になりそうだ。

※写真はすべて筆者撮影

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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