新型コロナウイルスの流行拡大以降、女性を取り巻く問題が噴出している。解雇・離職、収入の減少、ケア負担の増加など様々な課題が山積。そんな中、女性たちの間で、困難に直面する女性を支援しようという連帯の動きが出ている。

女性たちの支援に乗り出しているのが、様々な分野の女性たちが参加する「女性による女性のための相談会実行委員会」(以下、実行委員会)だ。実行委員会は労働組合、市民団体、弁護士会などに所属する多様な背景を持つ女性たちから成る。

実行委員会は2021年3月、新宿の大久保公園で「女性による女性のための相談会」を開催した。その後も同年7月に同様の相談会を実施した上、直近では2021年12月25日、26日、さらに2022年1月8日、9日に相談会を開催した。

実行委員会スタッフと当日ボランティアはすべて女性。2021年12月25日の相談会には実行委員会スタッフと当日ボランティアが97人、同月26日の相談会には91人、2022年1月8日の相談会には109人、同月9日の相談会には99人が参加した。筆者もお手伝いをする機会を得た。

各相談会での相談件数は以下の通り。相談者は様々な年代にわたったほか、海外にルーツを持つ移住女性の姿もみられた。

2022年1月9日:98件(17時現在) 託児7件

2022年 1月 8日:115件(17時現在) 託児5件

2021年12月26日: 86件(17時現在) 託児5件

2021年12月25日: 83件(17時現在) 託児3件

(実行委員会プレスリリースから引用)

相談会が開催されたのは、困難をかかえながらも、相談先につながりにくい女性が存在するためだ。

実行委員会は「新型コロナウイルス感染拡大防止のために事業所が営業自粛や閉鎖に追い込まれる中、女性たちは仕事も生活も追われ、孤立が深刻化しています。(中略)男性には相談しにくい生活まわりの困りごとや、自分の悩みや不安があっても家族のことを優先させる女性は、自分のことを後回しにせざるを得ません」(実行委員会プレスリリース)と説明する。

このため相談会では、女性が安心して相談できる場を作り、女性の相談ニーズに対応することが目指されてきた。

◇カフェやマルシェ、託児コーナーも

女性による女性のための相談会は、大久保公園に設置された特設会場で実施された。会場は女性が安心して相談できるよう様々な工夫がされている。女性たちが気軽に立ち寄り、安心して話ができるような場が目指された。

まず会場が外から見えないように、テントが工夫して配置された上、あたたかい飲み物や軽食が楽しめるカフェコーナーが設けられた。カフェコーナーのスタッフは相談者一人ひとりの希望を聞きながら、紅茶やコーヒー、緑茶といった飲み物を提供した。

外から見えないよう配慮された会場(女性による女性のための相談会実行委員会提供)
外から見えないよう配慮された会場(女性による女性のための相談会実行委員会提供)

相談者にはあたたかい飲み物や軽食が提供された(女性による女性のための相談会実行委員会提供)
相談者にはあたたかい飲み物や軽食が提供された(女性による女性のための相談会実行委員会提供)

子ども連れでも利用できるよう絵本などの置かれた託児コーナーも設置され、専門のスタッフが待機した。子どものいる女性であっても、気兼ねなく相談できるようにとの配慮からだ。会場にはベビーカーや小さな子どもの姿がみられた。

食料などを提供するマルシェコーナーでは生理用品、消毒グッズ、生理用ショーツ、果物類、野菜類(大根、キャベツ、ジャガイモ)、調味料、餅、衣服などが準備された。またハラル食品も提供されている。相談だけではなく、食料や衣類が必要な人も少なくない。物質の搬入や仕分けなど煩雑かつ体力のいる作業も女性スタッフが手分けして行い、相談者に必要な物資が手渡された。

提供された食品(女性による女性のための相談会実行委員会提供)
提供された食品(女性による女性のための相談会実行委員会提供)

提供された食品(女性による女性のための相談会実行委員会提供)
提供された食品(女性による女性のための相談会実行委員会提供)

提供された食品(女性による女性のための相談会実行委員会提供)
提供された食品(女性による女性のための相談会実行委員会提供)

提供された食品(女性による女性のための相談会実行委員会提供)
提供された食品(女性による女性のための相談会実行委員会提供)

来場する人の検温や誘導などを行う受付業務や、会場の警備もすべて女性スタッフが担った。

そして複数設置された相談ブースでは生活、法律、医療など多岐にわたる課題に関して、弁護士や看護師、労働組合の相談員をはじめ専門知識を持つ相談スタッフが相談にあたった。

