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「男女平等はG7議長国としての最優先事項」、カナダ首相が女性のエンパワーメント推進

巣内尚子研究者、ジャーナリスト
2018年3月8日の「国際女性の日」に開催されたイベントに出席するトルドー首相(写真:ロイター/アフロ)

 男女平等はカナダの主要7カ国(G7)議長国としての最優先事項だ――。カナダのジャスティン・トルドー首相は現地時間4月26日付の声明で、こう強調した。カナダが議長国を務めるG7首脳会議(サミット)が6月に同国ケベック州で開催される予定だが、同首相はかねてより女性の権利保護を重視する姿勢を打ち出しており、議長国として男女平等と女性の地位の向上を重要課題にしたい考えだ。

 トルドー首相は声明で、「女性のエンパワーメントは、全ての人にとって効果のある経済成長において重要なけん引役となる。女性が経済と社会に、自由に、完全に、平等に参加できるとき、私たち全てが恩恵を受けられる。女性と少女を支援すること、そしてエンパワーメントすることは、私たちが行う決定の中心になければならない」と説明している。

■G7サミットに向け男女平等諮問委員会設置

 G7の議長国として、男女平等を推進するに当たり、カナダ政府は「男女平等諮問委員会」を設置する。

 同委員会は、G7の活動の全ての分野において男女平等と女性のエンパワーメントを推進することを目的に、議長国カナダとのG7に対して具体的な行動を助言することなどを責務としている。

 男女平等諮問委員会の共同委員長はビル&メリンダ・ゲイツ財団の共同創設者であるメリッサ・ゲイツ氏と、カナダの駐フランス・モロッコ大使を務めるイサベル・ユドン氏だ。

 さらに委員には、日本人の弁護士で国連女子差別撤廃委員会の委員長を務めた林陽子氏、フェミニスト経済学の研究者として知られるダイアン・エルソン氏、リベリアの平和活動家でノーベル平和賞を受賞したレイマ・ボウィ氏、同じくノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイ氏、ジェンダーに基づく暴力に反対しながらLGBTQの権利保護活動などを進めるアクティビストのディロン・ブラック氏、国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事らが名を連ねている。

■女性の地位改善に向けた具体的施策を導き出せるか

 カナダは男女平等や女性の地位の改善に向けた施策を進めている。男女格差をランキングで示した世界経済フォーラム(WEF)の「The Global Gender Gap Report 2017」で、カナダの順位は世界144カ国中16位となった。G7では他に、フランスが11位、ドイツが12位、英国が15位だった一方で、米国が49位、イタリアが82位となった上、日本は114位と低い位置に付けている。

 一方、カナダでも依然として男女の賃金格差や女性に対する暴力などの問題はある。さらに、最近では女性たちがセクハラや性暴力について訴える「#MeToo(私も)」運動が世界的に展開されるなど、改めて女性の置かれた状況や社会における女性を取り巻く課題について見直すための議論が各国で広がっている。

 そうした国際的な動きがある中でのG7サミット。掛け声だけに終わらず、男女平等の実現に向け、国際社会が連帯して具体的な施策を導き出すことができるのか、議長国としてのカナダの手腕が試されそうだ。(了)

研究者、ジャーナリスト

東京学芸大学非常勤講師。インドネシア、フィリピン、ベトナム、日本で記者やフリーライターとして活動。2015年3月~2016年2月、ベトナム社会科学院・家族ジェンダー研究所に客員研究員として滞在し、ベトナムからの国境を超える移住労働を調査。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。ケベック州のラバル大学博士課程に在籍。現在は帰国し日本在住。著書に『奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態』(花伝社、2019年)。

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