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ソフト上野由岐子が語る、前人未到200勝への本音――新生「ビックカメラ高崎」が記念の初勝利!

田尻耕太郎スポーツライター

逆転3ラン、満塁弾で圧勝

「新生」ビックカメラ高崎(写真提供:コウノエスポーツアカデミー)
「新生」ビックカメラ高崎(写真提供:コウノエスポーツアカデミー)

4月25日(土)、日本女子ソフトボール1部リーグの第1節で、今年誕生したビックカメラ高崎(BIC)が記念すべき初勝利を挙げた。SGホールディンググループ(SGH)に14対1で圧勝した。

SGH  0001000 1

BIC   0003101× 14

【戦評】

新チーム「ビックカメラ高崎」(今季より、昨年まで活動していた「ルネサスエレクトロニクス高崎」より移管)がリーグ2戦目で初勝利を飾った。

開幕節で昨年覇者のトヨタ自動車に0対1で惜敗し迎えた第1節初日。先発は北京金メダリストの「世界を制したエース」上野由岐子。序盤はゼロ行進も4回に先制ソロを浴びてしまう。しかし、直後に打線がエースを強力援護した。チーム関係者が「身体能力が高く、プロ野球選手で言えば糸井(オリックス)タイプ」という大工谷真波が豪快な3ランを放ち逆転に成功。すると打線が爆発し、5回裏には山本優に満塁本塁打が飛び出すなど一挙10得点の猛攻を見せた。

上野は5回まで投げ切り、2番手・中野花菜にバトンタッチ。中野は2回を無失点に抑える好リリーフで、ビックカメラ高崎が嬉しい初白星を手にした。

明日26日も、ビックカメラ高崎は静岡県磐田市の磐田城山球場で第1節2日目を戦う。対戦相手はペヤングで午前10時プレーボールの予定だ。今後の日程についてはコチラ

通算188勝目、上野「チームとしていい勝ち方」

上野由岐子は「ビックカメラ高崎」として初めての勝利。これを機に勢いづいていきたい」と声を弾ませた。この日の投球については「与えてはいけない先制点を献上してしまったので、個人的には良かったと言えません。だけど、みんなが打ち返してくれて勝つことが出来ました。本当に良い形で勝つことが出来たと思います」と振り返った。

上野は、今季が日本リーグでプレーする15年目のシーズンになる。昨年は左膝の故障もあり、初めて2桁勝利を逃す8勝に終わった。しかし、この日の白星で積み上げた数は「188」となった。女子ソフト日本リーグ歴代最多である。今季は始まったばかりで、残り試合は20試合もある。今年中に前人未到の「通算200勝」も夢ではない。

記録よりもチーム「若手を蹴落としてまで…」

だが、その大記録について上野自身に訊ねてみると「え? そうなんですか?」ときょとんとした様子。通算勝ち星などの記録については把握していなかったという。こちらとしては当然「大記録への挑戦」を期待してしまいがちだが、「私自身は(200勝を)考えたこともありません。今は個人的な成績やタイトルよりもチームのことを優先に考えています。もちろん、選手として結果を残すことは大事ですが、監督も『上野は勝って当然』と思っているでしょうし(笑)。結果だけを求めるのではなく、若い選手たちにもチャンスを与えていきたい。若い選手を蹴落としてまで自分の成績を求めることはしたくないと思っています」と語った。

2020東京五輪で正式種目復帰を目指す女子ソフト

今後、女子ソフトボールが再び注目を集める可能性がある。今夏にも開かれるIOC総会の結果次第で、2020年東京五輪で正式種目として復活する期待が大きい。

北京五輪のあの感動を「再びエース上野が中心となって」との夢を抱くファンも多いはず。筆者もその一人だ。スポーツ紙報道によれば「(東京五輪で)第一線で投げるイメージは全くない」とコメントしたようだが、昨年末に上野に会った際には「現役で東京五輪」の可能性をすべて否定したわけもなかった。とはいえ、「次代のエース」が出現しなければ、女子ソフトボール界の未来に光が射さないことも、上野自身が分かっている。今はとにかく第一線に投げ続け、若手の手本となりながら、さらに指導にも力を注ぐ「二刀流」で尽力していく構えのようだ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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