Yahoo!ニュース

選手の多機能性追求の足枷になる日本の勝利至上主義。細谷真大は兼ウイングを目指せ

杉山茂樹スポーツライター
上田綺世(写真:岸本勉/PICSPORT)

 先のミャンマー戦とシリア戦に1トップとしてスタメンを張った上田綺世。ミャンマー戦にはハットトリック。シリア戦でも2ゴールを挙げている。怪我で招集を辞退した古橋亨梧(セルティック)を尻目に株を上げた恰好だ。

 しかし、所属クラブ(フェイエノールト)では出番に恵まれていない。古橋が毎試合ほぼ先発を飾るのに対し、上田はもっぱら交代出場だ。

 先のチャンピオンズリーグ(CL)第5週、アトレティコとのホーム戦では後半の頭から出場したが、今季の国内リーグ、CL全18試合中、出場した試合は14で、スタメン出場は1試合に過ぎない。1試合あたりの平均出場時間は、出番のなかった試合を除いても約22分(ロスタイム含まず)となる。

 1トップとして先発を飾るサンティアゴ・ヒメネス(メキシコ代表)の能力が高すぎることがまずひとつ。上田がトップ(真ん中)しかできない非多機能型選手であることも輪を掛ける。先述のアトレティコ戦に後半フル出場できた理由は、相手のアトレティコにリードを奪われ、逆転しないとグループリーグ落ちが決定するため、得点欲しさに布陣を4-2-3-1から4-4-2に変更したためである。トップを2枚に増やしたことで、早めに出場機会が巡ってきた。

 だが、この世の中において2トップは少数派だ。1トップ主流の時代においてそこしかできないと、出場枠は1つしかなくなる。自分の調子がいくらよくても、ライバルの調子がそれ以上によければ、出場時間は限られる。交代出場が大半を占めることになるが、1トップ下や左右のウイングを務めることができれば、出場時間は必然的に伸びる。

 浅野拓磨は前回のミャンマー戦、シリア戦では1トップとして出場する機会がなかった。後半の途中、上田と交代したのは若手の細谷真大。浅野が1トップしかできない選手なら、細谷に抜かれ3番手以下に転落したと言う話になる。しかし浅野はシリア戦で左ウイングとしてスタメンを飾った。ウイング兼ストライカーにプレーの幅を広げつつある。

 W杯本大会を戦う23人枠を考えたとき、プライオリティが高くなるのは浅野のような複数ポジションをこなす多機能型だ。もちろんバランスの問題になるが、1トップしかできない選手が、その3番手候補だとすると23枠からはみ出る可能性が高まる。

この記事は有料です。
たかがサッカー。されどサッカーのバックナンバーをお申し込みください。

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

杉山茂樹の最近の記事