提供された食品(女性による女性のための相談会実行委員会提供)
提供された食品(女性による女性のための相談会実行委員会提供)

提供された生理用品(女性による女性のための相談会実行委員会提供)
提供された生理用品(女性による女性のための相談会実行委員会提供)

◇DV/モラハラに経済的苦境、住まいの喪失

相談会には、さまざま相談が寄せられた。

以下は実行委員会のプレスリリースに記載された相談事例だ。様々な年代の女性たちがDV・モラハラ、経済苦、過重労働、住まいの喪失、健康面の問題など多岐にわたる複合的な課題を抱えている。

事例1 20代。コロナで父が単身赴任先から帰宅。父からのモラハラを受けており、家を出たい。賃金が安くて自活できないため、ひとり暮らしがかなわない。家を出て生活する方法を知りたい。

事例2 50代。父の暴力にあってPTSDで悩んできた。働いていたが仕事がなくなり、1年の路上生活をしていた。今は生活保護を受けているが、仕事に復帰できない。家族と不仲で連絡が取れない状態で孤立している。

事例3 30代。パート勤務をしていたが過重労働で精神不安定になっている。「病気になったら休んでいい」と相談員に言われて顔が明るくなった。パート労働者でも社会保険加入していれば、傷病手当金を受けとれるとは知らなかった。傷病手当を受け取りながら休めるのは正社員だけの権利だと思っていた。

事例4 40代。子供あり。生活保護利用中。仕事をしたくてハローワークで登録しているが、仕事が見つからない。面接までは行くが落とされている。どのように自己PRしてよいかどうか分からない。子供から自分の仕事が何をしているのかを聞かれても答えられず、苦しい気持ちになる。

事例5 30代。生活保護申請をして宿泊所を紹介されたが、そこは男性ばかりが暮らしており、プライバシー面で安全性がなく怖い。親と不仲。過去に路上生活の経験がある。安全な暮らしを求めている。

事例6 60代。ネットカフェ生活を1年以上している。金銭トラブルがあり、安定した暮らしを失った。前日(1月8日)に相談したことで安心できた。身だしなみを気にする余裕が生まれた。髪を切って化粧したいと思えるようになった。

(実行委員会プレスリリースから引用)

実行委員会はプレスリリースで、「コロナ長期化でこれまでの生活が破綻してきている。何らかの疾患を抱えている相談者が多く、医療相談が多い。以前は医療機関で治療を受けていたが、失職するなどして治療費がなかったり、失職によって保険証の継続ができなかったりして、困っている事例が目立った。中には医療機関にかかれないため、以前に処方してもらっていた薬と同効果の市販薬を買おうと事例もあった」と指摘する。

実行委員会はさらに「元々抱えていた女性が潜在的に抱えている『生きづらさ』に起因する相談が多い。ドメスティックバイオレンス(DV)や失業など、一人の女性が複数の問題を抱えている事例が目立つ」(実行委員会プレスリリース)と説明している。

女性を取り巻く問題に関し、実行委員会は別の視点からの指摘もしている。それは、女性たちにはそもそも自分の問題を「語る場」がなかった、あるいは社会の側が女性の話を聞いてこなかったということだ。

実行委員会は「潜在的に、過去から続いてきた女性が抱えている困難が語られる場がなかった、聞いてくれる人もなかった。女性は夫や父親など周囲の男性に囲まれ、自分の抱えている問題を問題として見ずに、他人の問題解決が優先されてきたから。この相談会ではその必要性がないから境遇や思いを自由に話すことができる。受け止める姿勢と環境、雰囲気、人が、困難を抱える女性の自立とその支援には大事なことだ」(実行委員会プレスリリース)と強調する。

◇暴力・経済・健康・ケア=複雑化・深刻化する困難

相談会が実施された背景には、女性を取り巻く課題がコロナにより一層複雑化・深刻化していることがある。

内閣府男女共同参画局の「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」はこれまで、コロナの女性への影響と課題を検討してきた。特に「女性に対する暴力」「経済」「健康」「家事・育児・介護」(無償ケア)の4つの分野に焦点を絞り、女性への影響をみている。

同研究会の報告書「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会報告書~誰一人取り残さないポストコロナの社会へ~」(以下、「報告書」)を確認したい。

