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持続化給付金詐欺をした人たちに、強く自首を勧める、その理由とは?裏社会からの闇が迫っている。

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:Panther Media/アフロイメージマート)

10月末時点で、「資格がないのに、不正に持続化給付金を受給してしまった」などの理由で「返還したい」という申し出が、経済産業省に6千件以上も寄せられています。これはあくまでも、延滞金、加算金を課さないとした呼びかけに応じたもので、刑事罰を受けないこととは別ものです。

おそらく返還した人の多くは、弁護士に相談して、すでに自首をしているかと思われます。一般に警察へ出頭することの利点は、逮捕や起訴されるなどの可能性を減らせ、もし起訴されても減刑されるため、とされています。

いまだ、逃げおおせると考えて、自首をしていない人も多くいますが、強く自首を勧めます!それは先の理由とは、別な意味からです。

裏社会から狙われないため

「簡単に、給付金が受け取れるよ」

この甘い言葉に誘われて、勧誘者に名義を貸して、100万円の持続化給付金を手にした人たちは、振り込め詐欺における「受け子」(家にカードや現金を取りにいく役目)として、詐欺の手足になってしまった存在と同じ立場です。

SNS上には、詐欺と思しき高額バイトが多数載っています。もし興味を持って応募している人物(勧誘者)に連絡を取り、裏バイトの話に耳を傾けてしまうと、決まってリクルーターである勧誘者は、その人物に運転免許証などの身分証明書を写メールで送るように言ってきます。

これは相手の身元を押さえて、逃げられないようにするためです。一度でも、詐欺に手を染めさせると、繰り返して犯罪行為をさせてきます。

もし本人が「やめたい」といっても、この背後には暴力団や半グレが睨みをきかせていることが多く「家族に言うぞ!」「詐欺をしていることを、警察や周りに知らせるぞ!」と脅され抜けられなくなり犯罪に加担し続けてしまいます。

受け子で逮捕された人のなかには、こうした事情から抜けられなくなり「捕まって、ほっとした」「逮捕されて、良かった」という人も多くいます。

今回の不正受給で詐欺の手足となった人たちは、身分証や銀行口座のコピーを犯罪グループに送り、さらには税務署から虚偽の確定申告書類を受け取るためにマイナンバーも伝えていることでしょう。

つまり、すでに犯罪者側に、不正受給者たちの個人情報は渡ってしまっているのです。

当然、犯罪者らは裏社会でつながっていますので、これらの貴重な個人情報はすべてリスト化されて、情報屋などに出回っていると思われます。

今後、その情報が使われて、何かの借金をさせられるなどの二次被害の恐れも充分にあります。

すでに弁護士に相談して、警察に出頭している人は良いですが、それをしていない人は、闇を持っている人間として、間違いなく裏社会の人間から脅しをかけられる可能性があります。そして、その罪を隠すために、また新たな罪を重ねてしまうのです。

持続化給付金詐欺を行ったことの怖さは、警察に逮捕されるだけではなく、裏社会の人間に追われて、犯罪を重ねてしまうこともあるのです。

今回、名義を貸して、不正受給した人たちは、振り込め詐欺の手足となった「受け子」たちと同じ立場であることを自覚してほしいのです。

警察の摘発と、闇社会の恐怖におびえる二重の苦しみ

今、各地で不正受給者が続々逮捕されています。すでに報道されている通り、沖縄の事件では不正な名義貸しは1800件といわれ、愛知県では800人を超え、広島では100件以上と、全国でその実態が暴かれています。続々と詐欺の実態が明らかになっており、不正がどこまでに広がるのか、予測すらできない状況です。

それを注視しているのは、警察や一般社会の人たちだけではないのです。

未だ、不正受給の事実から逃げ切れると思って、たかをくくっている人もいるかもしれません。

運よく警察の手を逃がれたとしても、裏社会はいつまでも追ってきます。

警察の摘発と闇社会の恐怖におびえるという、二重の苦しみをすることになるでしょう。

こうしたアプローチを受けないためには、やはり警察に行き、もう罪を犯さない人であることを示す必要があります。

周りにいまだ、自首に躊躇している人がいれば、ぜひとも教えてあげて頂ければと思います。

持続化給付金詐欺の手足になったことで、犯罪行為の蟻地獄にはまってしまう。それは警察に逮捕されるよりも怖いことなのです。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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