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195cmのルーキー、ソフトバンク椎野新が驚いた「ボールが強くなった」

田尻耕太郎スポーツライター
工藤監督(右端)も視察する中で久しぶりのブルペン(筆者撮影)

アピールする同期の一方で「基礎メニュー」

 春季キャンプも気づけば後半に。

 ソフトバンクでも既に紅白戦が始まり、18日にはドラフト2位新人の高橋礼(専修大)と育成6位の渡邉雄大(BCリーグ・新潟アルビレックス)がB組から抜擢されて、ともに無失点ピッチングを披露した。

 また、同日にはドラフト1位の吉住晴斗(鶴岡東高)と同5位の田浦文丸(秀岳館高)が初めてブルペン入り。ともに立ち投げのみだったが、久しぶりのピッチングの感触に嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 高卒新人の2人は故障をしていたわけではない。球団が「まずはプロで戦える体づくり」と判断し、基礎強化メニューを徹底していたためだ。これがソフトバンクの育成メソッドの一つとなっている。

 彼ら10代投手たちの初ブルペンは一部メディアでも報じられていたが、もう1人、久しぶりに投球練習を行ったルーキー右腕のことは、どこも報じていなかった。

 ドラフト4位の椎野新である。

 国士舘大学から入団。一見すれば即戦力扱いで、かつ、このキャンプでも2月1日、2日はブルペン入りしていた。これが「初投げ」ではなかったこともあり各メディアはスルーしたのだった。

サファテよりも2cm高い

 彼の武器はなんといっても身長だ。じつに195cm。ソフトバンクの日本人投手の中では一番大きく、守護神のサファテより2cm高い。

 しかし、気になる点があった。最速148キロ。十分なスピードではあるが、これだけ恵まれた体格にしては少し物足りなさを感じていた。

 キャンプ第1クール。ユニフォーム姿を見て少し納得した。上半身に比べれば下半身が頼りない。ブルペンで投げてみると余計にバランスが悪く映った。下半身が粘れていないために上半身の開きも早い。投げに行く際には左肩がかなり落ちてしまっていた。

 バランスを崩したまま投げても自身が本来持つパフォーマンスは発揮できないし、故障にも繋がってしまう。そこで椎野はしばらくブルペンから離れて下半身や体幹をみっちり鍛える、基礎強化メニューに取り組んだのだった。

 果たして迎えた約半月ぶりのブルペン投球は見違えるほど変わっていた。スムーズな投球フォームは素人目にも明らかだった。

自慢の制球力は雪合戦のおかげ?

 椎野は自分の成長に驚きが隠せない様子だった。

「自分でも分かるほど球が強くなりました。びっくりしています。一番の違いは投げ終わった時の形です。以前までは一球一球が安定していなかった」

 上々の第一歩である。このまま成長すれば、かなり楽しみな右腕だ。椎野は長身投手にしては珍しく「コントロールに自信がある」と胸を張る。「新潟生まれで、小さな頃から雪合戦ばかりしていました。常に的を狙って投げて外したことはほとんどなかった。それが良かったのかもしれません」と照れ笑いした。

 今後もソフトバンクの育成プログラムに沿いながら日々練習などを積み重ねていくことになる。とんでもない投手へと大化けする可能性は十分にある。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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