「女性に対する暴力」に関して、報告書は、コロナ以降、精神的暴力や経済的暴力も顕在化した上、給付金の世帯主給付に関する課題があることを指摘。同時に、DV被害者の自立にあたり経済的自立が重要であるとともに、10~20代の若年女性への支援策の強化が必要だと説明する。

報告書によると、2020年4月~2021年2月までに全国の配偶者暴力相談支援センターと「DV相談プラス」に寄せられた相談件数は、前年の同時期から約1.5倍に拡大した。

さらに、DV相談プラスには「緊急事態宣言中にパートナーが家にいて暴力が激しくなったという相談や、パートナーが給付金を渡してくれない、あるいは浪費してしまったという相談が寄せられた」(報告書)という。在宅勤務となったパートナーからの精神的暴力の相談もある。

また、妊娠相談窓口には、特に2020年春から夏にかけ、経済的困窮と失業を受け、妊娠継続への葛藤や養育不安に関する相談が寄せられた。産婦人科の受診費用を出せず、受診の遅れにつながった事例も報告された。

次に「経済」面について、報告書は、女性の多い産業や非正規雇用の労働者に大きな影響が出ていると警鐘を鳴らす。かつて女性の所得は「家計補助的」にとらえられることもあったが、現在、女性の所得は家計補助ではなくなっており、女性の収入状況は世帯経済に影響を与えている。同時にシングルマザーの失業率が上昇しており、支援の強化が求められている。

緊急事態宣言が出された2020年4月には、「就業者数も雇用者数も、男性に比べて女性に大きなマイナスの影響が表れており、休業者数の増加幅も男性に比べて女性の方が大きい」(報告書)。

特にコロナで打撃を受けている飲食や宿泊部門の雇用者は、もともと女性の割合が高い上、非正規雇用が多い。こうしたことが、女性が雇用面で不利になる理由になっているという。

家族状況をみると、ひとり親世帯がかかえる課題が深刻化している。日本のひとり親世帯は従来から就労率が高いものの、収入が低いという状況にあった。コロナにより雇用不安が広がる中、ひとり親世帯はさらに追い詰められている。

報告書は「シングルマザーの支援を行っている民間団体からは、令和2(2020)年7月の状況として、収入や勤務時間・勤務日数の減少の状況や、臨時休校が大きく影響したこと、自身の感染リスクを避けるために自発的に休職、退職したケースがあったこと、自宅にPCがない、ネット接続の環境が十分でないことなどから、子供の教育上の影響を懸念する声などが報告された」とする。1人で家計もケア負担も抱え込むシングルマザー世帯の困難がさらに増している。

「健康」面では、女性の自殺者数が増加しており、とりわけ仕事を持たない人、主婦、女子高生の自殺が増加している状況にあるという。また報告書は「妊産婦への十分な配慮が必要」「医学・公衆衛生学でもジェンダーに着眼した検討を」などの視点も打ち出している。

一方、「家事・育児・介護 (無償ケア)」についても、報告書は、新型コロナウイルス対策の休校が小学生の母親の就業に大きな影響を与えたとともに、子どもを持つ有配偶女性の非労働力化が進行したと説明する。その上で、コロナ以降、女性の家事・育児・介護の負担感が増加したと言及している。

こうした状況を踏まえ、報告書は以下のように、ジェンダーの視点を取り込んだ政策を打ち出す必要性を説いている。

「女性の大学進学率が上昇しようとも、専門職に就く女性が多くなろうとも、家庭責任の多くを女性たちが担う構造に大きな変化は認められなかった。しかし、コロナ下のいま、家庭内の役割分担を超えて、社会の諸制度の前提ともなっているジェンダー格差を所与とする規範や慣行にメスを入れない限り、ポストコロナのニューノーマルな世界において我が国は一歩も二歩も大きく後れをとることになる。そこで、ここで強調したいことは、さまざまな諸政策を企画、実行するに当たって、ジェンダーという視点を入れるべきということである。そもそもジェンダー中立的ではない仕組み、政策が残存している。コロナ下にあって、逃げ場のない女性たち、女の子たちへの救済のために、ジェンダー的視点を入れた政策の設計が不可欠である。コロナ下で、女性たち、たくさんの未来があった女子高校生たちが自らの命を絶たなければならない状況は極めて深刻である。」(コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会報告書~誰一人取り残さないポストコロナの社会へ~」

民間の女性たちは、女性による女性のための相談会のような草の根の活動をすでに進展させている。政策面でも不利な立場にある女性たちへの踏み込んだ対応が待たれている。(了)